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クンツェンドルフへ

 ザックス男爵領からゴルドベルガー伯爵領、領都クンツェンドルフまでは往路と同じ王都を避けてオルフ大森林沿いの平原を北上するコースで2週間で辿り着くことが出来た。往路よりも1週間短いが、これは一度通った道である事とミスリルの武器を得て士気が上がっているからだろう。




 俺達が領都まで約十キロに近付いた時、探知スキルで調べるとクンツェンドルフはおよそ五千の魔族に包囲されていた。ここに来る前に立ち寄った街ケンプフェルト、反乱を偽装したバルナバスさんが立て籠もったとされる、では領都への魔族の攻撃はもう一月前から続いていると聞いていた。

 魔族は数十から数百の集団ごとに領都の外壁から2~3キロに布陣している。特に大きい本陣と思われる集団が王都に続く領都の正門ともいうべき南門側の街道を中心に二千ぐらいで陣取り、それ以外も比較的領都の南側に魔族が多く、北側ではやや包囲が粗くなっていた。


 ケンプフェルトで聞いた情報では、主力と思われる犬のような魔族や、鹿、牛のような頭の魔族が数百から千程度の集団で領都に正面から攻めたり、あるいは数十から百を超えるくらいの集団で街道を封鎖したり周辺の村を占拠しているそうだ。また猫や虎のような魔族が夜陰に紛れて都市内に侵入してくるという。

 これに対してクンツェンドルフでは、外壁から矢や鉄砲で攻め寄せる魔族の数を減らし、騎兵や歩兵で追い返したり、街道上の魔族の集団を兵を派遣して襲撃させ補給を確保したり、街内の警備を増強して治安を維持したりしているらしい。




 探知スキルで現在の魔族の位置を調べた俺は、その場で地面にクンツェンドルフと周辺の略図、敵の配置を描き、バルナバスさんに都市に入るまでに通る経路を説明する。


「凄いな、ここまでハッキリ敵の配置が分かるとは。これがレン卿の魔法なのか」


「魔法ではないと思います。どちらかといえば勘に近いものかと。外れることや気づかない相手もいるので、そこはご理解頂きたく」


「分かった。この図によれば、最低限このクンツェンドルフを大きく西から北に回り込もうとする一団とはどうしても接敵するというのだな」


「ええ、敵に動きがあるまで待つ手もありますが、なるべく早くクンツェンドルフに入ろうと思えば、このルートが相手にしなければいけない敵が一番少ないかと」


 取り合えずバルナバスさんが同意してくれたので、俺が探知スキルを使って一番遭遇する敵の少ないルートで進む事になったのだが、問題になるのがどうしても遭遇を避けられそうもない約五十体の魔族の集団だ。こちらに気付いても放っておいてくれるならいいが、きっとそうはいかないだろう。

 反応からして魔族の個々の強さは一般兵士よりも少し強い程度。こちらは歩兵中心とはいえ百人近い騎士団。敵の隊長クラスはさらに強いとはいえ、こちらにはゴルドベルガー伯爵家の騎士団長バルナバスさんもいれば、俺の奴隷の四強の三人、アンスガー、ディーデリヒとオグウェノがいる。

 ただし、こちらは積み荷を奪われないよう守る必要があるし、弱点となる非戦闘員、つまり俺とかだが、がいる。なので、なるべくクンツェンドルフに近付くまで敵に見つからないよう、森に隠れてその境界がクンツェンドルフに近いところを行きたい。


 クンツェンドルフも敵の接近を早期に発見する為に周囲1~2キロの森林を伐採し、いわゆるクリアリングゾーンを作っている。今回の場合は敵の主力の配置された南から一番遠い北側で、クリアリングゾーンが一番狭い1キロ付近の部分を狙う。

 なお、遭遇予定の約五十体の魔族の集団もここを狙っていると考えられるので、コイツ等は話に聞く城壁を越えて入り込もうとする猫人を中心とする集団の可能性がある。俺達は先にコイツ等を行かせて都市側と挟み撃ちにできるよう動きたい。

 俺は探知スキルを使い、敵の予測経路を避けてクンツェンドルフの北の森の中まで移動して待機し、敵が現れてからその後ろを1キロくらい開けてコッソリついて行く事にした。だが敵が予測通りに現れ、その後ろをついていこうとしたところで敵が反転してこちらに近付いて来た。


 やっべぇ、バレた。視覚では絶対気付かれない距離だが、敵は獣に近い姿だから人より音や匂いに敏感だったかもしれない。




「バルナバスさん、すいません。敵に気付かれました。近付いてきます。先頭は3~5分後に接敵します」


「レン卿、了解した。馬車は先頭に位置を合わせ、防衛陣を敷け」


 バルナバスさんは俺の警告にすぐに対応し、馬車の周りを兵士で囲んで防衛陣を敷く。そして突っ込んで来たのは猫人、いや豹人か? ミーナやペルレで見た半獣化した猫人よりも、もっと大きくて黒い斑点模様のような奴が混じってる。強そうだ。

 バルナバスさん、ヴァルブルガの父アンスガーと兄ディーデリヒ、黒い肌の異国人オグウェノが前に出て猫人を切り払ったり、豹人を受け止めたりしている。ニクラスはクルトとタッグを組んで薙ぎ払わせている。そして俺はヴァル、ヤスミーンと兵士に囲まれた馬車の、さらに真ん中に隠れる。

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