初心者にもいろいろいるわけで
冒険者ギルドに行くと会議室に通され、という事は無く、カウンター前のホールというか酒場スペースの一画に行くよう指示された。そこでは神経質そうな職員の男が、壁に幅1m以上はありそうな地図を貼っていた。昨日俺が買った地図と同じ物だ。きっとあれを元に説明してくれるのだろう。とりあえず、近くのテーブルに座る。時間は昼ぐらいだが、まだ俺達しか来ていない。しばらく始まらないようなので、昨日のあの露店で買った肉巻を出して、ヴァルと二人で食べ始める。
そうやっていると、もう昼も終わった頃に青年と言うか少年の一団がやって来た。男2人、女1人でそれぞれ粗末な麻の服の上から薄い革のベストを着ているだけで、農村から出て来た農夫の子供と言った風である。歳は15、6か。
リーダー風の少年は身長180cm越えで粗末だが剣を持っている。もう一人の少年も170cmは超えている感じで手作りっぽい短い槍を持っていた。二人とも浅黒く引き締まった体をしている。まあ、戦士と言う風格ではなく、勤労な農夫といった感じだが。二人は素知らぬ風を装ってこちらを見ようともしないが、探知スキルがなくても分かるくらい緊張しているのが見て取れた。
最後の1人はなんというか肉感的な少女である。身長は170cmに届かないくらいか。デブではないが、やや顔もポッチャリしており胸もお尻も大きく、しかも少年達と同じ質素な麻の服なのに着方のせいなのか、いろいろと隙があって誘っている様にも見える。しかも彼女だけはギルドに入った時からあちこちに会釈しており、俺にもニッコリほほ笑んだ。手にはやはり手製の槍が握られている。
「ご主人様、あの女を見てはダメだ。
あいつは絶対ビッチだから、隙を見せたら食われるぞ。」
ヴァルが耳元でこっそりと囁く。ああ、そうか。女からもそう見えるんだな。
それから昼過ぎまで待ったが、説明会は始まらない。あの神経質そうな職員は、地図を貼った後イライラした様子で、カウンターと地図の間を行ったり来たりしている。ちなみカウンターを見るとベティーナさんはボケーっとしている様に見え、名前の知らない美人受付嬢は相変わらず話し掛けんなオーラを出し、小太り中年オヤジは完全に寝落ちしていた。
昼を過ぎてしばらくしても説明会は始まらなかった。焦れたのか、あの少年たちの中からビッチ(ヴァルブルガ認定)が神経質そうな職員に話しかけに行った。
「あのぉ~~~、
まだ大迷宮の説明会はまだ始まらないんですか。」
「ああ、まだ揃っていないからな。
全く、冒険者なんてのは時間も守れない人生の落後者ばかりか。
全く、私に無駄な時間を使わせて。考えが甘いんだよ。」
「はぁ。」
うわっ、ビッチは全然悪くないのに詰められてるよ。っていうか、冒険者ギルドの職員として今のは不穏当な発言じゃなかったか。無関係な俺でさえそう思ったくらいだ。彼女の仲間が苛立って立ち上がったのも無理はない。
「おい、てめぇ。エラに何て事言いやがる。」
あの娘、エラっていうのか。ちょっとエロと似てるな。そういえば、あのアニメ萌え声の女騎士エルネスタさんって今頃何してるだろう。
「そうだ、そうだ。こっちはずっと待ってやってるんだぞ。」
「何だお前達。私にそんな事をして無事に済むと思っているのか。」
少年二人が職員に近付いて行くと、職員の男はほとんど金切り声を上げる様にそう叫ぶ。一触即発の事態。カウンターを見るとベティーナさんはボケーっとして、美人受付嬢は素知らぬふり。しかし、中年男が動き出した。
「まあ、まあ。」
中年男は抑えて抑えてと手を振りながら仲裁に入る。結局、中年男の取り成しで少年達は席へと戻った。神経質男は壁に向かって、全く甘いんだよ、っとボソッと呟いていた。コイツ、ダメだな。あれ、職員の中で中年タヌキが一番有能?
さらに1時間は待っただろうか。ギルドにガヤガヤと騒がしい集団が入って来た。それは5人の男達で大体が中年くらいだろうか。服はボロイが所々に革や金属の鎧を付け、使い込まれた無骨な剣や槍、棍棒などを持っている。顔を見ると脂ぎり、髪もぼさぼさ、しかも肌が見る部分は全員がいくつもの痣が出来ている。何よりコイツ等はぷぅ~~~んと臭い。一言で言えば、野盗や追剥の集団である。
コイツ等は全員が固まって美人職員に声を掛けると、何やかや言った後にこっちに向かって来た。うわっ~~~、コイツ等待ちだったのかよ。
「おい、どけ。」
俺達の席の前まで来ると、そう怒鳴って来た。もちろん、ムッと来るがここは冷静に抑えて、立ち上がる。ヴァルが突っかかろうとするのも、手で制す。
「ご主人様。」
「まあ、いいじゃないか。」
俺はヴァルの手を牽いて離れる。正直臭いので早く離れたかった。奴らは少年達も同じように恫喝して、地図の近くの席を分捕る。地図の近くはこの2テーブルしかないので、俺達や少年達は追剥共の後ろに立つ形で地図を見る。




