その二十八 お菓子と赤面
美夜子との会話に通を巻き込もうとして失敗した望美。
次なる一手は……?
どうぞお楽しみください。
休み時間。
「五階はん! スイーツのお店について聞きたいんやけど」
「それなら彼を呼ぶわ」
美夜子をかわした望美は、宏人の席に向かった。
「浅井君。あなたスイーツ詳しいでしょ。こっちに来て」
「えっ、ちょっ」
戸惑う宏人に、望美は更に畳み掛ける。
「そう。動きたくないなら私達がこっちへ来るわ。良いかしら京極さん?」
「……まぁえぇけど、せやったら楽面君も呼んでえぇ?」
「……!? 構わないけど……」
「ほな行きましょ、楽面君」
「うん」
望美は平静を装いながら、内心では大混乱の極みだった。
(京極さんと浅井君との接点を作って、私以外にも話せる人を増やそうと思ったのに……! でも楽面君と話せるのは嬉しい……)
そうしている間に、美夜子と通は宏人の席へと集まる。
「それで、スイーツの話だったかしら? 京極さんは何が知りたいの?」
「和菓子の美味しいお店探しとるんや。できればお店の中で、お抹茶と一緒に楽しめる店がえぇなぁ」
「だそうよ。何か知ってる?」
「そんな急に言われても……。楽面、どこか知らないか?」
「うーん、僕お菓子って家でしか食べないからなぁ」
「……」
通の言葉に、望美は胸を押さえてのたうち回りたいのを必死で堪えた。
(可愛い! 親御さんが作ったか買って来たお菓子しか知らないなんて……! あ、じゃあ私が作ったクッキーはもしかして……)
望美の脳裏に以前渡したクッキーがよぎったその瞬間、通が口を開く。
「あ、でも前に五階さんが作ってくれたの食べたから、お家だけじゃなかったや」
「べっ別にお家以外の初めてのお菓子になったからって嬉しくないんだからねっ! かっ勘違いしないでよねっ!」
「え、う、うん。でも美味しかったよ」
「〜〜〜っ! ちょっちょっと水飲みたくなったから廊下の冷水機に行くけど、かっ勘違いしないでよねっ!
顔を真っ赤にした望美は教室を飛び出した。
(もうっ! もうっ! もうっ! 何で不意打ちであんな嬉しい事言うのよ! 顔が赤いの、ばれなかったかしら……!?)
そして言葉通り、冷水機にたどり着くと、水をがぶ飲みする望美。
それでも顔の熱が下がる気配は一向に感じられないのであった。
読了ありがとうございます。
まぁプラマイで言ったらプラス寄り?
次回もよろしくお願いいたします。




