ラブ・ランチ
ブリギッテさんにザックス男爵領行きの仕事を押し付けられた俺は、持ち出すアントナイト商品のリストとアントナイト以外でついでに運ぶ品についてまとめる様に指示して午前中の仕事を終えた。ブリギッテさんは午後にはまとめて置きます、と言われて仕事の早さに背筋が冷える思いをした。
さて、お昼はジェーンさんとのデートだが、『常若の島亭』に連れて行くと予想通り驚いてくれた。因みに護衛は全員連れて行ったが、クルトはデカすぎで入店拒否されたので店から少し離れたところで待ってもらった。
残りの護衛は一緒に入店して隣のテーブルで一番安い、串焼きとポテト等をつまんで待機してもらい、俺はジェーンさんとランチを楽しんだ。ちなみに体の関係のあるヤスミーンだが、こういう時にヤキモチを焼いたりはしない。逆に体の関係のないヴァルブルガが拗ねる様な様子を見せる。
それはさておき、ジェーンの話では彼女は河畔の街ライマンの商家の娘だったが、母親は早くに亡くなり父親は最近借金で奴隷落ちして、ペルレの親戚のパン屋に預けられたとか。親戚は彼女を厄介者と見ており、あまり扱いも良くないらしい。
あまり最近の話は暗くなりそうなので、彼女のライマンでの話を聞いたり、俺の最近の冒険の話をしたが、彼女は特に大迷宮の話に興味津々で盛り上がった。帰っていく時の彼女は少し元気になった様で良かった。ちなみにヴァルは機嫌が悪くなったが俺は知らん。
その後、ユリウスさんのところに顔を出して話を聞くと、ブリギッテさんの言う通りだと確認が取れた。
そして午後にはまたブリギッテさんにキュウキュウに絞られ、2日で出発できるよう準備しますとのお言葉を頂いた。え、そんなに急なの。
さらにその日の夕方、事件は起こった。俺が仕事を終えて3階の自室に戻っていると、レオナが女の人がきている、と仏頂面で言いに来た。ヴァル、ニクラスを伴って階下に降りてみると、泣きはらした顔のジェーンさんがいた。
「わ、私。追い出されちゃったんです。どうしよう。」
さてどうしよう。とりあえず、往来で話すのもマズいし、この建物に食堂なんてない。会議室を使うのもおかしい気がするし、執務室は機密資料なんかがあるから外部の人間は入れられない。となると、俺の自室しか無いよね。うん、しょうがない。
俺はニクラスを帰して、ヴァルだけ連れてジェーンを自室へと案内した。そこでレオナにお茶を頼んで、彼女の話を聞く事にした。彼女の話では朝の連中がパン屋に来て騒いだらしい。これを恐れて親戚はさっさと彼女を追いだしたとか。
これ、俺が巻き込んだせいじゃねぇ?遺憾だなぁ。彼女は今にも倒れそうだったので、隣に座って背中を撫でると俺にしがみ付いてすすり泣き始めた。むぅ、これは慰めてやらなくては。俺が彼女の肩を抱くと、彼女は正面から体を寄せて抱き付いて来る。そして言った。
「抱いて…下さい。」
俺は押し付けられるおっぱいに理性が揺さぶられるが、冷静な判断を下す。精神的に弱った女性を突き放したりしたら、自暴自棄になってどうなってしまうか分からない。これは人道的支援だ。彼女の心と体を助けよう。うん、そうしよう。
俺が彼女をベッドに誘うと、彼女は大人しくついて来て仰向けに寝転んだ。お、大きい。そして柔らかそうだ。俺は彼女のシャツに指を掛け前を開いて行く。彼女は抵抗する事無く潤んだ瞳で見つめている。そして俺は生まれたままの姿となった彼女の体に手を伸ばす。
しかし、おっぱいは逃げて行った。あれ?そこまで来て身を起こした彼女は言うのだった。
「レンさん、ミスリルってどこにあるんですか。
それだけ教えて頂ければ、好きにしていいんですよ。私の甘い、あまーい…み・つ。」
ああ、それを言ってしまったか。終わってから言って欲しかった。まあ、最初から探知スキルで彼女から小さな悪意は感じていたんだ。でも、殺意とかそういうんじゃないし、騙されたフリすればいい目も見れるかなって思ったんだ。
「君は何者なんだ。」
「私の名前はJ・P・ポルノデフ。
私の輝かしい未来のために!
天国の両親のやすらぎのために…
ミスリルの情報だけで私の処女にブチ込ませてあげるわ!」
ヒュンヒュンヒュン、ビシイイッ
「あー…、君の処女にそこまでの価値は無いから。」
俺がハッキリ言うと、彼女は激高した。
「ぬわんだとぉーっ、このビチクソがぁーっ。
私の処女は最も最も最も最も最も最も最も値打ちィィ、マネィーーーッ!!」
彼女はベッド脇のペーパーナイフを掴むと俺に突き立てようとして来る。だが、当然ヴァルに取り押さえられ、床に伸された。
「ご主人様、このイカれビッチをどうしますか。」
「あーっ、服を着せてから、叩き出してくれ。」
「ビッチに服なんかいらないのではないですか。」
「裸で叩き出すと、商会の評判に関わるから。」
「承知しました。」
それだけ言うとヴァルは、ジェーンの服を苦しい程ギュウギュウに締めて、事務所から叩き出した。何故かヴァルは晴れやかな顔をしていた。




