表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
173/234

対巨大魔物戦

 王都からペルレに戻って1週間、準備を終わらせた俺達は巨大ゾウムシを倒す為、ペルレの大迷宮に突入。2日半で入口のある0区から東に隣接する2区を越え、8区の奥の巨大ゾウムシのいる空洞の前までやって来た。そこで探知スキルを使うと、やっぱりゾウムシの奥の岩壁の中にミスリルがあるようだ。

 メンバーは俺、ヴァルブルガ、クルト、ニクラス、ヤスミーン、若い騎士アルノー、ヴァルの父アンスガー、大男ジルヴェスター、異国の男オグウェノ、ヴァルの兄ディーデリヒ、“瞬足”の騎士フリッツ、長剣使いのザンの11名+食糧等を積んだ山羊を引く5人の鉱夫奴隷だ。

 いつもは探知スキルを使って魔物を避けながら進むのだが、今回は主戦力となる4人の奴隷の力を試す為、あるいはザンが勝手に斬り付けたので、魔物を倒しながら進めたので移動時間をかなり短縮させる事が出来た。




「ピィーーーッ」


 俺がゾウムシのいる空洞、そこに続く手前の横穴で笛を吹くと、ゾウムシのいる空洞に周囲の横穴から沢山の松明が投げ込まれた。虫はどうだか知らないが、人は暗闇では物が見えない。その不利を補う為に、まずは明かりを確保する。

 ゲームの地下迷宮のような石畳ではない、自然洞窟のようなその空洞は真ん中が一番低く、壁に近付くにつれて段々足場が高くなり、そしてそれが壁となって天井に続いている。その長径は200メートルぐらいだろうか。

 一人一人が10本ほどの松明を投げ込んだが、それでもこれだけ広いとやっと空洞内がぼうっと見えるくらいだ。その空洞内に体長40メートルのゾウムシの姿が浮かび上がる。体高は20メートルはあるだろうか。6本の足で支えられた腹までは10メートルくらいあるので、槍でも届きそうもない。


「ピィーーーッ」


 2度目の俺の笛の音で、周囲の横穴から戦士たちが飛び出した。松明に気付いたのか壁に突っ込んでいた口を引き抜いたゾウムシは、動きを止めて様子をみている。ちゃんと見えているわけではないが、最初にゾウムシの足へと辿り着き、斬り付けながらその横を通り過ぎたのは“瞬足”の騎士フリッツだろう。

 斬り付けた時に金属同士がぶつかり合ったような甲高い音が鳴ったが、それで足が切れた様子はない。いくら巨大な虫といってもその足の直径は50センチ程度だろう。現代日本でいえばコンクリートの電柱くらいの太さだ。

 その外殻が普通の昆虫のようにキチン質なら、分厚い鋼の武器であっさり両断されただろう。事実、ここまでに遭遇した体長2メートルくらいの甲虫の体も、彼らの武器は両断する事さえあった。しかし、このゾウムシにはその常識が通用しない。金属並みの硬度があるという事だろうか。


 そして、その最初の一撃でゾウムシも慌てたのか、出鱈目に脚を動かして暴れはじめた。そこに2撃目の音が聞こえた。鈍い音がするものの、ゾウムシに目に見える損傷はない。そこには身長2メートルを超えるプロレスラーのような大男が、両刃の武骨な斧を振り上げていた。


「こいつけっこう堅いやつだな、

 カッタルイことは嫌いなタチなんで」


 彼が3度切り付けた時、ゾウムシは切り付けられた足を振り上げた。大男ジルヴェスターは、その足から逃れるように身を翻し、近くの岩場の陰へと隠れる。


「初めて出会ったぜ こんなガンジョーなやつ、

 逆に俺の『自信』てやつがブッこわれそうだぜ」




 手足の異常に長い男が同じ空洞内で岩壁を駆け上がり、跳躍から大槍を振り下ろした。その槍は地上約10メートルのゾウムシの足の真ん中の関節を斬り付ける。


「魔物を倒す…それのどこが偉いのかさっぱり分からなかった

 だがこの虫なら勇者が倒す価値がある、獅子(シンバ)ほどではないが


 オレはおまえの上を行く」


 オグウェノは揺れるゾウムシの背でしゃがみ、次に攻撃すべき場所を考えた。




 長剣の男はゾウムシの足の一本に取り付き、斬り付ける。遠くから見たその虫の動きがそれほど速くなくても、虫の足の1つの節が10メートルなら、関節が10°動くだけでその先端は2メートルも振り回される事になる。

 斬り付けた足に、まるで振られた鉄球に押し返されたように吹き飛ばされた男は、それでも6メートル先に着地すると、再び足へと斬り付ける。


「おいおい、デカくて偉そうで気に入らねぇな~。俺は、

 おまえの足がッ 千切れ落ちるまで 斬りつけるのをやめないッ!」


 そう言ってザンは唾を吐いた。




 俺は6人の戦士たちの戦いを、空洞に続く横穴の一つから見ていた。ゾウムシが大暴れで空洞を動き回り、戦士たちがその攻撃を掻い潜る。戦士達も攻撃を受けてはいないようだが、戦士達の攻撃もゾウムシに効いているようには見えない。


 今回、最初に松明を投げ込んで明かりを確保する以外に特に作戦は無い。巨大な魔物だからといって攻城兵器や大型弩砲(バリスタ)をこんなところまで持ち込むのも、手間が掛かり過ぎる。

 それに相手が一匹なら包囲以外に陣形も何もないだろうし、あの大きさ相手に隊列を組んだりしたらまとめて薙ぎ払われかねない。別に俺に指揮経験もないし、戦闘のプロでもないので本人達の方が専門だ。なので、どう戦うかは本人達に任せている。

 俺がやる事といえば、戦闘開始の合図。それと探知スキルで敵の援軍や乱入が無いかを見張って、何かあれば笛で知らせる事だ。そうして俺がゾウムシと戦士たちの戦いを見ていると、探知スキルに近づく何かの反応があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ