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担当業務

 ヤーコブの処刑から1週間後、新代官にオスヴィンが就任した事と税が五割に下げる事が領民に通達された。オイゲンは代官オスヴィン、その部下としてゴットホルト、ファビアンの三人に任せて来た。木材置き場の件はゴットホルト、冒険者用の借家はファビアンを担当にして進めるように言っておいた。


「ふん、子爵家がお前達の便宜を図ってやろうというのだ。ありがたく」


「ゴットホルト殿、ちょっとそんな言い方じゃ」


 もっともゴットホルトは高圧的な態度で関係との話し合いが進まず、結局オスヴィンが代わったようだ。ゴットホルトは代官代理というのもおかしいが、代官屋敷の家令のような仕事が主となり、王都子爵屋敷から送った元執事やメイド長など反抗的な年配組をキリキリ働かせているようだ。幾らか逃げたが。


「そんな安値で貸してくれるのか、合間の仕事も助かるぜ」


「はーい、はーい、はーい。子爵代理様は皆さんの働きを気に入ったのですよ。いずれ子爵家の兵士に取り立てる可能性もあるのですよ」


 ファビアンは祭りの時に警備に加わってもらった冒険者達を優良認定し、荘園に帰ったバルテン一族の家を借家として貸し出しを始めていた。賃料は一軒一週間で銀貨一枚(約千円)にしたそうだ。さらに彼らには日当銀貨六枚で、彼らの都合に合わせた門番のアルバイトをしてもらって繋ぎ止めているらしい。




「ちょっと、就爵からこっち他の貴族から茶会や夜会の誘いが来ていて、子爵様ご本人がいないと言ってもお断りも大変なのよ。アンタ、何とかしなさいよ」


「えっ、じゃあカサンドラが行けばいいんじゃない」


「馬っ鹿じゃないの!? 何で子爵家の親族でもないただの部下が出るのよ! アンタ出なさいよ、アンタが」


 確かにカサンドラが出るのも変か。とはいえ、その時点では俺も婚約者であっても親族ではなく、しかも平民。それにぶっちゃけ俺も貴族の相手なんてしたくない。そこでザックス男爵夫人を呼び寄せて、いい感じでその辺の対応をしてもらう事にした。

 男爵の次男も夫人と一緒に子爵屋敷に住んでもらう事にし、ザックス男爵の村は支援に行っていたブリギッテさんの後輩のハーラルトに完全に任せた。本当は商会で預かっていたヘロイーゼも王都屋敷に移したかったが、夫人に固辞されてしまった。

 夫人は社交は得意でも金の管理は壊滅的っぽかったので、その辺も含めて王都屋敷の管理はカサンドラに任せた。貴族っぽい高慢さがありながら、苦労したのか金には細かそうなので丁度いいだろう。マインラートもそのまま王都で資産売却や商会対応をしてもらう。




 そんな体制を組んで俺がどうしているかというと、ゴルドベルガー伯爵領へ向かっていた。どうやら俺とコジマちゃんの結婚式があるらしい。これもふらっとゴルドベルガー伯爵の執事クリストフさんがやって来て、さあ早くと言われて、翌日には出発となった。普通は最低半年前とかに伝えない?

 マニンガー公国からブリギッテさんが戻って来たらしいので、一度ペルレに戻りたくはあったのだがその機会は無いらしい。きっとマニンガー公国からの輸入品はブリギッテさんがあちこちに売り込んで、またマニンガー公国行きの準備をしているだろう。結婚式が終わったらオイゲンに行く前にペルレに寄ろう。

 ゴルドベルガー伯爵領は王都の北西にかなり広い領地を持っている。オイゲンは王都の西にあるので伯爵領はオイゲンの北にあるのだが、オイゲンとゴルドベルガー伯爵領の間は未開の森などが遮っているので、王都に一度戻ってから伯爵領に向かう事になる。


 まあ、森を直進すれば伯爵領に行けなくもないが、通りにくいだけでなく魔物もどれだけ潜んでいるか分からないので、普通は街道沿いに行く。オイゲンから王都まで六日、王都からゴルドベルガー伯爵領まで二週間掛かったが、とりあえず予定通りに到着する事が出来た。

 今回の旅のお供はヴァルブルガ、クルト、ヤスミーン、ニクラス、黒い肌の異国の男オグウェノの五人で、あとは俺の監視役である若手騎士アルノー君も一緒に来ている。アンスガー、ディーデリヒは用事を頼んでペルレに行かせ、ジルヴェスターはオイゲンに残した。




 伯爵領へのルートは最近ゾンビが出たとか、ちょいちょい領土争いをしている北のラウエンシュタイン王国が近いとかもあるのだが、怖いくらい何の問題もなく到着した。ゴルドベルガー伯爵領の領都クンツェンドルフは平地に建造され、王都ほどでは無いものの巨大な城塞都市だった。

 城塞都市クンツェンドルフに入った後、都市を見下ろす丘の上の伯爵の城を訪ねると、すんなりと客室へと通された。部屋は隣接した寝室が三つ、リビングのような客室を一つ用意されたので、俺とオグウェノで一室、ヴァルブルガとヤスミーンで一室、クルトとニクラスで一室とした。ニクラスはやらないかなので。

 ちなみにクルトの分のベッドは部屋から出され、彼が不自由しない広さにたっぷりの藁を敷いて三枚のシーツを掛けてもらっていた。ちょっと覗いてみたが、結構ふわふわで良さそうだった。でも部屋の奥のニクラスのベッドからは、クルトの藁の上を通らないと部屋から出られない感じになっていた。


「レン殿、これまでのエスレーベン子爵家への貢献、ご苦労様でした。

 これからもエスレーベン子爵家、そしてゴルドベルガー伯爵家の為、奮起を期待します」


 城に着いた翌日、俺のいる客室を訪れたコジマちゃんは無表情な顔でそう言った。

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コジマちゃんきたわね
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