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森林戦

 猫人達は森の木々を駆け上がって防衛陣の中に飛び込んで来る奴もいるが、流石に百人近い兵士の層は破れず兵士の間に飛び込んで個別に取り囲まれて槍で刺されている。強そうな豹人は結局、バルナバスさんや奴隷三強で抑えているようだ。

 ほぼ拮抗しているが、こちらの方が数が多く、防衛陣の内側にはまだ戦闘に参加していない兵士もいるのでややこっちが有利か。だが戦いを見ていると、俺の探知スキルに見えてる魔族以外の反応がある。割とバラバラと近付いて来ていたが、後ろの十体くらいのグループが大きく迂回して後ろに回り込み始めた。


「バルナバスさん、回り込もうとしている奴がいます! 数は十!」


 俺が叫ぶとバルナバスさんが周りを見回して指示を出す。


「ニクラス、後ろを頼む!」


「承知!」


 ニクラスとクルトは豹人の相手はせずに猫人達を薙ぎ払っていたが、猫人だけなら後ろの兵士達だけでも抑えれるだろう。バルナバスさんの指示で二人は陣の後ろへと回る。さらにバルナバスさんは自分の前の豹人を切り裂いて二人を追った。

 バルナバスさんや騎士団のリーダー格達、奴隷三強はエルフの作ったミスリルの武器を、他の兵士達もミスリルの穂先を付けた槍を装備しているのが、魔族達も毒の黒い武器を持っているので武器の性能の差はあまりないと考えるべきか。

 そんな事を考えていると、豹人の相手をしているディーデリヒの後ろから別の猫人をブラインドに跳びかかろうとしている奴がいた。俺はディーデリヒに警告する。


「ディーデリヒ、後ろだ」


「レン様、かたじけない」


 ディーデリヒはそれに反応して、跳びかかる猫人を叩き落す。そんな風にして俺は魔族と対峙する兵達に不意を打たれないよう注意を呼び掛けたり、動きの変わり目を教えたりしていたが、そんな俺に注目する者がいた。一人はこの魔族達のリーダーである虎人であった。

 彼は後方の樹上に隠れ戦闘の様子を眺めていた。地球の虎の縞模様は動物園では目立つが、森林や草原の中では木々や草の影と混ざり合って認識づらくなる効果がある。この虎人はそれを強化した迷彩能力を持っており、同族すら認識できず、レンの探知スキルすら欺いていた。


「真ん中で指示してるヤツ、邪魔だな(注意:魔族語)」


 そしてもう一人、虎人よりさらに後方、別の樹上に猫人の少女ミーナが隠れていた。


「あれレンじゃないの。何でこんなところに」




 ミーナはペルレ大迷宮から生還後、ペルレ市が陥落した事で戦線が進みゴルドベルガー伯爵領都の攻略に加わっていた。今回、主戦場の都市南側から北へと回り込んで都市内に侵入するハズだった。しかし、都市到着前に人間の集団の匂いに気付き、都市と挟み撃ちにならないよう彼らを襲撃する事になる。

 本来、彼女も半獣化して襲撃に加わるべきなのだが、迷っていた。次に会った時は敵同士だと言って別れたものの、命を助けられたり情を交わしたり協力して迷宮を乗り越えたりと、色々な思い出が浮かび、彼と戦う事を躊躇していた。


「まさか、私が人間の男に執着しているというの? 弱い男なのに、でも私を大事にしてくれた? それが優しいっていうことなの?」


 それでも彼女はゆっくりと弓を取り出し、人間にとって毒となる黒い金属の鏃を付けた矢をつがえて、彼を狙った。彼の周りの兵士達も樹上から撃ちおろすように狙う矢の射線から外れている。


「彼には借りがある、情もある、引け目もある、でもこの場は氏族への絆が勝る。受けて! これが私の愛の雷!!」




 矢を放つミーナ。その迷いからか殺気に気付けなかったレンが、ここでやっと気づく。だがその瞬間、別の者も動いた。


「俺は、お前に近付かない」


 レンの真上の木から飛び降りた虎人が、両手の爪を頭の後ろ、限界まで振り上げていた。ここまで近付いていて矛盾しているようだが、その言葉には必殺の瞬間までは近付かない、近付いた時すでにお前は終わっているという意味が込められていた。


「うわぁぁ」


 悲鳴を上げるレン。


「グアッ?」


 その爪がレンの顔を引き裂く寸前で止まる。その首には矢が突き立てられていた。


「あっれぇぇぇ~~~っ!?」


 レンと虎人が矢に気を取られる中、遠くにいるミーナが一番驚いていた。




 だが、その太い首は矢一本で貫けるものではない。それでも後ろを振り返る虎人。


「ご主人さまぁ~」


 その隙にレンとの間に割り込むヴァルブルガ。


「邪魔だ」


 前を向いた虎人が左の爪を振り下ろす。剣で受け止めるが、その衝撃を受け止めきれず剣を飛ばされるヴァル。


「あうっ」


 次の右の爪、盾で受けるがその剛力に耐え切れず地面を転がる。


「はぁああっ」


 しかし、そのときヤスミーンのスヴェンエーリクの槍が虎人の脇の下を突き刺した。動きを止める虎人。そこでやっと周囲の兵達も取り囲んで次々とエルフのミスリルの槍を突き刺していく。


 ドス、ドス、ドス・・・


「力が抜ける、くそぅ、毒か」


 虎人がどうと大地に倒れた。槍に毒が塗られているわけではないが、ミスリルは魔族に毒のような影響を与えるようだ。


「あの矢は? 俺の命が消えていく。くそぅ、くそぅ、くそぅ」


 虎人は血の泡を吹きながら、ミスリルの武器と飛んで来た矢を呪いながら絶命した。それを見た猫人達は士気を下げ、ある者はその場で打ち取られ、ある者はその場から逃走する。


「デグリジィグスがやられたのか、ごがぁぁぁ~~っ」


 生き残った豹人が吠えると、レン達を襲った魔族達は敗走していった。あの殺気、姿を隠した虎人のものだったのか、と思うレン。そして、これからどうしよう?と悩むミーナ。とにかくクンツェンドルフに到着したレン達だった。

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