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648 ミラの秘策

六百四十八



「試すって言っても、どうにもならないでしょ。ドラゴンブレスでも破れなかったのに。まあ限界突破の方は試してないけど、この感じだとどうかな」


 無敵となった魔王を前に、試したい事があると言ったミラ。その言葉に対して真っ先に反応したのはカグラだった。とはいえ彼女の顔に浮かぶのは期待ではなく疑問だ。

 魔王を護る力に対して、ここにいる誰のどんな攻撃だって通じる気配もなかった。アイゼンファルドが放つ限界突破ドラゴンブレスの威力は凄まじいが、もはやそういった威力がどうのという域ではないというのがカグラの考えだ。


「わかっておる、わかっておる。単純な力比べでは、もうどうにもならんじゃろう。ゆえに、まったく違ったアプローチを思い付いてのぅ。とりあえず、これだけちょいと試してみたいと思ったわけじゃ」


 きっと限界突破ドラゴンブレスでも護る力は砕けない。ミラもまた、そこは同じ考えであった。だからこそ他の方法を考え、一つの案に行き着いたのだ。


「まあ、いいんじゃないかい? 封印の準備にも時間はかかるし、その間に幾らでも試してみればいいさ」


 封印の準備を進めている今、他に出来る事といったら魔王の様子を見守っているくらいしかない。ゆえにアンドロメダは、そんな合間の時間に試したいだけ試せばいいと答えた。


「大丈夫……なのか?」


 いったいミラは何を企んでいるのか。九賢者の思い付きというものを、あまり信用していないノインは訝しげな顔だ。


「とりあえず、封印作業の邪魔にならないようにしてよね」


 過去にも色々としでかしてきたダンブルフ、もといミラである。カグラもまた不審な目を向けていた。


「大丈夫じゃ、問題ない。消したり壊したりといったものとは無縁の予定じゃからな!」


 そう自信満々に答えたミラは、いよいよ実験成果のお披露目を始めようと魔王に歩み寄っていく。

 すると、そんなミラの歩調に合わせて隣についてくる者がいた。


「なんじゃ、見張り役か?」


「いや、万が一にもあれを破られたら、次に魔王がどう動くかわからない。いざという時の備えも必要だろ?」


 そう答えたのはノインだ。何だかんだと訝しみながら、もしもの時はミラを守るためにと護衛役を買って出たわけだ。


「ふむ、確かにその通りじゃな。では頼りにしておるぞ」


「あ、ああ。任せてくれ」


 今は瀕死の状態の魔王。だからこそ切り札ともいうべき護る力を破った場合、どれだけの抵抗をみせてくるかわからない。

 そんな時は、防御のエキスパートであるノインが傍にいた方が確かに心強いというものだ。

 また同時にノインの言葉は、ミラならばもしかしたら本当にと思った証拠でもある。何だかんだ言いながら、ミラの力を認めてもいるわけだ。

 だからこそ自信満々で嬉しそうに返したミラ。ただノインにとっては不意打ち気味の笑顔だったようだ。任せてくれと言った彼の顔は、戸惑いと高揚に染まっていた。


(この可愛さは、やはり罪作りじゃのぅ)


 ノインの想いを知ってか知らずか、というわけでもなく十分に知りつつほくそ笑むミラは、さてと気持ちを切り替えて魔王に向き合った。


「これまでの研究の集大成じゃ。ド派手にいこうではないか!」


 気分よく叫んだミラは、中空にアルカナの制約陣を配置した。ただ、それだけでは当然終わらない。更にもう一つ、続けてもう一つ。幾度と繰り返したのだ。

 そうして合計十にも及ぶアルカナの制約陣が円を描くように空に浮かんだ。

 すると今度は、その全てをロザリオの召喚陣へと変化させる。


「え……最大で四つじゃないのか」


 静観しつつも疑問が先に膨らんだようだ。ノインは、思わずといった様子で呟いていた。

 事実、ロザリオの召喚陣が必要な最大数は、アイゼンファルドの四つだ。その事は、ここにいる誰もが色々な思い出込みで知っている。

 だからこそ、それが空に十も浮かぶのは何かと衝撃的な光景だったりするようだ。


「いやいや、まだまだこれからじゃよ」


 いいリアクションだとノインに微笑みかけたミラは、続けてアイテムボックスから一つの術具を取り出した。

 それは、日之本委員会に注文して作ってもらったとっておき。そう、マナ貯蔵のための術具だ。

 それを受け取った日から毎日欠かさずチャージし続けていたマナ量といったら相当なもの。そして、これだけのマナを貯め続けてきた一番の理由は、もうあれしかない。

 ついにこれを使う時が来たと意気込むミラは、いざ気合を入れてロザリオの召喚陣にマナを注ぎ込んだ。すると空が微かに輝き始め、ロザリオの召喚陣がゆっくりと円を描くように動き出す。

 そうして徐々に速度を増していき、いよいよ輝きの軌跡が大きな円を作り出した時だ。


「よし、ここじゃ!」


【超越の儀:アストラの十界陣】


 満を持してという気持ちと共に両手を合わせたミラは、一呼吸の間を置いてから空に向かい両手を大きく広げた。

 その時、空が大きく歪んだ。そこにある全てがねじ曲がったかのように天も地も無関係に映り込んでは消えていく。その様子はまるでチューニングでも合わせているかのようだ。


「おいおい、何を始めるつもりなんだ……。魔王を倒すために別の魔王を喚ぶとかじゃないよな」


 これまでの召喚もかなりのものだったが、今回は明らかに次元が違うと察したのか、ノインは顔に疑いと緊張の色を張り付けながら大盾をよりしっかりと持ち直した。


「馬鹿を言うでない。それはそれは高貴なお方に決まっておるじゃろうが」


 魔王を召喚など、それこそ悪役定番の所業ではないかと呆れたように返したミラは、見て驚けと小気味に笑いながら空に巨大な図が描き出されていくのを見守った。


「さて、仕上げといこう」


 複雑な図形と文様の組み合わせによって形作られたアストラの十界陣。ミラが空を指さすと、そこに光の点が現れる。次に指を動かすと、その点もまた動き出し光の線を残していく。

 ミラは、その点と線で空に大きな星座を描いた。

 するとどうだ。浮き上がった星座が、ゆっくりと脈動し始めたではないか。


「いよいよ、じゃな」


 準備は出来た。アストラの十界陣が完成したのを確かめたミラは、今一度気合を込めてから詠唱を口にした。


『星の始まり、夢の終わり。時代の訪れ、平常への回帰。歴史に刻まれた、遥か遠き古代の残響。

 理想を描いた十の希望、第三の星。祖に連なる偉大な母への道を開く。

 今ここに承認せよ、実行せよ。白き鍵を以て、理へと至らん』


 唱え終えた直後、ミラの身体から多くのマナが放出されていった。更にマナ貯蔵用の術具から溢れんばかりの莫大なマナがミラへと流れ込み、そのまま空へと吸い上げられていく。

 変化は劇的であった。尋常ではないほどのマナがアストラの十界陣の隅々にまで巡ると、また輝きが増すと共にその全容が歪み始める。

 しかも今度の歪みは、先ほどの比ではなかった。大きな歪みの中には光と闇が入り乱れ、幾重にも連なっていく。

 そうして目まぐるしく変わるそこに、無機物の何かが見え始めた。次第にその輪郭が露わとなり落ち着いたところで、何かが空を覆い尽くす。

 それはまるで、巨大な金庫の扉のようであった。しかも時計仕掛けのような機械らしさと十の赤い光が見受けられ、より物々しさを増していた。


「なんだ……これ」


 何を召喚したというのか。これまでに喚び出されてきた者達とは、まったくの別物。それはもはや召喚術とは無縁なのではないかとすら思える、科学技術の結晶だ。

 もはや状況が理解出来ないと、驚きを通り越して唖然と見上げるノイン。


(これほどとはのぅ……)


 研究と実験を経て、全容自体は把握していたミラ。だがマナ消費量を考えると気軽に試せるものではないため、こうして実践するのは今回が初めてだった。

 ゆえに把握はしていたが、その目で見るのは初とあってミラ自身も驚嘆気味だ。

 しかし、こうしてはいられないと気を取り直し、その巨大な扉に向き合い、更にここから続けるべき言葉を並べていった。


『第一防壁、起動。制限解除、隔離層第三区を解放。

 コアフラグメントに接続、空白領域の展開実行。マテリアライズ融合開始。

 管理代理者権限を行使。ジェネシスゲート、限定解除。

 アクティベート──コード・ユグドラシル』


【超越召喚:第三始祖マーテル】


 全ての言葉が空に解けていくと、空に輝く十の赤い光が黄色へと変じた。

 そこから更に大きく動き出す。扉を構築する無数の歯車がカチカチと音を立てて回り始め、今度は一つ、また一つと黄色の光が緑に変わる。

 そうして全てが緑に染まった時だ。まるで警報のようなサイレンを響かせながら、空を覆う扉が重々しく開いていった。

 すると変化は突然に、また劇的に広がった。開き始めた扉から微かに風が吹き抜けたかと思えば、荒れ果てていた大地が緑豊かな姿へと生まれ変わっていったのだ。

 しかも、それだけに止まらない。扉が開くほど風も強くなり、たなびく緑に色とりどりの花まで咲き乱れ、より力強く映えていった。


「何が起きているんだ……」


 理解が追い付かないといった顔で、呆然とその様子を見守るノイン。また他の誰もが同じような感情なのだろう、何をどうしたらこうなるのかと戸惑いを浮かべながら空の扉と芽吹く大地を見やっていた。


「ようやく、久方ぶりの対面じゃな」


 扉が完全に開ききったところで、大地に更なる変化が起きていた。

 奥の方に、すらりと立つ一本の木。だがそれは秒ごとに成長し、みるみるうちに巨樹を超えていった。

 伸び伸びと広がった枝葉によって影に覆われたところで、光り輝く実が生り大地を照らす。そして燦然とライトアップされた巨樹から、満を持してマーテルが登場した。


「そうね。いつもお話はしていたけど、直接会うのは久しぶりだから、なんだか嬉しいわ」


 ふわりとミラの傍に降り立ったマーテルが優しく微笑んだ。


「精霊、っぽいけど、なんだ。もっと凄い感じがするんだけど」


 一見してマーテルは、穏やかな精霊としか見えない。しかし先ほどの召喚規模といい、彼女が秘める何かを感じ取ったのか。ノインは、いったいどんなとんでも精霊なんだといった顔で、ちらちらとミラに答えを求める。


「何を隠そう、この者こそが植物の始祖精霊マーテル殿じゃよ」


「あらあら、よろしくね」


 皆の注目が集まる中でミラが紹介すると、マーテルは嬉しそうに手を振って応えた。





「あの御姿に、この気配……まさか始祖精霊様を目にする日が来るなんて」


 後衛陣でサポートに回っていた教皇は、前線に降り立ったマーテルを目にして直ぐ、その存在がどういったものなのかに気づいていた。

 精霊の多くは今、珍しい存在ではない。森を抜ける街道なんかを進んでいれば、結構頻繁に出会えたりするものだ。

 だが始祖精霊になると話は違ってくる。その邂逅は、もはや古い文献に数度登場するだけだった。


「生きているうちにお逢い出来るとは」


「なんと神々しいのか」


「これは自慢話が増えましたな」


 大司教達もまた、遠くからでも見ただけで始祖精霊だとわかったようだ。塀から身を乗り出すようにして、興奮気味にマーテルを見つめ盛り上がる。

 また、その塀の下。城門前の防衛を担う四聖将達も、その可能性に気づきつつあった。


「ねぇ、もしかしたらもしかするんじゃない?」


「精霊王様と繋がりのあるミラ様だから」


「どう見ても普通の精霊には見えないもんな」


「もう何がなんだか……」


 空を覆った扉、荒れ果てた島が緑に溢れたかと思えば、尋常ではなさそうな精霊が登場した。


「とにかく、俺達はここの防衛に集中だ」


「ええ、そうしましょ」


 もう何が起きているのかわからないと困惑したり驚いたりした四聖将達は、一度全てを忘れて今の任務に専念しようと気持ちを切り替えた。






「始祖精霊か、なんか凄いな!」


「なるほどなるほど、どうにか出来そうな感じがするね」


 始祖精霊マーテルの登場で前衛陣は大盛り上がりだった。精霊王に次ぐ大物とあって期待値は一気に上限突破。ミラに対する不信感を大きく塗り潰すほどの期待がマーテルに寄せられていた。


「さて、いけそうかのぅ」


 都合のいい奴らだと一睨みしてからマーテルに向き直ったミラは、魔王の護りを崩せるかどうか問う。


「ええ、ちょっと試してみましょうか」


 そう答えたマーテルは、魔王へと目を向ける。

 その身体の主、フォーセシアとの思い出があるためか、その顔には悲しみが浮かぶ。

 けれど既に覚悟は出来ていたのだろう、皆に離れるよう促してから暫しの後、それが上から落ちてきた。

 一本の枝が鞭のようにしなりながら降ってきたのである。


「おいおい、嘘だろ……」


 どうするつもりかと空を見上げていたノインは、次第にその顔を引きつらせていった。また、様子を見つつ離れていた前衛陣が次には全力で退避していく。

 なぜなら、近づけば近づくほどに枝の太さが明瞭になっていったからだ。

 魔王目掛けて振り下ろされたその枝は、ゆうに直径三十メートルを超えるものだった。いうなれば大木をそのまま振り回しているようなものであり、それが叩きつけられると、これまでの魔術と同等くらいの地響きが広がっていった。

 単純な質量と速度による、豪快な一撃だ。地面にめりこんだ枝をみれば、威力もわかりやすい。

 またノインも、これには唖然としていた。多くの強敵の強力な一撃を受け止めてきたが、このように圧倒的質量で圧し潰すような攻撃は彼も防ぎきれないからだ。


「ほぅ、びくともしておらんな」


 マーテルがちょっと試しただけの一撃は、それでいて必殺技や上級魔術、またはそれ以上の威力があった。けれど枝が再び空へと戻っていったところ、抉れた大地の只中には先ほどと変わらない状態で魔王の姿が残っていた。


「やっぱり難しい感じか」


 あれほどの一撃でも、どうにもならない。それを目の当たりにしたノインは、魔王になんの変化もない事を確認して嘆息する。


「それでどうじゃった?」


 だがミラは期待を込めながら確認するようマーテルを見た。するとマーテルは、大きく頷き答える。


「ええ、触れて感じた限りだと、大きな変質もしていなかったから問題ないと思うわ」


 枝による一撃。先ほどのそれは、ただ護る力の強度を試したというものではなかった。それに触れる事で、力の構成などを確かめるためのものだったのだ。


「準備も出来ているから、もういつでも大丈夫よ」


「おお、流石マーテル殿じゃな!」


 マーテルが護る力を突破出来ると豪語したら、ミラは直ぐに武装召喚で身を固めた。

 しかもそれだけではない。その全身には精霊王の加護紋も強く浮かぶ。精霊女王という名に相応しい力を得る『ブレッシング・エンプレス』だ。


「では、終わらせるとしようか」


「ええ、やりましょう」


 決戦仕様とも言える完全武装状態となったミラは、更に聖剣サンクティアを手にして魔王の傍へと歩み寄っていく。

 するとマーテルも、その手を魔王に向けた。そして決意を込めた目で、ふっと地面を撫でるようにその手を揺らす。

 変化は直ぐに現れた。先ほどの枝によって大きく線状に窪んだ大地が、みるみるうちに赤く染まっていった。

 そして赤が魔王までも呑み込み始めたところで、それは起きた。なんと魔王を包んでいた護りまでも浸食し始めたのだ。


「精霊魔法……? いや、そんな感じじゃあない。なんだこれは……」


 何をしても破る事の出来なかった護る力。それが静かに、だが確実に剥がれていく様を前に唖然とするノイン。また出し尽くした末に無理だと諦めた他の前衛陣も無防備になっていく魔王の姿を、まさかといった顔で見つめていた。

 大地を染め、魔王を護る力までも浸食する赤の正体。それは、以前に中継基地へと赴いた際に見つけた赤い苔だった。魔法に干渉して分解吸収してしまうという特性を得た、上空十万メートル産の特別な苔だ。

 これに興味を持ったミラは、苔を持ち帰り研究。また植物の事であるためマーテルも興味津々で、この研究に深く関わっていた。

 その結果、マーテルは赤い苔の全てを理解し、今ではこうして自在に生み出せるようになったわけだ。


「シアちゃん……もう頑張らなくてもいいんだからね」


 大英雄フォーセシア。彼女が持つ護る力は、彼女の強い想いと精霊達の力が交わり生まれた特別な魔法だ。

 だがそれは同時に、重荷にもなっていた。護れるならば護りたい。救えるのならば救いたい。そう言って時に無茶な戦いに飛び込んでいたからだ。

 だからこそマーテルは、願う。フォーセシアを大英雄たらしめた護る力を打ち破る事で、真に彼女が安息を得られるようにと。


「いよいよ、わしの出番じゃな」


 護る力。それは、あらゆる攻撃、あらゆる魔法を無効化する絶対防御。けれどマーテルが生み出した赤い苔は、攻撃でもなければ魔法でもない。ただの植物だ。

 ゆえにこれを無効化する事は出来ず、魔王を護る力は成す術もなく食い荒らされていった。

 そうして残るは、無防備となった魔王だけ。


「いったい……何を……」


 ここまで突破されるとは思ってもいなかったようだ。魔王の顔には戸惑いが浮かぶ。また同時に危機感も覚えたのか、直ぐに立ち上がる。


「まあ一言でいうのならば、愛じゃろうな」


 護られている間に僅かながらも回復したのか、構える魔王から漂うプレッシャーは息すら忘れそうになるものだ。とはいえ瀕死である事に違いはなく、だからこそミラは、この一撃で終わらせられると確信し構えた。


「戯言を──」


 不機嫌そうに鼻で笑った魔王は、ゆっくりと腰を落とす。そして両手に禍々しく光るマナを凝縮させると、直後に一足でミラの目前にまで迫った。


「──……!」


 恐ろしいまでの瞬発力と速さだ。真正面から対峙すると、その驚異的な力がよくわかる。

 多くの手段を用いて近接戦の対応力をブーストしているミラは、だからこそ、これを相手に奮戦していた前衛陣達の凄さというのを改めて実感した。付け焼刃で魔王とまともにタイマンでやり合うのは無謀でしかないと。


「っと、いや、思った以上にまだ速いな!」


 魔王の一撃が炸裂するよりも先に、その間へと滑り込んだ者がいた。

 ノインだ。瀕死でありながらも強力無比な魔王の一撃を、こちらもまた渾身の力で防ぐ。受け止めた大盾からは、まるで悲鳴のように軋む音が響き、徐々に押し込まれていった。

 けれど直後に雄たけびを上げたノインは、そこから大きく一歩を踏み込んだ。


【闘術・大盾:リアクトパージ】


 大盾で受け止めた攻撃のエネルギーを倍にして返す、ノインの得意技だ。

 ここ一番という場面で繰り出すこの技は、だからこそこの魔王戦にて初披露。魔王といえど、初見となるこれを完全に防ぎきる事は出来なかったようだ。全身を駆け抜けていく強烈な衝撃に抗い切れずに宙を舞った。


「こんな、感じか!?」


「うむ、十分じゃ」


 全ての闘気をつぎ込んだノインは、その場でゆらりとよろめく。そんな彼の背に手を添えて最高の仕事だったと微笑んだミラは、その前に立ち宙を見上げた。


「さあ、これで終いじゃ」


 ミラの全身に浮かぶ『ブレッシング・エンプレス』。その輝きが一段と増したところで手にしていた聖剣サンクティアも呼応するように輝き出し、次には光の粒子へと変わった。

 狙いを定めたミラは、力強く大地を蹴って跳び上がる。そして彗星の如き輝きを纏いながら魔王に迫り光の粒子を纏う拳を叩き込んだ。

 効果は、劇的だった。衝撃と共にミラの拳から放たれた光の粒子は、魔王の全身へと瞬く間に巡っていく。

 魔王が万全な状態であったなら、それは取るに足らない一撃であっただろう。溢れる生命力とマナで、瞬く間に散らされていたはずだ。

 けれど今の魔王……多くの仲間との激戦を経て消耗し、瀕死にまで追い込まれた魔王には、これに対抗する術はなかった。


『安らかに眠るがいい、我が友よ』


 魔王を、輝きに包まれていくフォーセシアを前に、精霊王が寂しそうに呟く。そしてマーテルもまた、遠くで祈るようにフォーセシアを見つめていた。

 魔王の全身を満たす光の粒子。それは、身体に備わる全ての機能を完全に停止させるためのもの。安らかな死へと導く、慈愛と慈悲の力であった。











駅中の家電ショップにいってきました!


そしていい感じのホットプレートか、はたまたホットサンドメーカーがないかと見てみたのですが……


ちょうどこのくらいがいい! と思えるようなものがなかったんですよねぇ。

しかもホットサンドメーカーについては、どこにもないときたもんですよ。いったいどのくらいの感じになるのか。


実際に見てサイズ感を把握したいのでネットで買うというのもちょっとアレですし……。


まだ円形に焼くという技を試していなかったので、とりあえずはフライパンで頑張ってみようかと思った今日この頃でした。

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― 新着の感想 ―
序盤の方で名前だけ出て使えなかった術が、やっとこさここにきて完成か、アストラの十界陣! まだ何か奥の手あるかと思ったけど、これにて魔王戦は終わりか。 あとは因子がどんな一悶着起こすか?
聖剣を手に繰り出す正拳…コレが武◯沢ブレード!(古いし違う) スキル構成上拳になりますわなぁ…
最上級を超えた超越級の術に、九賢者のなかで一番乗り!しかも研究途中で共有せずに(見落としてたらすみません)、実践で完成形をサプライズお披露目ってことであってますか??? 他の九賢者もいつか超越級の術…
感想一覧
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