その三十四 それでもやっぱり勘違いされたい五階さんと、言葉通りに受け取る楽面君
自分の過去から来る態度を受け入れられ、大笑いをした望美。
そして通との関係は……?
どうぞお楽しみください。
始業前の教室。
「へぇ、楽面君、猫飼ってるのね」
「うん、抹茶っていってね、すっごい可愛いんだ」
「そう。写真ある?」
「あるある! えーっと、最近撮ってなかったから、結構前の……」
穏やかに話す望美と、嬉しそうに答える通。
その様子を信じられないものを見るような目で見る宏人は、美夜子に話を振る。
「な、なぁ、何で楽面と五階があんな普通に喋ってるんだ?」
「……」
凄まじい目つきで宏人を睨んだ美夜子は、ころっと表情を変えて微笑んだ。
「あら、誰か思うたらえらい短い期間役に立つ情報をくれはった浅井君や」
「え、あの……?」
「『五階の秘密を暴いてくる』言うたその自信は見事やったわぁ」
「え、でもあれは京極が探って来いって言って……」
「うち友達にようそんな事言えしまへん」
「じゃあ報酬の京都弁の可愛い女の子のアドレスは!?」
「そんな約束した覚えあらしまへんけど、うちとアドレス交換した時点で叶っとるやない?」
「そんなの詐欺じゃ……!」
「やーん! 五階はん! 浅井君がうちの事可愛ないって言うー!」
「!?」
驚く宏人をよそに、美夜子は望美に抱きつく。
望美はやんわりと美夜子を剥がしながら、宏人に冷たい目を向けた。
「……浅井君、そういう小学生みたいなのはやめた方がいいわよ?」
「ちょ、違っ……!」
「あ、もしかして可愛いじゃなくて綺麗って言いたいのかな! 僕も五階さんに綺麗って言わなきゃって思ってたんだ!」
「なっ! そっそういう事は急に言わないでよねっ! でっでもびっくりしただけで嫌なわけじゃないんだからねっ! 勘違いしないでよねっ!」
「うん!」
「……」
そんな二人を見ながら、美夜子は小さく溜息を吐く。
(あの浅井君使うて五階はんの過去を聞いた時は、絶対あないな事楽面君には話されへんと思うたのになぁ……。結果的に後押ししてしもたんやなぁ……)
しかしその目にはまだ消えない火が宿っていた。
(せやけどあの五階はんの性格と楽面君の鈍さやったらまだつけ入る隙はある! 諦めへんよ五階はん!)
そんな決意など知る由もなく、
「あ、じゃあ今度うちの抹茶と遊びに来る?」
「いっ行くに決まっているけど抹茶ちゃんと遊びたいだけなんだからねっ! 勘違いしないでよねっ!」
「ならうちも行きたいわー」
「お、おい楽面! 俺も行く!」
「うん! みんなで遊びに来てー!」
平和な時間が流れていくのであった。
読了ありがとうございます。
ツンデレ台詞を可愛い子に言わせたいだけの小説だった……。
お読みいただき、ありがとうございます。
ツンデレにはまだ可能性を感じているので、何かでまた書きたいと思います。
それではまた別の作品でお会いできるのを願って……。




