銃の試射会
ぱん…、
ぱん…、
ぱん
銃の試射にはゴルドベルガー女伯爵ジークリンデ様、女伯爵の側近”瞬足”の騎士フリッツさん、軽い感じの平民出身中年騎士ギードさん、高身長萌え声女性騎士エルネスタさん、壮年執事のクリストフさん、俺を見張っていた若騎士アルノー君、そして俺の妻であり女伯爵の侍女コジマちゃんが立ち会った。
俺がマニンガー公国で手に入れたインカンデラ帝国製の銃の射程は百メートルくらいはあるだろうが、俺の腕に不安があったので十メートル離れたところに的を用意してもらって、それを射抜いてみせた。あまり人の目に触れないように城内中庭でだ。
「え~っ、この黒色火薬という物は、木炭と硝石、硫黄を混合する事で…」
製法や材料、開発状況については錬金術師ボニファーツに説明させた。ちなみに硫黄は王国の東部、先日魔族の現れたノルデン山脈付近でも産出され、ワインや皮革、建材の防腐剤としてほどほどに利用されている。
また王国の北部、鉱石の豊富なラウエンシュタイン王国に近い側、つまりここゴルドベルガー伯爵領やその周辺の山々でも産出されているので入手難度はそれ程でもない。あの悪名高い亡者の門の両側にも岩山があるが、あの付近でも取れるらしい。
逆に硝石などはまだ火薬の製造を始めていないカウマンス王国では、用途も無いのでワザワザ採取して売る者もなく、自分達で調達する必要がある。ペルレで実験していた時は、バックハウス男爵の荘園の畜舎から採取していた。
女伯爵様とクリストフさん、コジマちゃんは俺の試射を見た後退出してしまったが、フリッツさんとギードさんが最後まで立ち会ってくれた。そして開発引き取りの件はあっさりと了承され、成功後の俺用の黒色火薬の提供も希望通り受け入れられた。
なお、ボニファーツはそのままこのゴルドベルガー伯爵領領都クンツェンドルフに滞在して、火薬の開発に成功するまで協力する事なった。
銃の試射から二日後、全部で八日くらい滞在した伯爵領領都クンツェンドルフを俺は後にした。連れはヴァルブルガ、クルト、ニクラス、ヤスミーン、オグウェノ、アンスガー、ディーデリヒで、アルノー君は伯爵領に残る事になった。
執事クリストフさん、俺の妻のコジマちゃん、そして伯爵の側近中年騎士ギードさんが、俺が城から出る際に見送ってくれた。
「お勤めに励んで下さい。期待しています」
最後のコジマちゃんの言葉が相変わらず愛がないなと思ったが、ギードさんの言葉の方が衝撃的だった。
「あ、君も知ってる騎士隊長のバルナバス様が、ジークリンデ様の見逃された5歳の弟を担ぎ上げて、北の街を占拠して反乱を起こしてるから気を付けて帰ってね。
そうそう、忘れるところだったけど、バルナバス様との内紛は君は気にしなくていいけど、エスレーベン子爵家も早々に50人規模くらいの軍隊は育ててって伯爵様言ってたよ。危ない、危ない。じゃあ、気を付けて帰ってね」
そういえば、こっちに来てからバルナバスさんを見ていないと思っていたけど、あの側近中の側近っぽかったバルナバスさん、反乱起こしたの?それでもウチにフリッツさん送ってくれたの?相変わらずギードさんって、最後に聞き捨てならない話をぶっ混んでくる。
詳細を聞こうとしたが、たぶん話すつもりはないのだろう。むしろ気にせず帰れというのだから、俺はそそくさと帰る事にした。伯爵家の内乱を気にするよりも、ハッキリ明言された貴族の義務として軍隊の育成の方が俺にとっては急務か。
あとは伯爵家に対する結婚式のお礼も送らないといけない。相変わらず後手に回ってしまったが、参列貴族からの贈り物を集約し、彼らへの返礼も伯爵家で手配してくれたので、ウチとしては伯爵家へのお礼だけで済むのはありがたい。
クンツェンドルフから王都まで二週間。数日、王都の子爵屋敷に滞在して俺達はオイゲンではなくペルレに向かった。オイゲンでやる事もあるが、たぶん伯爵家としても重要なのはエスレーベン子爵領よりもミスリル採掘の方だろう。兵士50人育成の方は、代官オスヴィンに手紙を送って考えてもらおう。
「会長、お帰りなさいませ。ご無事で何よりです」
「レン様、ご健勝そうで安堵致しました。久々にあなた様のお顔を拝見でき嬉しく思います」
「レン様、もうちょっとこちらにも来てくださいよ。ブリギッテさんが暴れて大変でした」
王都から三日、ペルレに戻った俺は、合法ロリ改め童顔従業員レオナ、真ロリ令嬢ヘロイーゼ、トルクヴァル商会ナンバースリー実直裏方三十男ベルントに熱烈に歓迎された。手紙のやり取りはしていたとはいえ、会長が三か月も本店に顔を出してないのだから彼らも不安だったのだろう。
なお、ブリギッテさんは予想通り二回目のマニンガー公国に行って不在だった。前回の貿易では約金貨三百枚も稼いでおり、年に四回も行けばその利益はミスリル採掘にも匹敵するだろう。流石ブリギッテ大姉さん、マジパネェっす。




