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兵士面接

 嫌な雰囲気だが俺は、にこやかな顔を作って呼び掛け始めた。


「皆さんこんにちは。バックハウス男爵代理のレンです。


 冒険者ギルドの募集要項を見て来たのだと思いますが、

 当男爵家では45名の兵士を募集をしています。」


 俺は目的地や敵について説明してから彼らを見回した。応募に対して募集が明らかに少ないので、不安そうに周りを見回すだけでなく、威嚇を始める奴までいる。俺は暴動が起きる前に話を進めようとする。


「まず15人隊長を3人決めたいです。

 15人隊長は、それぞれ自分の配下の2人の5人隊長を選んでもらいます。


 そして15人隊長、5人隊長は自分が直接指揮する5人の兵を選んでもらいます。」


 俺が大声で45人全員に命令して管理するなんて出来そうも無い。そこで5人1チーム、3チーム1グループとし、45人を3グループに分ける。そうすれば俺は15人隊長3人に指示を出すだけにできる。

 ひとりひとり面接なんてしてられないので、まず隊長を選び彼らに自分の兵を選ばせる事にした。自分の見る目に自信は無いし、仮にトップ3を選んだとしても残りの奴らが素直に従うとは思えない。そこで本人達に選ばせる事にしたのだ。

 たぶん、こうした方が『隊長』自身が使い易そうな、使いたいと思う兵を選ぶだろうし、選ばれた人間は『隊長』に多少でも恩を感じて従わせ易くなるだろう。それにお断りする人の対応も隊長に任せられるだろう。


「15人隊長の報酬は金貨1枚と銀貨50枚(15万円)、5人隊長は銀貨80枚(8万円)、

 そして平兵は銀貨50枚(5万円)です。


 行軍中の食糧はこちらで用意します。」


「ふざけんな、そんな安値で命を賭けられるか!」「俺は金貨3枚(30万円)は貰わないと戦ってやんねぇぞ!」「アンゲラー界隈で負け無しのこのエッカルト様を馬鹿にすんじゃねぇ!」


 集まったゴロツキ共が不平を叫ぶ。確かに安いが平兵でもギルドで募集した通り、隊長格はそれ以上払うんだから文句言うなよ。って言うか、アンゲラーってどこの怪獣だ。まあでも、ちょっとは希望も見せよう。


「報酬は戦果によって増額も考えています。

 報酬は魔族の討伐後にペルレで支払います。


 ペルレに戻るまでに自分の隊の兵が半分以上逃げ出したら、

 15人隊長の報酬は銀貨90枚に、5人隊長の報酬は銀貨50枚に減額します。」


「おいおい、他の奴の事まで知るか!」「はっ、こいつら腰抜けばっかだぜ!」「なんだと、剛勇無双のエッカルト様を腰抜けだと!」


 隊長には配下の管理責任、つまりは逃がさない様にして貰わなきゃならない。なので出来なきゃ報酬は減額するし、ぶん殴ってでも逃がさない様に必死になってもらおう。というかエッカルト、横の奴と喧嘩すんな。


「自分こそ15人隊長に相応しいと思う人は、

 配下となる5人隊長候補2人を連れて名乗り出て下さい。」


「隊長は俺だぜ!」「てめぇ、どいてろ!隊長は俺だ!」「このエッカルト…ふごっ。」


 あ、エッカルトが殴り倒された。あっちでは5人組と4人組で喧嘩が始まった。田舎から出て来たっぽい若者は腰が引けてるし、子供は脱兎ごとく逃げ出して、老人達は頭を抱えて(うずくな)っている。お、若者も乱闘に巻き込まれた。

 とりあえず俺は、クルト、ニクラス、ヴァルブルガの後ろに隠れてそれを見守る。止める気はない。もうちょっと穏便に、立候補者同士の力比べとかで決めようと思ったけど、期せずして力比べや組織戦が始まったので丁度いい。

 そうして見ていると、ゴロツキの2グループと若者の1グループが残った。ゴロツキの半分はひっくり返っているし、若者のもう1グループも顔を痣だらけにして座り込んでいた。ちなみにエッカルトは大の字になって横たわり、気を失っている様だ。




「ヤンさん、15人隊・赤隊(レッドチーム)の隊長をお願いします。」


 ヤンは薄汚い長い髪を背中まで伸ばした男で、5人ぐらいのゴロツキのグループのリーダーだった。手には長さが身長程、幅が手首大の棒を持っている。彼の部下は彼と似た様なゴロツキで、ただそこまで体格のいい者はいない。


「へっへっへっ。任せて下せぇ、旦那。

 しっかりと働きますよ。ええ、しぃ~~~っかりとねぇ~。レロンッ。」


「期待しています。

 それからウドさん、15人隊・黒隊(ブラックチーム)の隊長をお願いします。」


 ウドは肌の上に毛皮のチョッキを着た様な、蛮族ルックの男で腰には(なた)の様な、片刃の幅広(ブロード)(ソード)の様な、肉切り包丁の様な物を下げている。彼の部下もヤンと似た様な物で、自分が殴り倒した奴も自分の隊に入れている。


「ああ、アレだ。魔族だか貴族だが知らねぇ~が、

 金を出すならブッ飛ばしてやるぜ。」


「貴族はぶっ飛ばさないで下さい。

 最後にアヒムさん、15人隊・緑隊(グリーンチーム)の隊長をお願いします。」


 アヒムは田舎から出て来た様な若者グループのリーダーで、少しばかり錆びの浮いた古い剣を腰に下げている。彼は他の田舎出の若者グループを吸収し、残りは子供と老人で埋めた様だ。まあ、人数さえ揃っていれば別にいい。


「俺はこの戦いで名を上げてサーガに唄われる英雄になるんだ。」


「…うん、頑張って下さい。」


 こうして3人の15人隊長と3つの15人隊が決まった。ちなみ隊の名前は後日合流時に渡す、隊ごとの鉢巻の色にしてある。赤も緑もコスト的にそんなに鮮やかな色は使えないが、まあ賑やかし部隊でも制服代わりにそんなのでも付けて士気を上げてもらおうと思ったのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 赤隊は共産主義者なのか残虐ファイターなのか(スットボケ
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