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その二十七 叫びと安心

とおるとなかなか話せない事に焦る望美のぞみ

何とか会話をしようと考えを巡らせますが……?


どうぞお楽しみください。

 数日が過ぎた。


「……楽面がくめん君と全然話せてない……」


 望美のぞみは学校のトイレで、深々と溜息をつく。

 あれ以来、美夜子みやこが何かにつけて話しかけてくるため、とおるとの会話の機会が得られないのだ。

 ならば美夜子を追い払えばいいのだが、転校して来て不安そうだった時の様子を思い出すと、どうしても突き放せない望美。


「どうしたらいいのかしら……」


 その時、望美は閃いた。


「そうよ、楽面君と京極きょうごくさんと三人で話せる話題を振ればいいんだわ」


 三人で和気あいあいと話す姿。

 それをイメージすると、うまくなりそうな気がした。


「……よし」


 望美は手を握ると、教室へと戻る。


「あ、五階ごかいはん、お帰り!」

「……えぇ」

「なぁなぁ、このスカート、可愛い思わへん?」

「……そうね。可愛いわね」


 教室の入口で携帯の画面を見せながら話してくる美夜子をさらりとかわし、自分の席へと座った。

 隣には通。

 望美はちらりとそちらを見ながら、ついて来た美夜子に話を振る。


「京極さん、猫は好き?」

「え? あ、うん。猫好きや」

「そう。……あの、が、楽面君は、猫、好きかしら……?」

「えっ?」


 水を向けられた通は、一瞬目をぱちくりさせた後、にっこりと微笑んだ。


「うん! 猫大好きだよ!」

「……そう……」

「……?」


 望美の反応に、首を傾げる通。


「あれ? 五階さん、元気ない?」

「えっ、なっ何がっ!?」

「いつもだと何か叫ぶのに……」

「べっ別に叫びたくって叫んでる訳じゃないんだからねっ! かっ勘違いしないでよねっ!」

「あ、いつもの五階さんだ」

「……」


 いつも通りと言って喜ぶ通に、望美は複雑な顔を見せる。


「……ふふっ」


 その様子を見て美夜子は小さく含み笑いを漏らすのであった。

読了ありがとうございます。


いつも通りと安心されて、いいのか悪いのか……。


次回もよろしくお願いいたします。

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