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牛魔王本陣壊滅

 牛魔王エルプレルガーニトがジークリンデ様の魔法で焼き殺された時、ゴルドベルガー伯爵配下で最強の一人と言われる騎士、”瞬足”のフリッツが同時に兵を率いて牛魔王の本陣を襲撃し、これを壊滅させた。敵の主力が崩れた事で伯爵領都クンツェンドルフへの魔族の圧力は低下した。

 これを契機に伯爵軍は領内に潜む魔族の集団を順に掃討。ここでも俺の探知スキルが重宝され、一方的な奇襲や包囲を成功、敵の反撃を封じ込めて行った。まあ、俺は最前線には立たずに領都や派遣軍の本陣でアイツらここにいますよ、数はこのくらいでと告げ口してただけだが。

 あれからジークリンデ様は体調を崩されて城で休んでいらっしゃる。魔術を増強する塔も主要部分が崩壊して再使用は出来ない様だ。まあ、あんな超魔術がポンポン撃てれば、もっと早くに魔族を撃退出来ていただろうから、この発動コストの重さも当然か。


 伯爵軍が攻勢に出てから約一ヶ月後、ジークリンデ様は体調を回復され、領内の魔族退治もほぼ完了した。領外の情報も積極的に集め出したが、東のノルデン山脈から降りてきた魔族達は北東のコースフェルト伯爵領を突破、北西のゴルドベルガー伯爵領を攻める一方、中央の王都への攻撃が続いていると分かる。

 南西のノイシュテッター伯爵領とマニンガー公国へと通じる南東のオーフェルベルグ伯爵領への魔族の侵略は、王都やここほどでは無かったようで、南の二伯爵家は王都への援軍を送っており、王都軍、二伯爵家の軍で王都周辺の魔族との戦争は断続的に続いているらしい。

 領内が落ち着いたゴルドベルガー伯爵家は王都への援軍派遣の準備を始めていたが、俺は引っ張り出される事も少なくなる。このタイミングで俺は約二年間俺を守ってくれたヴァルブルガとニクラス、彼らよりは短いが俺と約一年半の間、俺と一緒にいてくれたヤスミーンを奴隷から解放した。


「それで三人は俺の家臣になってもらえるだろうか」


 俺はちょっとドキドキしながら三人に聞いてみた。


「ご主人様は、奴隷で護衛である私の安全も考えてくれたし、奴隷というよりも人として気を配って下さいました。また奴隷に落ちた私の家族も面倒をみて頂いています。このご恩は今後もお仕えしてお返ししたいと思います。私はこれからもずっとあなたの騎士です」


「ヴァルブルガ、ありがとう」


「・・・ヤスミーン殿との情事を同じ部屋で見せつけられるのは辛かったですが」


「ゴメン、でも俺弱いから、護衛は外したくなかったんだよ。それにいずれ君の家族も解放するから」


「いえ、大丈夫です。ダイジョウブ、ダイジョウブ」


 気まずいが、とりあえずヴァルは家臣になってくれるようだ。


「ご主人、あなたはいい主人でした。家族にも会わせてもらいましたし、奴隷なのに私を信用し指揮を任せてくれた事もありました。私もこのままお仕えさせて頂きたいです。それに子爵様の家臣というのは奴隷上がりにしては最上の仕事ですよ」


「そうか、ニクラス。これからも頼む」


 よしよし、ニクラスも家臣に同意してくれた。今や戦力的には中堅だが、指揮者としては信用できるからな。良かった良かった。


「それでクルトの事なんですが、もし解放するなら私に任せてもらえませんか。もしお許し頂けるなら、私が面倒を見て今後もご主人の力になるよう指導します」


 おおっ、クルトは判断力に難があって自立できるタイプじゃないから解放は考えてなかったが、ニクラスが面倒を見てくれるなら、ヴァルと同時に最初期から一緒にいた仲間だし、このタイミングで解放するのもいいな。


「分かった。ニクラスが面倒を見てくれるなら上手くいくだろう。クルトを頼んだ」


 うん、。痒い所に手が届く、頼りになるオジサンだ。さすがニクラス。


「ヤスミーンは」


「私はユーバシャールで潰されそうになったところを助けてもらった恩があるわ。奴隷でもそうじゃなくても最後まであなたについていく」


 俺の問いを遮ってズバリと言い切るヤスミーン。いい女だ。でも、お前を手に入れたのは偶然の要素が大きいんだ。お前に誠実な態度を取られるたびに心が痛むんだ。でも、いまさらそんな事は言えないんだ。不誠実な主人でスマン。そう思っていたが彼女はそれを否定した。


「あなたは商人だもの、全てを投げうって私を助けてくれた訳じゃ無いのは分かっているわ。でも、あの時あなたのお陰で私が助かったのは事実。そんなに負い目に感じないで」


 俺は言葉を失った。全部分かってたのか。自分が恥ずかしい。


「ヤスミーン、スマン。正直に話せなくて」


「いいのよ、私の救世主さま」




 そんなこんなで王都への救援の為、南下しようとしていたゴルドベルガー伯爵軍。健康を取り戻されたジークリンデ様が自ら率いた軍であったが、その前に約五百体の魔族達が姿を現す。しかし、その者達は白旗を掲げていた。

 ざわつく伯爵軍の幹部会議の席に伝令兵がやって来た。


「前方の魔族達は交渉を持ち掛けて来ました。彼らの主導者の一人はミーナ、レン卿の知り合いだと主張しています」


 幹部達の厳しい視線が俺に突き刺さる。え、俺っすか。ミーナ、何でよ。俺、魔族との内通者とか思われない!?

ここまでお読みいただきありがとうございました。


8月の投稿は7回を予定しております。

完結は9月になりそうです。

長引かせてしまい申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
ヤスミーン全部わかってたのね いい女じゃん
[良い点] フリッツさん いきとったんかいワレ〜!
[良い点] クルトに触れてくれて良かった。忘れられてるかと [気になる点] ヴァルブルガに手を出さなかった事
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