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戦時下の王都

 王城を出た俺は、アルノー君パパ、キースリング子爵達と別れて王都エスレーベン子爵屋敷に滞在した。キースリング子爵も王都に屋敷を持っているので、そちらに泊まるようだ。そして俺は屋敷の者にこれまで経緯を話した後、ヘロイーゼにコジマ女子爵と相談の結果、正式に側室に迎える事を伝えた。


「レン様、伯爵家第五席就任、そしてこの度のご戦勝おめでとうございます。それと正式な側室としての受け入れ、このヘロイーゼありがたく、ありがたく、嬉しくて、うぇ~~~ん」


「ありがとう、ヘロイーゼ。ほら、落ち着いて。涙を拭いて」


「私、私、いっぱいレン様のお子を産みますね。もう明日から生みます」


 ちなみにヘロイーゼはまだ九歳である。文官のカサンドラがゴミを見るような目で俺を見ている。ちがうからね、俺、ロリコンじゃないよ。


「いや、側室には間違いないけど、そういうのはもっと大きくなってからだよ。今は良く勉強して立派なレディになれるよう頑張って欲しい」


 俺はワザと周りに聞こえる大きな声で彼女をあやす。そう、手なんか出さないよとアピールするように。


「はい、レン様。もっとお胸が大きくなるように頑張ります。あ、レン様も手を貸して頂けると、あの、その」


 ヘロイーゼの後ろでは母グレーテルがこっそり、グーで行け、行け、とジェスチャーをしている。そして次男カルステンは複雑な顔。この話は早く打ち切ろう。俺はふわっと会話を終わらせて屋敷を任せたカサンドラら家臣の話を聞く。

 王都の魔族による包囲がすでに4~5ヶ月続いているとはいえ、南部、西部からの補給路は維持、北部、東部からの補給も断続的に続いているので、食料はそこまで逼迫してはいないようだ。もちろん物価は上昇し、治安も悪化しているのだが。

 戦況に関してはあまり新情報は無し、ただしオイゲンとは何度か連絡が取れており、何度か小規模な魔族の襲撃はあったもののギリギリ耐えているようだ。そして、ペルレで逃がしたベルントも屋敷にいたので商会の状態を聞くと、オイゲンや西方との食料や木材などの物資の流通を継続しているらしい。


 とりあえず屋敷や商会に、経済的にはともかく人的な被害がほとんど出ていなくて安心した。




「旦那様、ご武運を」「会長、お気を付けて」


 翌日、俺はヘロイーゼやレオナ達屋敷の者に見送られ、アルノー君パパと合流してゴルドベルガー伯爵軍の陣地へと戻った。その後、一週間ほどノイシュテッター伯爵と協議したゴルドベルガー伯爵軍は王都東方に展開する魔族への攻撃を計画。

 ノイシュテッター伯爵軍が周囲の他の魔族を攻撃するタイミングと合わせて、例の人間が協力しているという厄介な羊魔族の陣地を攻める事になる。羊魔族はおよそ五百、対してこちらは投降魔族五百と人間側五百で攻撃部隊を編成。戦場は起伏はあるものの羊魔族が陣取る平野だ。




 当日、騎士団長バルナバスさんを大将、俺を副将とした攻撃部隊は日の出と共に本陣を出発。およそ三時間かけて十キロ離れた羊魔族の陣の手前、1キロ離れた丘の裏に到着して偵察を出しながら休憩。そこで俺は探知スキルを使って敵の数が予想通り五百程度である事を確認した。


 正午より前、約一時間の休憩後に敵に動きがあったので、こちらの接近に気付かれた様だった。まあ、いずれ気付かれるのは分かっていたし、ある程度休憩は取れたので進軍を開始。投降魔族を二つに分けて左右前方に少し離して配置し、後方に人間の軍がいるというVの字の陣形を取った。

 これは中央から敵を鉄砲で射撃する為の陣形である。人間の軍の前方には大盾を持った兵が固めており、敵との距離があれば火縄銃兵が前に出て射撃、敵に近付かれれば火縄銃兵は大盾の後ろに隠れてミスリル槍兵が前に出て対処する。

 投降魔族は危険な位置ではあるが、前に出て敵を削るのが主目的ではなく鉄砲の前に敵を誘導する事が目的となる。ちなみに左右の魔族を指揮するのはそれぞれ、太っちょの狸人の男と狐耳美女であり、ガチ戦闘よりもこういった指揮が得意だ。


 この陣形で伯爵領から王都までの魔族には上手くいっていたのだが、この日は様子が違った。V字陣形で羊魔族のいる反対の丘へ近付いて行くと、急に丘の左右からそれぞれ正面と同じ五百体規模の魔族が現れたのだ。伯爵軍は逆に前方と左右から挟まれる形になった。


「偵察は何をしていた! あんな数を見逃すハズがないだろう」


 慌てた伯爵軍から、そんな声が上がる。それはそうだ。戦闘前は当然、偵察を出して周囲を警戒している。それがあんな数を見逃すはずがない。ノイシュテッター伯爵からも伏兵が上手いような話を聞いていたから、念入りに偵察を出していたのだ。


「レン卿にもあの伏兵は気付けなかったのか」


 そう、バルナバスさんの言う通り、俺はこの丘に着いた時も、進軍を始めた時も探知スキルでよくよく周囲を探っていた。にも拘わらず、左右あわせて千体近い魔族に気付かなかったのだ。


「すいません、全く気付けませんでした」


 俺は謝罪しながら改めて探知スキルを使った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつかはコジマちゃんと跡取り作るのかな
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