エルフの見る夢
檻に入れられた俺達と、中学生男子の様なエルフ男達、きゃあきゃあ姦しいエルフ女達が騒いでいると、そこにまた別のエルフがやってきた。何となく偉そうな長い銀髪の男と、その男のお付きらしい武装した男が二人だ。その男は俺に近付いて来て言った。
ヤスミーンは俺に近付いて来て、新たに来た男との間に立つ。ヴァルブルガも耳を赤くしながら、立ち上がって俺を守るようにヤスミーンと並ぶ。そこに全裸の女二人に守られる、全裸の男という図が出来上がった。情けなさ爆発である。
「お前が不死者を引き連れて森に攻めて来た男か」
クッソ。まだヴァルブルガ、ヤスミーンにエルフとどんな話をしたかとか確認してないし、ヤスミーンに興奮しているエルフ男達とも、俺のそのなんだ、を棒で突こうと周りで騒いでるエルフ女達とも、まともな会話が出来ていない。エルフが俺達をどう思っているか分からないから、対策も考えられてない。
「いやいや、俺はただの商人ですよ。
ゾンビに追われて森に入っただけなんです」
「ふむ、女達と同じ事しか言わないか」
顎の下を扱く偉そうな男。ちなみにこの男、ムーブは長老っぽいが外見は別に老人でも無いし顎に髭も生えてない。何とか誤解を解いて解放してもらわなければ。
「本当なんです。
私はレン、ペルレ市でアントナイトの調度品などを扱うトルクヴァル商会を営んでおります。
オルフ大森林に隣接するザックス男爵様の御領地に、アントナイトの調度品を運ぶ途中で襲われて、馬車も捨ててこの森に逃げ込んだのです」
「何にしろ、我らが森に勝手に入ったのだ。
ただで帰すわけにはいかん」
そうか。オルフ大森林にエルフがいたなんて話は聞いた事が無かった。それは目撃されていないのではなく、目撃者は全員殺されていたからか。ヤバイな、何とか殺される事だけは避けなければ。でも、どうすれば。エルフが生きて帰しもいいと思う利益を提示しなければ。
俺がそんな事を考えていると、さらに別のエルフがやってきた。こちらは武装していない。
「長老、第五探索隊が戻ってきました。
今回もやはりダメでした」
「くっ、そうか。」
この偉そうな男はやっぱり長老だったのか。まあ、エルフだから若く見えて一番の年寄なのかもしれない。というか、何か大事な話なのかすっかり俺達の事は忘れて、檻の前で立ち話をしている。それにしても何か大事な物を探してるのか。これは俺達を認めてもらう為のチャンスではないのか。
「何かお困りなのですか。これでも探し物は得意なのですが」
「ふん、人間に話す事など何もない」
くそ、ここで終わらせて堪るか。少しでも前進しなければ。
「そ、それとどうしても聞いて頂きたいお願いがあります」
「ふん、何かを頼める立場だと思っているのかね」
「服だけでも返して下さい。
切実に」
それを聞いた長老は、真っ赤になっているヴァルブルガをちょっと見て、ヤスミーンをじっくり見て、最後に俺の股間辺りを0.05秒くらい見て言った。
「哀れだな。それぐらいは許そう」
えっ、哀れなのは俺の俺じゃないよね。その瞬間、別の場所から声が上がった。
「「「えーっ」」」
エルフ男3人組とエルフ女3人組だ。おい、エルフ男ども、最後のチャンスだとか言ってヤスミーンをガン見して脳内メモリーに保存してるんじゃない。そしてエルフ女ども、三人して棒を探して来るんじゃない。
それから三日、俺達はほとんど放置されていた。ほとんどというのは、例のエルフ男三人組とエルフ女三人組が、ちょいちょいやって来て檻の前に入り浸っていたからだ。あの後、服だけは返してもらった。一応、処刑とか餓死させる気はないようで、水瓶と少量の木の実などは貰えていた。
色々と聞きたい事はあったのだが、エルフ男三人組はダメだった。ヤスミーンをガン見しているか、ヤスミーンに人間に服は不要じゃないかとか言っていたり、三人で車座になって相談したりしていて、話し掛けても無視されていた。
俺と多少でも話せたのはエルフ女達で、特にクルクルしたブラウンの天然パーマのエルフ少女アンブリットが色々教えてくれた。エルフはみんな美形で個々人の振れ幅が小さい様に思える。AIで人間の顔を平均化すると美形になると聞いた事があるが、エルフはその振れ幅が人間より小さいのかもしれない。
そう思うとエルフは見分けが付かないように思えるが、肌色は白から褐色、髪色は黒が無くて金髪、ブラウン、赤毛と差はあるし、よく見れば顔にも多少の差はあるので、それで何とか見分けられそうだ。中でもアンブリットは特徴的な髪型と、変な喋り方なので特に見分けるのは簡単だった。
「あーしらさー、毎晩夢の中で妖精の都に行くっしょ。
でも最近行けなくなってガンサゲ」
とにかく、エルフ男達と違って俺が服を着てからは落ち着いたアンブリット達から聞いた話では、エルフ達は寝る前に香を焚き、そして夢の中で妖精の都に行くのだという。この時点でヤクでラリってるんじゃないかと思ったが、俺は彼女達の話を遮る事なく聞いた。




