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研究所

 王都からペルレに戻った俺は、巨大象虫討伐の準備を始めた。ヴァルブルガの父アンスガーと手足の長い異国の男オグウェノの武装は王都で用意したが、他のメンバーの武装はここペルレで用意しなければならない。

 ジルヴェスターには1.5メートル近い柄に凶悪そうな分厚い両刃の戦斧(バトルアックス)と、アンスガーに近いポイントを絞った厚手の金属鎧を用意したが、その姿はアンスガーよりも山賊感が強い仕上がりとなった。

 逆に王都で買った長槍を選んだディーデリヒは、局所的な防御力は下がるものの長袖、膝丈の鎖帷子(チェーンメイル)で防御面積を増やす選択をしたようだ。長柄の武器は取り回しが悪いので、隙の少ない鎧を選んだという事だろう。


 なお、巨大象虫に直接攻撃を仕掛けるのは、アンスガー、大男ジルヴェスター、オグウェノ、ヴァルの兄ディーデリヒ、“瞬足”の騎士フリッツ、長剣使いのザンの6人を想定している。

 また、何でも器用に(こな)すニクラスは、予備戦力として王都で手に入れた銘品の斧槍(ハルバード)を使う事になったが、鎧に関しては鉄の板金による補強を増やしたものの、革鎧を基本とした主戦力達よりも軽装の物となった。彼に関しては敏捷性の確保というよりも、年齢的に持久力のためか。

 そしてクルトには2メートル近い柄の先に棘付きの鉄球が付いた凶悪な大槌を持たせ、急所の頭と腹だけを守る厚手の鉄兜と胴鎧だけを着させる事にした。彼を最初から出すつもりはないが、何かあった時には大槌を振り回して突撃してもらうつもりだ。


 ヴァルブルガも盾と剣を質の高い物にアップグレードした上で、ディーデリヒと同じようなチェーンメイルを着る事になった。彼女はいざという時、体を張って俺を守ってもらうので、体全体の防御力を上げる方向で武装を選んだ。

 ヤスミーンにはミスリルの槍をそのまま持たせている。あれは確かに並みの鋼よりも切れ味が良いが、如何せん細くて小さい。今回のような巨大な相手では、これでチクチクやるのは効率が悪いだろう。

 彼女の鎧はより特殊で、彼女の速力を落とさないよう関節を避けて、セパレートな胸と腹、二の腕と太腿をそこまで厚くない、やや面積の小さめの金属鎧を当て、残りを現代のライダースーツほどではないにしろ、曲げ伸ばしの容易な革で覆った。


 何というか彼女(ヤスミーン)だけ、おっぱいの(シルエット)がハッキリ分かるラノベやアニメのキャラ風のスタイルになってしまった。いや、上乳や下乳が露出したり、太ももが丸出し立ったりはしていないのだが。

 ヴァルとヤスミーンは俺の護衛として俺の傍にいてもらうので直接ゾウムシと戦わせるつもりはないが、装備の更新は念の為だ。ついでに大迷宮には潜らないヴァルの弟達の武装も標準品で準備した。




 ゾウムシ戦準備と並行して、王都で手に入れた錬金術師の工房の準備を始めた。まず場所の問題がある。錬金術師、名前をボニファーツというが、は研究の失敗で自宅を焼いて周囲の家屋に延焼させているし、俺が研究して欲しいのは火薬だから街の壁の中では危険でやらせられない。

 俺はハイモの田んぼの小屋を増築する事を考えた。ペルレから半日の距離のバックハウス男爵の荘園のさらに外で、耕作に使えない沼地の端だ。あそこなら万一火事になっても他の建物は遠いし、周りに沼地があるので延焼しづらい。そこで俺はバックハウス男爵に相談に行った。


「ところでレン君、エスレーベン子爵のご息女とご婚約したとか」


「いやはや、その件ですか。私も何が何だか分からない内に決まってしまって。

 まだ、そのご令嬢とも会っていないんですよ」


 バックハウス男爵は、特に渋るでもなく荘園脇の沼地の小屋の増築と錬金術の実験を許可してくれた。ただ、俺のエスレーベン子爵の息女との婚約の話は彼の耳にも入っており、凄く微妙な顔をしていたし、その経緯(いきさつ)も俺が嫌がらない範囲で詳しく聞いて来た。

 俺の方もバックハウス男爵とは今後も仲良くしたかったし、俺も決まって初めて聞いたこと、俺の希望ではなかったことをしっかりと説明した。この状況でも怒るでもなく、すんなり沼地の件を認めてくれたのは彼の人の良さの表れだろう。ただし、ゲアリンデ嬢は部屋に引き籠って顔を見せてはくれなかった。

 小屋の増築は、金を払うが男爵から人手を借りれる事になった。今はまだ冬場なので外は凄く寒いが、農作業がない農夫達の中には小遣い稼ぎに希望する者がそれなりにいるようだ。


 もともとある小屋は本当に屋根と壁だけしか無くて、1つの部屋に農具を置き、ハイモもそこで寝ていた。炊事場は無く、ハイモの食事はバックハウス男爵の農夫達と一緒にしてもらっていた。

 新しい小屋は農具置き場と錬金工房、ハイモとボニファーツの部屋、最初はともかく火薬の開発が進めば警備も必要だろうから警備員の部屋も必要で、それぐらいの人数がいるなら炊事場と食堂もあった方がいいだろう。

 ハイモと一緒に現地を改めて見て回った俺は、沼の脇の土地なら余っているし、元の小屋を納屋にして少し大きめに6DKの平屋を建てる事に決めた。


 バックハウス男爵の荘園からペルレに帰った俺は、沼の脇の錬金研究所の建設の為に農夫のハイモと錬金術師ボニファーツ、そして手伝い兼護衛にヴァルの弟達を向かわせたのだった。

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