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魔族の動き

 他に王都で調べた事は、コースフェルト伯爵領やその付近に現れる魔族についてだ。


 最初子供くらいの大きさの鼠頭が数匹で村の畑を荒らしたり、家畜や家財、子供を盗んだりするぐらいで、これだけならゴブリンの被害と変わらなかったという。しかし、その後身長2m近い犬頭の魔族が現れると、50匹近い集団で村の焼き討ち等を始めたという。

 さらにこれらの襲撃が1ヶ所だけではない事から、ノルデン山脈から降りてくる魔族は2~3つの集団がいると見られている。そして魔族達は村を制圧して居座る様な事まで始めたというのだ。これらの情報から魔族の総数は200~300匹程度という見方が大勢を占めている。

 この他、『南の商人街道』を通る隊商が俺達の他にも数件、極少数のハイエナ頭や猫頭の魔族に襲われる事があった様だ。その被害は人死にがあったり、何の被害も無く撃退したりという。




 王都にいたのは2日、トラブルが無くても片道3日だったので、全部で8日でペルレまで戻って来た。冒険者ギルドで募集した兵の面接の前日だ。


「会長、お帰りなさいませ。」


「誰だよ、お前。」


 事務所に戻ると、そこには見知らぬ女性がいた。何と言うか、いかにも商会の従業員といった、質素ながらもキッチリとした身形(みなり)の女性だった。暗い茶色の髪を後ろで1本にまとめているが、髪を分けてハッキリ見える顔はやや童顔だろうか。


「はい。レオナです。」


 ひどい問いかけ方だったのに淡々と返されて、ちょっと悪い気がした。そんな気もしてたんだが、あまりの変わり様に自信が持てなかったのだ。王都に行く前は、幼女の様な服と髪型、少しばかりの化粧をしていたが、今ではそれが年齢なりに変わっていてある意味ちょっと童顔のOLの様だった。


「私も商会で働くに当たって、それらしい服装を揃えました。

 これからもよろしくお願い致します。」


「ああ、うん。よろしく…。」


 喋り方もすっかり変わってしまったが、今後ウチの商会で働いてもらうには、俺の評判的にもコッチの方がいいだろう。その後、俺はペルレに戻って来た日の内に、俺達がいない間のアントナイト発掘や街中の様子を聞いてみたが、特別な事は何も無かった。

 他にも彼女の集めた情報を聞いたところ、ペルレで浮いている戦力でまともな人間は既にリントナー男爵、ジーベル男爵の募集に応じてしまっており、明日来る人間にはあまり期待できないという。まあ、予想通りだが結構凹むな。

 どうやらリントナー男爵、ジーベル男爵の集めた兵数は常時・臨時兵を合わせて100人と50人くらい、そしてコースフェルト伯爵は500人規模の兵を出すらしい。ビットマン子爵やデーネケ男爵の兵数は分からないが、全体で800~1000人規模の軍隊になりそうである。


 鼠頭の魔族はゴブリン程度の力しか無い様だし、俺達が遭遇したハイエナ頭の力量を考えれば犬頭も人間の戦士とそう大きな差は無いだろう。となれば魔族が300匹程度なら、800人もの兵数を集めれば十分討伐が可能だろう。

 まあ、俺の集めるバックハウス男爵軍は戦力外になりそうだが。逆に50人くらいがいるだけの賑やかしでも大丈夫そうなのは、安心材料だろうか。そんなやや投げやり気味の思考と、明日への不安を抱えながら俺は眠りにつくのだった。




 翌日、俺はペルレの外で応募して来た者達と会っていた。45人の募集に100人くらい来ているのはいい。こんなに来るとは思わなかったし、何なら定員割れも考えていた。だから、応募人数自体は歓迎すべき事だった。

 どんな奴がいるかといえば、田舎から一旗揚げようと出て来たっぽい、インゴ達の様な若者が5~6人いた。だが、体格はインゴ達よりも劣っていて身長180㎝を越える奴はいない。だが、コイツ等はまだ新兵としてはまだマシな方だろう。

 次にあの冒険者ギルドで騒いでいた、『命知(デアデビル)らずの狂牛団(クレージーブル)』と同じ様なゴロツキが30~40人いた。下品だし、汚いし、信用できない奴らだ。だが、まあ年齢的には20~40歳くらいの成人なので、兵としては適正な範囲だった。


 だが、集まった100人の半分以上は8~12歳くらいの子供と50歳を過ぎた様な老人だ。日本の50~60歳といえばまだまだ元気で働き盛りだろうが、こっちでは本当にヨボヨボの老人という感じになる。ハッキリ言って戦闘どころか戦地までの行軍についていけるか不安である。


「あ~、お(あつま)り頂き…。」


 俺が声を出しても、集まった奴らガヤガヤと騒がしく一向に聞く様子が無い。俺が話し始めたのに気付いたのも、俺の極近くにいるものだけだろう。俺はクルトを傍まで呼ぶと言った。


「おい、クルト。

 そこの地面を思いっきりぶっ叩け。」


「ブフッ。」


 え~っと、了承の相槌なんだよな。豚の泣き真似をしたわけじゃないよな。その証拠にクルトはすぐ傍の地面を叩く。その音は思ったほど大きくは無いが、土が爆ぜて回りに撒き散らされた。それで集まった者達は静かになったが、剣呑な雰囲気となりこちらに(にじ)り寄って来た。

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