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643 対空戦

六百四十三



「うわ、なんだこりゃ!?」


 どうにか皆が体勢を整え直したところだ。飛空船は大丈夫だったのかという心配がちらほら上がる中、ゴットフリートの驚く声が響く。

 振り向くと、彼は窓から外を見ていた。いったい何を見たのかと、一人また一人と窓に駆け寄る。

 そしてミラも直ぐ立ち上がると、同じように窓に飛びつき外の状況を確認した。


「なんという事じゃ……」


 真っ先に見えたのは、真っ黒な煙が空いっぱいに広がっているところだ。そして更にもう一つ、極めて特徴的なそれが目に入った。

 赤々と流れる溶岩だ。

 そう、先程の轟音と衝撃の正体がそこにあった。先ほどまでいた場所が噴火で全て吹き飛んでいたのだ。


「ふぅ、危機一髪だったね」


 安堵の声を漏らしたミケは、改めて先程までの状況について説明してくれた。

 いわく、飛空船の観測装置が地中の急激な温度上昇を捉えたそうだ。しかもそれは限りなく上昇していくのみならず、徐々に範囲を広げ始めたという。そして何よりも地表へと迫ってきたそうだ。


「──という感じだったんだけど、あの場所とタイミングから考えたら、本当に自然現象だったのか、ちょっと怪しく感じられるよね」


 魔王の拠点に攻め込んでいた時に、たまたま噴火が起きたりするものなのか。そんな疑問を提示したミケは警戒の色を浮かべつつ、これが魔王の一手だったかもしれないと推察する。


「今はまだレーダーに反応はないけど、もしかしたらもう直ぐそこにまで迫っているのかもしれない。気をつけた方がいいと思うよ」


 常に観測していたから事前に逃れられた。だが観測装置がなかったら、それを知る方法がなかったら被害は甚大だったはずだ。たとえ助かっても、突然噴火に見舞われたら混乱は必至。

 相手側に立って考えた場合、そのタイミングが一番の狙い時だとわかるからこそ何かありそうだとミケが忠告する。


『避けられん、伏せろ!』


 直後だった。切羽詰まった声が響き船体が大きく傾く。そして警告に応じて皆が咄嗟に身をかがめた瞬間だ。

 再び強烈な衝撃音と共に飛空船が激しく揺れた。


「何が起きているんだ!?」


 それが刺激になったのか、どうにか我を取り戻したノイン。「あぁん」とか弱く倒れチラチラさせるハミィの横を素通りして、窓から様子を窺う。

 目に映るのは、噴火した島。空へ立ち上る噴煙と、時折走る火山雷。火口から溢れ出て流れ出る溶岩が海へと達して爆発すると白い煙が広がっていく。

 大自然の脅威の光景を前に、ただただ圧倒されるノイン。

 だが、今はそこにもう一つの変化があった。


『人影を確認。何だあいつ、溶岩の中から出てきたぞ!』


 その言葉通り、黒々とした噴煙の中から流れ出てくる溶岩の川を悠然と歩く人影が確認されたのだ。


「噴火と共にやってくるとは、魔王らしい登場じゃな」


 ノインの隣というよりは少し下から顔を出したミラは、遠見の無形術でかの者の姿を捉える。そして、以前に会っていたからこそ確信し苦笑した。

 英雄王フォーセシアの体を乗っ取った魔王の姿だ。


『まずい!』


 遂に魔王の帰還かと緊張が走る中、再び慌てた声が響く。

 見れば魔王の前に光が現れており、それを視認した直後には鮮烈な閃光となって目の前にまで迫っていた。

 閃光は飛空船を覆うシールドに接触して激しく弾ける。そして衝撃波によって船体が大きく揺れたかと思えば再び閃光が奔った。

 見事に狙い撃たれたようだ。シールドの全く同じところに命中すると、今度はシールドを貫いて船体に直撃する。


『やられた、エンジンの一つが出力低下!』


 先程よりも更に大きく揺れたかと思えば、高度が落ち始める。


『戦うにしても空じゃあ分が悪い。前方に見える島に下ろすぞ!』


 その言葉と共に駆動音が高まり飛空船が加速していき、警告音と共に船体が震える。


「ここからの作戦は任せたよ!」


 ミケは強めの慣性に少しふらつきながらも機関室の方へと駆けていった。

 ここからの作戦。つまり島に着陸したら、いよいよ魔王との決戦が始まるというわけだ。

 ただ、戦術の組み立てや対応については詳細に突き詰めている。ゆえに今の問題は、万全な状態で決戦を始められるかどうかだ。


『おお、来てる……来てるぞ、飛んで来た! ちょっと揺れるぞ!』


 魔王が離脱する飛空船を追ってきたようだ。ますます慌てた声が聞こえると共に、船体が左右に揺れ始めた。狙い撃ちされないための回避機動だ。ちょっとどころではない揺れっぷりだが、二発三発と直撃されるよりはましだろう。


「船を落とされたら、かなり面倒だぞ」


 追いつかれてしまったら、否応なしに海上戦だ。しかも状況からして飛空船の甲板が戦場になってしまう。そうなった場合、勝っても被害は甚大になりそうだ。

 更にソウルハウルが今一番の問題に触れる。移動拠点としてもだが、何よりもこの飛空船には再建出来るかどうかわからないゲートがある。

 もしもこのまま破壊されてしまったら、無事に魔王をどうにか出来ても、その先に大きな支障をきたすわけだ。


「まずは迎撃じゃな!」


 目標は、飛空船を無事に着陸させる事。そして離れた場所を戦場とする事。

 そうと決まれば行動は早い。右に左にと揺れる中でどうにか踏ん張りながら、ミラ達は甲板へと急いだ。





 飛空船の向かう前方には、大きくて平坦で何もない島があった。周りに配慮する必要はなさそうだ。決戦にお誂え向きといえる。

 だがそれは、無事に辿り着く事が出来たらの話だ。現在、飛空船の後方では幾重もの爆炎が広がっていた。

 迫ってくる魔王を少しでも抑えるために、ルミナリア達が魔術で弾幕を展開しているのだ。


「しかし、大活躍じゃったな」


 そんな言葉と共にノインを見やるミラ。何といっても先程までは彼の選んだアーティファクトが存分に活躍していた。

 魔王が飛空船めがけて放つ攻撃の全てを、ノインが四方八方へと逸らしたからだ。

 よって先程の一撃以降は被弾もなく、飛空船は目標地点に向けて全速で進んでいる。


「なら、守る事の大切さもわかってくれたか?」


「では、島に着くまで追いつかれんようにせぬとな!」


 遠距離攻撃が通じないと察したからか、今は距離を詰めようとしている魔王。ルミナリア達による牽制もじきに突破されそうだという事で、ミラはノインの言葉を華麗に聞き流しながら、直ぐに詠唱へと移った。


『──いざ、天空に舞い上がれ。愛しき我が子よ』


【召喚術:皇竜アイゼンファルド】


 空中戦において魔王の足止めが出来そうなものとなると、やはり天の皇竜をおいて他にはいない。


「今回は、この船があの島に着陸するまでの護衛が任務じゃ。頼むぞ、アイゼンファルドや」


 ミラは登場するや否や甘えてくるアイゼンファルドの鼻先を撫でながら魔王を指し示す。

 すると魔王もまた、流石の皇竜の登場で警戒したようだ。速度を落として構えをとった。


「はい、お任せください母上!」


 そんな魔王の姿を確認したアイゼンファルドは、頼りにされた事でより張り切り始めたようだ。その全身から皇竜特有の波動を漲らせると、次の瞬間には音すらも置き去りにして魔王に肉薄していた。

 アイゼンファルドの尻尾による強烈な一撃が炸裂する。音速を超えた速度と巨体から繰り出されたその威力といったら、飛空船すらも真っ二つに出来てしまうほどだ。

 だからこそ、これを受けた魔王の反応は今までと少し違い、厳重に守りを固めていた。


「あれを耐えてしまうとはのぅ……」


 相手は公爵級よりも更に上の魔王である。簡単にダメージが通るとは思っていなかったが、それでもその衝撃力によって弾き飛ばし、距離は引き離せると考えていたミラ。

 しかし、どれほど頑丈なのか。どれほどの制空性があるのか。魔王は数メートルほど後退しただけで、それを受けきってしまったのだ。

 とはいえ、そこで終わらないのがチームである。耐えきった、その硬直を狙い無数の魔術が一斉に直撃した。

 アイゼンファルドとの共闘経験もあるルミナリアがいたからこその見事な連携だ。完璧なタイミングで炸裂した魔術は、魔王を大きく後退させる事に成功していた。


「この調子ならば、どうにか間に合いそうじゃな」


 目的地の島が近づいてきた。ミラはルミナリアの隣で、ちょうどいい具合のタイミングをアイゼンファルドに伝えながら、その様子を見守っている。


「ああ。後は陣地形成までに、どれだけ稼げるかだけど、流石にこのままってわけにはいかないか」


 アイゼンファルドを援護する形で、魔王の足止めを狙うルミナリア達。ミラの指示とルミナリアの誘導が噛み合って、うまい具合に距離を空ける事が出来ていた。

 けれど、そう簡単に抑え続けられるような相手ではない。アイゼンファルドの力と技に慣れてきたのか、その一撃一撃が受け流されるようになってきた。

 加えて、ルミナリア達との連携まで見抜かれ始める。その圧倒的な力ゆえに、基本は単騎で立ち回ることの多いアイゼンファルド。ゆえに連携は合わせてもらう場合が大半だったため、双方で息を合わせる事は不慣れだった。

 だからこそ、アイゼンファルドの機微から見抜かれるようになったのだろう。むしろそれを逆手にとられた事で、今度はアイゼンファルドが押され始めてしまった。


「力も技もとびきりじゃな……」


 召喚術による制限がある状態で更にグランデ級が相手でも時間を稼ぐ事が出来たアイゼンファルド。多少不利になったとはいえ、秘めた力は確かである。しかし魔王は、比較対象であるグランデ級すらも大きく上回るようだ。

 空という得意の戦場でありながら、防戦を強いられるアイゼンファルド。だがアイゼンファルドもまた、数多の強敵を相手に戦い続けてきた猛者だ。押されながらも蓄積された経験と技術で致命を避けて反撃を繰り出していく。

 少なくとも、目的である時間はもう暫く稼ぐ事が出来そうだ。


「やっぱり別格ね……」


 魔王を相手に奮闘するアイゼンファルド。その様子を前に、ゴクリと息を呑むカグラ。

 島に着陸してから陣地を整えるまでの時間は必要だが、現状は相当にギリギリと言わざるを得ない戦況だ。ゆえにその時間を捻出するため、カグラは援軍を差し向けた。


「さあ、いっておいで」


 上級召喚に負けず劣らずの力を秘める式神、麒麟のリン兵衛。更に今回は戦闘も補助もなんでもござれの特殊な式神【影屏風:猫斉衆】もこれに続いた。

 皇竜と魔王がぶつかり合う空の戦場。そこにリン兵衛が颯爽と推参すれば、雷雲が空を覆い強烈な稲光が奔る。

 まるで次のステージにでも移ったような変化ぶりだが、そんな空を多種多様な猫達が縦横無尽に走り回るのだからメルヘンにも見えてくる。

 しかし、猫斉衆も立派な戦闘向きの式神だ。どの猫も熊のように大きく、魔王を相手にしても果敢に立ち向かっていく。

 一見すると、毛色の違う虎が狩りをしているかのような光景だ。

 ただ相手は魔王であるため、虎の群れであろうとも僅かに爪を立てられたら僥倖だ。一匹、また一匹と式符に戻されていった。

 だが、その分だけ時間を稼ぐ事が出来ている、という意味でもある。


『よし、着陸する。後は頼んだよ』


 作戦はうまくいったようだ。気づけば飛空船は島の直ぐ手前にまで来ていた。速度を落とし着陸態勢にはいる。

 いよいよ決戦の地だ。ミラ達は準備を整えると、空の戦況を見守りつつ上陸のタイミングを図る。


「よっしゃ、お先に!」


「ここからが本番ヨ!」


 随分ともどかしかったのだろう、着陸すると同時にゴットフリートやメイリンなどの前衛陣が甲板から島に飛び降りていった。

 着陸地点は島の奥側。そこから一気に中央方向へと駆けていき、陣形を整える。

 ただ広いだけの荒れた土地。開発には向きそうにないが、だからこそ戦争をするにはうってつけといえるだろう。

 続き飛空船を降りたのは、ハミィやルミナリアなどを含む中衛と後衛勢。その中でもソウルハウルには大事な作業がある。

 陣地形成。何よりも、それこそがソウルハウルの真骨頂といっても過言ではない。


「さて、そこから……ここくらいか」


 範囲を決めると直ぐに作業開始だ。ソウルハウルが死霊術を行使すると、直ぐ大地に変化が起きる。周辺一帯が激しく隆起し形を変え、瞬く間に堅牢な城を造り上げていったのだ。


「相変わらずの迫力だねぇ」


 あれよあれよと城が聳え立つ。かつて、その防衛力に何度も阻まれた事があったからだろう。クラバはその光景を苦笑しながら見据え、けれど同時にだからこそ頼もしいと笑う。


「こ、これが……かの『巨壁』ですか」


「話には聞いていましたが、ここまでとは」


「見ると聞くとでは大違いだな……」


 瞬く間に立派な城が築かれていったその様を目の前にして、ただひたすらに感嘆するのは四聖将達だ。


「激動の時代というのは、このような達人達が群雄割拠していたのか」


「これはとんでもない……。ただこれで爺様達に、自慢されっぱなしにならずに済みますね」


 雷鳴轟く空に、悠然と聳える城。それらを前に僅かだが任務を忘れて子供のように喜ぶ。

 だがそれも束の間。直ぐに気合を入れ直した四聖将は、後衛陣を守るように並び立ち万全に構え直した。

 なお、そんな四聖将を更に飛び上がらせる光景が、その眼前に広がる。


「よし、これで準備完了じゃな」


 城内に控えるのは、千の武具精霊と七のヴァルキリーからなる『軍勢』だった。

 無数の砲台を備え、強度と攻撃力の増したソウルハウルの巨壁。そして剣、盾、槍、弓で武装し、より戦略性と地力の増した灰色の軍勢。アルカイト王国軍が誇る最強の陣地、その進化版がここに完成したのだ。


「いつの間に……」


 大きな城に圧倒されているうちに、これだけの軍隊が並んでいた。あっという間の出来事に、もはやどれだけ驚けばいいのかすらわからなくなっていく四聖将。

 しかしここに集った将軍位の者達は、それを当たり前のように受け止めている。そして後衛陣は慣れたように城へと入っていく。


「それにしても、弟子とは聞いていたけど──」


 軍勢を前にして七人のヴァルキリーを相手に堂々と作戦を伝えているミラ。その姿を見やった四聖将の一人は、ふと思う。

 精霊王の恩寵を受け、師である九賢者ダンブルフと同じかそれ以上の召喚術を駆使し、このような怪物クラスの将軍達と既に馴染み肩を並べる精霊女王という存在。いったい彼女は何者なのか。弟子とはいえ、こうもあっさり師を超えられるものなのかと。


「──そんな感じじゃ。では、よろしく頼むぞ」


「はい、主様。お任せください」


 ひとしきり作戦を告げてから、随分と慣れたような足取りで迷わず城の中に入っていったミラ。その圧倒的な可愛さを見送りながら「流石に、か」と、彼は思わず浮かんだ考えを振り払った。











最近の趣味はというと、温泉旅館巡りでしてね。


やはり、いいですね。温泉旅館は。

ゆったり広々とした湯舟。そして何よりも料理が素晴らしい!


その土地の特産品を大いに味わいながら、どことなく現実離れした宿の雰囲気に浸るのがまた一興というものです。


先日は、かの有名な銀山温泉を巡りました。

更に、奥飛騨温泉郷も堪能しましたよ。

そして、つい数日前は別府温泉です!


いやはや、どの温泉地も、どの旅館もそれぞれに風情があっていいですねぇ。

自分は、あの和風なタイプの旅館が特に好きですね!


さて、次はどこに行ってみようかな。







ストリートビュー最高!!!

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― 新着の感想 ―
VRでストリートビューすると凄いらしいです。 GoogleEarthとかも大自然を満喫できるとか。 環境を揃えるのにお金がかかるので私は詳しく知りません。
ミラ=ダンブル府とは思っても認められないところがあるのかな ストリートビュー!確かに世界中どこでも行ける(*´艸`)
あっそうでした。噴火と言ったらまず火山灰やら煙やらで空は灰色に染まるんでした。まぁそれはそれとして山を噴火させて登場とは………かの光の流法を使う究極生命体の波紋に匹敵しうるエネルギー量ですね。それにマ…
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