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帝国生地の行方

 ペルレを出て3日目の昼過ぎに王都へ着くと、アリスとはあっさりと別れた。俺達には商談があるし、アリスを連れ歩くわけにはいかないからな。アリスは王都でショッピングらしい。何と言うかラノベの転移者っぽい呑気さだ。

 俺達は俺が王都でゴルドベルガー家に取ってもらった街の外壁の門の近くの宿、『王都の出口亭』に投宿した。この宿は行商人や貴族の使用人と言った人々が泊るごく普通の宿で、清潔な上に貴族だの無法者だの面倒な層が泊る事は無いので安心だ。

 泊まるのは俺とヴァルブルガ、ヤスミーンで、クルトはやっぱりデカすぎて床が抜けると馬小屋泊となった。ニクラスの家族はこの王都に住んでいるらしいので、彼は久しぶりに家族のところへ行けばいいだろう。


 宿を取った後もまだ日が暮れるまでに時間があったので、俺は早速のヴィルマーさんの店に行ってみた。ヴィルマーさんは俺が王都に来たばかりの時に、ちょっとした小遣い稼ぎでお世話になった布問屋だ。俺は彼を信用しているので、マニンガー公国で買って来た帝国製の高級生地を売るには彼がいいだろう。




「ほう、こりゃなかなかいい生地じゃないか。

 帝国製の生地はいつも品薄だから色を付けて買わせてもらうよ。


 レン、お前を世話しといて良かったよ。」


「ヴィルマーさんにはお世話になりましたからね。

 それに俺としてもまとめて買ってもらえるのは助かりますよ。」


 ヴィルマーさんとの取引はすんなりと終わり、金貨20枚(約200万円)分の帝国製の生地を金貨40枚で買い取って貰えた。これでヤスミーンを除いても、ユリウスさんのダーミッシュ商会、食品王手のヴァルヒ商会に売った分も含めて3ヶ月の旅で金貨50枚の利益を出した事になる。

 う~ん、ヤスミーンを金貨75枚とすると今回の旅の利益はほとんど彼女で消えているな。逆に言えば、現物も含めて3ヶ月で金貨125枚の利益と考えれば悪くは無いのか。あ、傭兵団『貨幣(マネー)収穫(ハーベスト)』の支払いが金貨18枚だから、利益はもちょっと少ないか。

 今の手持ちは、ゴルドベルガー伯爵家からの報酬で金貨100枚、ヴァルとクルトの代金でマイナス金貨40枚、ミスリルの採掘が現物取り置き分も含めて金貨120枚くらい、ニクラスの購入にマイナス金貨70枚で、合わせて金貨150枚分くらいか。


 20代の個人が1500万円の貯金があるといえば結構貯めたな~って感じだが、零細企業や個人商店でも事業者の資金が1500万円といえばあんまり余裕があるとは言えないだろう。結構頑張っているつもりなのに、何でこんなに資金が手薄なんだ。自転車操業よりましなくらいか。

 せっかく王都まで来たけど、豪遊しようという余裕はない。何でラノベの主人公はあんなにポンポン美少女奴隷を買えるんだろう。俺もチート能力でガッポリ儲けて美少女ハーレムとか持ちたい。いや、ハーレムじゃなくていいので、湖畔のログハウスでスローライフとかしたい。

 俺は妄想を頭から振り払うと、ニクラスの案内で彼の家族がいる家へと向かった。彼は良く働いてくれているので、約束通りこの機会に家族と会わせてやろうと思ったのだ。別に彼の家族を覚えておいて、いざという時に人質にしようという(わけ)じゃないよ。




「あなた、大丈夫だったの。」


「ああ、無茶な命令はされてないし、

 食事も寝床も普通の人と同じ様にしてもらっている。」


「パパ、帰って来れないの。」


「パパはこの人の下で働いているんだ。

 ちゃんと働いていれば、また会えるさ。」




 ニクラスはそのまま家族の家に泊まって、翌日宿に戻って来る事になった。お土産というのも変だが、俺はニクラスに夕食用の肉を一塊(ひとかたまり)渡しておいた。まあ、平民なら菓子や果物よりも肉の方が喜ばれるだろう。今夜はすき焼きみたいな物だ。




 翌日から俺達は王都で情報を集めた。コースフェルト伯爵はカウマンス王国の北東部、カウマンス王国の東にあるノルデン山脈の麓からツェッテル川の東岸までを治める大貴族で、常時兵は1000人近いらしい。とはいえ、一度に動かせるのは半分以下か。

 コースフェルト伯爵は『南の商人街道』とその周囲に広がる広大な農作地を有する裕福な貴族で、いつでも自分の領地が秩序立って運営されている事を望み、騒乱やハプニングが大嫌いらしい。なので魔族に領地を荒らされるなど許し(がた)く、全力で早期に終わらせるだろうと言われている。

 また、コースフェルト伯爵の近隣の貴族家として北にビットマン子爵、南にリントナー男爵、伯爵の領内の村の代官としてデーネケ男爵がいて、それぞれ300人規模、100人規模、30人規模の兵を保有し、今回の戦いに参加する見込みが高いらしい。


 他にもコースフェルト伯爵の、言うなれば居候(いそうろう)にジーベル男爵という人物がいた。この男の立場は微妙なところで、先代は村の代官をしていたが、彼自身は同世代の若者と徒党を組んで武勇を磨く事に専念していたので代官からは外され、立場を保留されている。

 彼も自分の立場を固めるためにも、今回の魔族の討伐には進んで参加すると見られている。きっと脳筋の人なんだろう。俺の前に出てガンガン進んで、盾になってくれるといいな。

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