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その三十三 告白と笑顔

美夜子みやこを疑うあまり、とおるの前で詰問してしまった望美のぞみ

大混乱の結末やいかに。


どうぞお楽しみください。

 駅前の喫茶店。

 望美のぞみ美夜子みやことおるを前に、真っ赤になって震えている。


「……なぁ、五階ごかいはん……」

「……な、何……」

「その、さっきの話やけど、一から説明してもろてええ?」

「……」

「何や勘違いもあったようやから、ちゃんと話しといた方がええと思うんやけど……」

「……」


 美夜子の言葉に、望美の身体には更に力がこもった。

 その思い詰めた様子に、通が口を開く。


「あの、五階さん……」

「なっ何っ!?」

「あのね、僕も知りたいんだ。五階さんが何に困ってるのか、知ってできる事なら助けたいんだ……」

「べっ別に助けてもらいたくなんか……!」

「失礼します。ご注文よろしいでしょうか?」


 望美の叫びは店員の言葉に遮られた。


「あ、じゃあうちは抹茶ラテを」

「僕はアイスココア。五階さんは?」

「……ホットコーヒー」

「かしこまりました」


 店員が去ると、三人の間には再び沈黙が満ちる。

 それを破ったのは、通だった。


「……五階さん」

「なっ何よっ!」

「あの、僕がいると言いにくいなら、帰るから言ってね……?」

「べっ別にいてもらいたくないなんて思っていないんだからねっ! かっ勘違いしないでよねっ!」

「あぁ、ならよかったー」


 心の底から安心した様子の通を見て、望美は胸が痛むのを感じる。


(いつもこうだ……。私の言葉で楽面がくめん君を不安にさせる……。ちゃんと気持ちを伝えなきゃ……!)


 一度恥をかいてしまったという気持ち。

 目の前の通の微笑み。

 以前宏人ひろとに語っていた事もあって、心のハードルが下がっていたのもあり、


「……じゃあ、聞いてくれるかしら……」


 望美は重い口を開いた。


「私ね、その、昔は自分から人に話しかけられないくらい、その、引っ込み思案だったの……」

「え、そうなんだ」

「今の五階はんからは想像でけんなぁ……」

「その時に、その気の強い子達にいじられて、辛い時に優しくしてくれた子がいたの……。でもその子は気の強い子達に引き込まれて、私の秘密を暴露して……」

「ひどい……」

「五階はんにそんな事が……」

「……だからそれからは人と距離を置くようにしてるの。人が信用できなくて……」

「そんな……」

「それでうちが何か考えとるって思うたんやね?」

「……」


 無言で頷く望美。

 その様子に泣きそうな顔になる通。


「じゃ、じゃあ僕の事も信用できない……?」

「べっ別にそんな事言ってないでしょっ!? かっ勘違いしないでよねっ!」

「え、あ、うん!」

「あ……」


 笑顔になる通に、望美は再び表情を曇らせる。


「……いつもこうなの……。楽面君はいつも素直で真っ直ぐで……。信じたくて、でも怖くて……。だからこんな強い言い方をしちゃって……」

「五階はん……」

「そうなんだ。でも別によくない?」

「え?」


 通の言葉に望美は目を丸くした。


「な、何で……?」

「だって元気ある感じするもん! その方が五階さんらしくていいと思う!」

「……!」


 通の言葉に、望美は手で覆った顔を伏せる。

 その肩が小刻みに震えていた。


「五階はん? 泣いとるの?」

「えっ!? 僕何か悪い事言っちゃった……?」

「……ふ、ふふっ、ふふふっ……!」


 美夜子と通の心配をよそに、望美は肩を震わせて笑い出す。


「あっはっはっ! 私今まで何考えてたんだろ! 楽面君に怯えて、京極さんを疑って……!」

「え、ご、五階はん……?」

「よかった、泣いてなかった……!」


 戸惑う美夜子と喜ぶ通。

 そんな二人が見守る中、望美は涙を浮かべながら笑い続けるのだった。

読了ありがとうございます。


ようやく取れた望美の心のかせ


あと一話で完結できる予定です。

よろしくお願いいたします。

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