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その二十九 過去と現在

無理矢理巻き込まれた宏人ひろとが、望美のぞみとおるへの態度の理由を問いただします。

それに対する望美の答えは……?


どうぞお楽しみください。

 放課後。

 一緒に帰ろうと迫る美夜子みやこを避けるように、望美は図書室に向かった。


五階ごかい

「……何、浅井あさい君」


 そこに後ろから宏人ひろとが声をかける。


「前々から聞きたかったんだけどさ、何で楽面がくめんにだけあんな態度になるんだ?」

「……答える必要、あるかしら」

「これだけ巻き込まれてるんだ。教えてくれたって良いだろう?」

「嫌よ。あなたって信用ならないもの」

「……っ」


 冷たく言い放つ望美。

 宏人は一瞬たじろいだが、にやりと笑みを浮かべる。


「教えてくれたら、あの日ゲームセンターで楽面がチベスナ取った時の写メ送るんだけどなぁ」

「っ」

「満面の笑みだぜ? 欲しくないなら別にい」

「私は昔引っ込み思案だったの」

「……食い気味で話し始めた……」


 目を丸くする宏人に、望美は淡々と話を続ける。


「そんな性格だったから、気の強い子達から色々いじられたわ。そんな時優しくしてくれた女の子がいたの。私はその子なしにはいられないくらいに頼ったわ」

「……今の五階からは想像つかないな……」

「でもそれが気に入らなかったのか、その子は気の強い子達に取り込まれた。そして二人だけの秘密を聞き出されて、クラスの皆に暴露された」

「……うわ……」

「だから私は誰かに寄りかかるのをやめた。常に距離を置いて冷静に対応する。それが一番賢いやり方って理解したから」

「……」


 壮絶な過去を聞き、言葉を失う宏人。

 しかしそこで首を傾げる。


「え、じゃあ結局楽面に当たり強い理由は何なんだ?」

「彼が無遠慮に踏み込んでくるから、少し強めに距離を取っているだけ。特別な意味はないわ」

「そ、そうなのか……」


 宏人が頷いたその時。


「あ、五階さん」

「!?」


 とおるが望美を見つけて駆け寄って来た。


「五階さんも図書室に行くの? 僕も本を返しに行くんだ。一緒に行かない?」

「べっ別に目的地は一緒だから一緒に行くけど、いっ一緒にいるのが嬉しいとかじゃないんだからねっ! かっ勘違いしないでよねっ!」

「うん! じゃあ行こう!」

「……そうね……」


 二人のやり取りを見た宏人は、


「……え、結局どういう事なんだ……?」


 ただただ頭を捻るのであった。

読了ありがとうございます。


望美の過去のトラウマ。

果たして乗り越えられる時は来るのか……。


次回もよろしくお願いいたします。

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