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ゴルドベルガー伯爵領

 コジマちゃんとの話は十分かそこらで終わった。彼女は俺がこの状況に戸惑っているとか、否定的な可能性は全く考えていないようだ。彼女には女伯爵に認められ、支援も受けているのだから伯爵家の為に力を尽くすよう言われた。

 また彼女は女伯爵を支える為に伯爵領に残るので、エスレーベン子爵の方は頼むと言われた。うむ、仕事の話ばかりで夫婦のプライベートな話はゼロだった。そして俺と彼女の結婚式は三日後に行われるという事だった。




 結婚式はもうひとつの男爵家と合同という事だったが、この合同結婚式に参列する為に俺が到着した時点で複数の貴族家が滞在していた。そして結婚式までにまだ増えて行き、最終的に十くらいの子爵家、男爵家、合計百二十人くらいが集まった。

 ちなみにこの十家は全て伯爵派閥の家らしいが、これで全てではないという事だ。また、コジマちゃんに二度目に会ったのは到着から二日目、俺がゴルドベルガー女伯爵の執務室に呼び出された時だった。彼女は女伯爵の侍女として控えていた。


「レンよ、エスレーベン女子爵との結婚を祝福しよう。お前がここまでやるとは思わなかったが、ミスリルの採掘にエスレーベン子爵領の差配と大変満足している。これからも励めよ」


 女伯爵との面会はコジマちゃんとの面会よりさらに短く、五分くらいで終わってしまい、ご苦労、の一言で執務室から追い出されてしまった。女伯爵は忙しいとして、コジマちゃんとはもう少し話せるとは思ったのだが、執事のクリストフさんに俺達の部屋まで先導されてしまい機会を失った。




 そして結婚式当日。昼過ぎから始まった式では、カウマンス王国やラウエンシュタイン王国で主に貴族層に信仰されている戦神タラディンの神官が取り仕切っていた。ちなみにメッチャ厳粛な儀式で、キスはもちろん、夫婦で手を触れあったり、目を合わせる事すらなかった。

 儀式の後は酒宴だが、そこでの主役は俺でもコジマちゃんでももう一方の男爵家でもなく、ゴルドベルガー女伯爵ジークリンデ様だった。俺達は、ジークリンデ様の派閥の結束を訴えるスピーチをお行儀よく聞き、ジークリンデ様のついでのようにやって来る貴族たちの祝いの言葉に礼を言っていく。

 隣のコジマちゃんに何度か話しかけようとしたが、ちゃんと客の相手をするようにと怒られてしまった。別に俺を嫌っているのではないと思うが、一生懸命真面目に仕事をしている感じだろうか。まあ、貴族の夫婦というのは、日本の一般家庭のそれとは違い、職業なのかもしれない。


 その夜、夫婦の初夜。を迎えると思った俺だが、何故か一人で寝室で寝ていた。あれ? 貴族の夫婦の初夜ってちゃんとヤレたかどうか、メイドに監視された状態でヤルという恥ずかしイベントがあるんじゃなかったの?

 なんでも、今コジマちゃんが妊娠すると女伯爵を支えられなくなるので、伯爵領が落ち着くまでは待つようにと本人に言われてしまった。俺が微妙な顔をしていると、万一があれば派閥の貴族から養子をもらうから心配しなくていいと説明を受けた。

 さらに本日結婚した妻自身から、他の貴族の娘はダメだが平民の娘なら何人か愛人にしてもいいと許可をもらってしまった。もちろん、愛人が騒ぐような事があれば始末する必要があるし、子爵領を問題なく運営し続ける事が前提ではあるのだが。




 それから数日滞在していたが、コジマちゃんには会えなかった。なんかメッチャ忙しいらしい。俺が子爵領の仕事はしてるから、彼女がやっているのは女伯爵の補佐とか、そういうのをやっているのだと思う。参列した貴族達は式の翌日から順に帰っていったが、残っている者達は皆忙しそうだった。

 何で俺だけ暇というか、放置されているのだろう。その疑問はふらっとやって来た伯爵の側近、平民出身の中年騎士ギードさんが教えてくれた。


「やあやあ、レン君。暇してる?暇だよね。うん、知ってる。女伯爵様は君を高く評価してるんだけどね。でも君、女伯爵様の側近になってお傍でガリガリ働く気ある?無いよね。知ってる。それに君は放置していても、伯爵家の為にちゃんと貢献してくれるからね。

 だから君は他の側近達と違い、距離を開けて自由に動きやすくしてるんだよ。」


 なるほど、俺がここまで来てもガッツリ組み込まれるのを嫌がっているのを分かって、配慮してくれたというわけか。そりゃ、ゴタゴタのあった伯爵家の中枢なんてメッチャ忙しいか。放置された、除け者にされてるとか思ってすいません。




 そして結婚式から三日目、ペルレ近くのバックハウス男爵の荘園、その片隅に建てた錬金研究所から俺の配下の錬金術師ボニファーツがこの城までやって来た。彼を護衛してヴァルの父アンスガーと兄ディーデリヒも来ている。

 実は俺のマスケット銃に使える品質ではないものの、火薬の試作には成功したとボニファーツから連絡を受けていた。だがそうなると、そのまま荘園横の貧相な木造の家で開発を続けるなんて、情報の秘匿性という意味で不安になった。

 そこで俺は、いっそうのこと女伯爵様に火薬の情報を知らせ、開発を引き継いでもらう事を考えた。俺としては火薬を独占したいわけじゃないし、下手に俺から銃と火薬が世間に漏れても怖いし、技術を伯爵家で囲って貰って完成品を俺が使用する分だけ分けてもらえればそっちの方がいい。


 そう考えて手紙でボニファーツを呼び寄せ、この機会に銃と火薬の技術を伯爵家に提供しようと考えたのだった。ボニファーツと火薬が来たので女伯爵様に面会を申し込むと、翌日には面会が叶った。

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― 新着の感想 ―
まあ火薬は手に余るわな
[良い点] 主人公が強すぎず。上手く人を使っていくのは見てて楽しいです。探知スキルが広義なので色々できるのは笑うけど、他の小説のと比べたら自重してるのがわかるので駆け引き等が成立するのはいいですね。 …
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