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またまた呼び出し

 エスレーベン子爵の無茶苦茶な呼び出し、いや書面も無く、やって来たメイドさんの口頭の説明によれば、呼んだのは子爵本人ではなくその息子だという。人の屋敷のメイドさんを助ける義理もないが、妹が人質に取られているらしい。

 タイミングが微妙だが、もうすぐゴルドベルガー伯爵家によってエスレーベン子爵が潰される時期。そうなると、エスレーベン子爵の娘の婚約者として王都の子爵屋敷か、ペルレから見て王都を挟んで反対側のエスレーベン子爵の領地で何か仕事があるに違いない。

 であれば少し早く王都に行っているのも悪くないだろう。俺はものすごい腰が引けながらも、後をベルントに任せて王都に行く事にした。




 王都とペルレを繋ぐ街道を進む1台の馬車。御者席には俺とヴァルブルガが座り、荷台にはアルノー君とメイドさんが乗っている。メイドさん、名前はアデリナというらしい、は足の裏を始め、転倒などによる怪我も多かったが、本人も妹を心配していたし、彼女がいないと話が進まなそうなので連れてきた。

 後はいつものメンバー、クルトにニクラスにヤスミーンが徒歩でついて来る。そして、今回はオグウェノが一緒に来ている。現在、ジルヴェスター、ディーデリヒはまだ療養中で、アンスガーとオグウェノが交代でアントナイトの鉱床を警備させていた。

 そして俺が王都へ向かうタイミングで、アンスガーがペルレ大迷宮に入っていて、オグウェノが地上にいたので彼を連れてきたのだ。チラリと彼を見ると、彼はこちらの視線に気づかないのか、あえて無視しているのか、大槍を担ぎ、真っ直ぐ街道の奥を見て歩いている。そしてオグウェノが警告した。


「森の中に人が隠れている」


 えっ、どこよ。俺は急いで探知スキルに集中する。半径100メートル、反応なし。半径300メートル、反応なし、そして半径1キロで10人くらいの人っぽい反応が出た。うそ、俺より高い探知系のスキルを持ってるのか。


「ご主人、どうしますか。」

「止まれ」


 ニクラスの問いに俺は徒歩組に停止を呼び掛け、自分で御者をしていた馬車は自分で止めた。ヒヒン。


「オグウェノ、どうして分かった。何人いる」


「木陰に人の顔が見えた。3人か。

 ただし、その3倍は隠れてそうだ」


 見えたの? 1キロ先の木陰から覗く顔なんて、普通見えないだろう。視力6.0か? まあ、俺の探知とほとんど差は無いから、間違いは無いだろう。さて、街道はほぼ真っ直ぐ進み、街道の左右は多少の空き地はあるものの鬱蒼とした森になっている。

 恐らく、200メートル先の森の中に潜んでいるのだろうが、気配的には並みの兵士かそれより弱いくらいが7人、ニクラスと同じかそれより強くオグウェノより弱いくらいが3人か。いや、気配が少しおかしい奴が混じっている。

 野盗だろうか。こちらは俺も含めて7人いるが、敵意をビンビンに感じるから、人数やクルトにビビって襲撃を止めるという事は無さそうだ。まだ向こうもこちらの詳細は見ていないだろうから、少し近付き方を考えよう。


「クルトぉ、ゆっくりと前を歩け。

 馬車はクルトの後ろにつける。


 御者は俺がするが、ヴァルは俺の隣で矢から俺を守れ。

 ニクラス、ヤスミーン、オグウェノは馬車の後ろに隠れて戦闘開始と同時に奇襲。


 戦闘が始まればクルトを前面に出して真ん中で暴れさせる。

 ニクラス、ヤスミーンは弓とクロスボウで馬車の後ろから左右を撃て。


 オグウェノは二人の射撃の後にクルトに気を付けて自由に攻撃。

 ニクラスは俺のところに来て、ヴァルと一緒に俺をガード。


 ヤスミーンはクルト、オグウェノに巻き込まれないよう、

 足で外側を回って端から攻撃。ニクラスは攻めやすそうな所を指示してやれ。


 アルノー様は馬車の中にいるか、可能ならヤスミーンを支援してやって下さい」


 作戦を決めてから俺達はゆっくりと森に隠れる者達に近付いた。




「おおっと商人、でくの坊を連れてるようだが、

 こっちは20人はいるんだ、諦めて大人しくしろや」


 俺達が街道を進んで行くと、矢が飛んで来るような事も無く敵が潜んでいるところまで到達。そこで、そう言って7人の野盗か傭兵崩れの様な男達がバラバラと森から出て来た。10人で矢を撃って来たらヴァルだけでは防ぎきれないとドキドキしていたが、飛び道具が無くてまずは一安心。

 それにしても3人は森に隠れたままか。道に出て来た連中は飛び道具を持っていない。森に隠れている連中の飛び道具を警戒する必要はあるが、とりあえず話を聞いてみるか。ヴァルブルガにはコッソリ3人が隠れている方を示して警戒させ、目の前で威嚇する連中に声を返す。


「どうせ今いる7人で全部だろうさ。


 このクルトは20人は殺してる殺人鬼だぜ、

 コイツ一人でお前達全員をハムのように轢き潰せる。


 お前ら食い詰め者の臆病な逃亡農夫だろうが、

 このまま森に帰るなら逃がしてやるぜ」


 敵の脅しに脅し返す俺に、クルトを恐々見る者が4人、真っ赤になって怒る者が2人、そして楽しそうに俺を見ている者が1人か。


「ふざけんなよ、商人!

 どっちみちお前は殺す事になってるんだ、粋がった事を後悔して死ね」


 真っ赤になったボスっぽい野盗が叫ぶ。おや、最初から俺狙いで襲って来たのか。

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