その二十二 景品と拒絶
フードコートの後はゲームセンター。
学生らしく遊びのですが……?
どうぞお楽しみください。
ショッピングモール内のゲームセンター。
昼ご飯を終えた四人は、腹ごなしに立ち寄っていた。
「わー! 駅前のより大きいねー!」
「この辺りじゃ一番大きいからなー」
「うち、ゲームセンターって初めて……」
「さ、何をするの?」
望美の言葉に、宏人が『景品くれーン』を指差す。
「あれやろうぜ。俺得意なんだ」
「へー! 僕取れた事ないや! 見たい見たい!」
「へぇ……、このボタンで中の機械を動かして、景品取るんやね」
「お手並み拝見と行こうかしら」
三人が見守る中、宏人がお金を入れた。
機械が動き、景品に爪を伸ばし、
「おおー!」
「す、凄い……」
「一回で取れるなんて、言うだけの事はあるわね」
見事に景品を落とした。
「で、これ何てキャラ?」
「……『表情豊かなチベスナ』……」
「どこが?」
「……これは『眠いのを我慢しているチベットスナギツネ』やって……」
四人は『景品くれーン』の中を覗き込む。
他には『達観したチベットスナギツネ』『遠い目で過去を懐かしむチベットスナギツネ』『全財産がラシャに溶けたチベットスナギツネ』などが置かれていた。
「……全部同じじゃないかしら」
「浅井君、これ好きなの?」
「……いや、別に……。取れそうだから取っただけで……」
「でも何や愛嬌ある顔してはるなぁ……」
微笑む美夜子に、宏人は
「ならそれやるよ」
「え?」
と無造作に言う。
「俺、取れただけで満足だから」
「お、おおきに……」
「……」
すると通が財布を取り出した。
「ねぇ浅井君! 僕にもやり方教えて!」
「え、あぁ、いいけど、確実に取れそうなのはこれだけなんだが……」
「うん! これが取りたい!」
「わかった。まずは狙う景品の重心を見極めてだな……」
宏人の指導を受けて三回目。
「取れたー!」
「三回で取れたら大したもんだ」
「凄いわぁ。うちには無理やわ……」
「……」
はしゃぐ通を見つめる望美。
その目の前に、
「はい! 五階さん!」
「えっ!?」
『くしゃみが出そうで出ないチベットスナギツネ』が差し出された。
「あげる!」
「……え……」
「見てたから欲しいのかなって!」
通の満面の笑みに、固まる望美。
(え、これってプレゼントって事!? 私に!? 何で!? 嬉しいけど何で何で何で!?)
今日一テンパった望美は、
「べっ別にそんなの欲しくないんだからねっ! かっ勘違いしないでよねっ!」
「え……」
「あちゃー……」
「五階はん……」
全員が固まる言葉を吐いてしまったのであった。
読了ありがとうございます。
チベスナかわいいよチベスナ。
不穏な感じはチベスナに癒してもらいましょう。
次回もよろしくお願いいたします。




