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629 真カシオペヤ

六百二十九



 黄金都市を出てから一日と少々。速度重視で休む事なく牽引ゴーレムを走らせたところ、行きよりもずっと早くニヴェゾロの街に戻ってくる事が出来た。


「それじゃあ、しっかり売って回収してから戻る事」


「はい、わかりました……」


 到着後、ヒドゥンの二人とはここで一旦のお別れだ。


「おや、お二人は残るのですか?」


 サソリとヘビは一緒に来ないのかと疑問を浮かべるカシオペヤ。事情を知らなければ、唐突なチーム解散にも思えただろう。


「あー、それはじゃな──」


 そのためミラは、事情を簡潔に説明した。

 五十鈴連盟の大切な資金で購入したという高価な砂ゾリは、黄金都市の攻略が終わった今、もう必要はない。ゆえに売却して少しでも資金に還元するというのが、この後のサソリ達の任務であると。


「あ、そうだ! カシオペヤさん、なんかこう砂ゾリを新品同様にする魔法とかないですか!?」


 これからサソリがする事といえば、少しでも高く売るために掃除だなんだを頑張るというもの。なかなかの重労働が待っているわけだが、そこでサソリは閃く。カシオペヤが得意とする魔法で、どうにか出来ないかと。


「新品同様にですか。出来るか出来ないかといえば、当然出来ちゃいますよ! 私の手にかかれば、それこそ新品どころか更に耐久性や強度も高め、今より高性能に仕上げられますね!」


 売り言葉に買い言葉、とは違うかもしれない。ただ魔法でどうにかならないかというサソリの要望を受けたカシオペヤは、むしろそれ以上に出来ると自信満々に答えていた。


「凄い! では出来ればこの砂ゾリを貴方様のお力で何卒!」


 これに喜んだサソリは、是非ともその御業をお貸しくださいと願い奉り始める。


「いいでしょう! 材質や骨子の分析などで二日ほどかかりますが、最高の仕上がりを約束しま──」


「──駄目です。カシオペヤさんは直ぐに連れて帰るから、出来る範囲でやるように」


 サソリの願いを叶えるためには、ここに二日間滞在する事になる。だが当然、そんな暇などありはしなかった。

 カシオペヤは直ぐ研究所に連れ帰り、アンドロメダと色々話し合ってもらう予定だ。そして、決戦に向けての作戦に参加してもらう事となる。ゆえに五十鈴連盟の資金繰りで手間を掛けさせるわけにはいかないのだ。

 カグラがぴしゃりと告げたところ、サソリはしゅんと尻尾を丸めて「わかりましたぁ」と項垂れながら頷いた。


「何と言うか……二人とも達者でのぅ」


「ミラちゃんもね!」


「うん、じゃあね」


 ガルーダワゴンに乗り込む時に、ミラは労いの意味も込めて二人に別れを告げた。すると二人は、久しぶりに会えて嬉しかったと笑いながら手を振り見送ってくれた。




 日之本委員会の研究所に向かいニヴェゾロの街を飛び立ったガルーダワゴン。その乗員はミラとカグラに加え、カシオペヤも一緒だ。


「……あー、出発前にシャワーくらい浴びておけばよかったなぁ」


 と、出発してから一分も経っていないうちにカグラが失敗したと愚痴り出した。


「まあ、確かにそうじゃったな」


 それについてはミラもまた概ね同じような気持ちだったりする。

 まず第一に、黄金都市でのあれこれが終わってからここまでは、かなりの急ぎでやってきた。牽引ゴーレムに任せて止まる事なく砂漠を突っ切ったのだ。

 屋敷精霊でゆっくりしているような暇はなく、砂ゾリの中で食べて寝た後、街に到着したらそのままガルーダワゴンで空の旅だ。

 そう、つまり今のミラとカグラは、丸一日以上シャワーすら浴びていない状態であった。

 しかも目的地までは、まだかなりの距離がある。そのためガルーダワゴンで寛ごうとしたわけだが、だからこそ自分達の状態の悪さが浮き彫りになった次第だ。


「うっわぁ。さっきまではあまり気にならなかったけど、相当ね。これ」


「こんなになっておったとはのぅ。あ、とっととしまわんか。砂が落ちるじゃろうが」


 まずは服だ。脱いだコートには、砂がこびりつくように絡まっていた。

 砂漠の暑さのみならず、舞い上がる砂塵なども防いでくれていたコートだが、やはりそのような環境にあってか汚れっぷりも相応だ。ちょっと叩けばボロボロと砂が落ちてくる。

 そんなコートをそっとアイテムボックスにしまったミラは、カグラとカシオペヤに端っこへ寄るよう促してから、ディノワール商会製の掃除用具で散った砂を片付けていく。


「あー、もうゴワゴワしてる」


 ミラが掃除している間にも、これは堪ったもんじゃないとカグラが呟く。

 砂漠という場所が、いかに砂だらけだったのかを思い知らされる。

 コートを脱いだ二人は今、アラビアンな薄手の服に様変わりしている。かなり露出が多い服とあって、肌の状態もわかりやすい。きっと暑さで滲んだ汗が原因だろう、肌が全体的に砂でざらついていたのだ。

 更には髪の方にも砂が絡みつき、手櫛も通らない質感になっていた。道中は砂が気になるより先にシャワーで洗い流していたという贅沢ぷりだ。だからこそ、それをしなければどうなるのか、今更に気づいた形だ。

 だからこそカグラは余計に不快そうでもある。


「このままでは、ちょいとアレな状態じゃな……」


 それについてもミラは同意であった。

 全身に纏わりつく不快感。加えて和室を模したワゴン内で露出増し増しアラビアンは、あまりにもミスマッチ過ぎた。


「あとは……」


「うむ……」


「……どうしました?」


 続いてミラとカグラの目はカシオペヤへと向けられた。ただ当の本人は我関せず──というよりは、まったく気にしていないというような反応だ。

 カシオペヤの現状。初見時の一番酷かった状態に比べれば、随分とましにはなっている。だが、こうして落ち着いたところで改めてチェックしてみたら、見え方も変わってくるというもの。

 血塗れだった時よりは整っているが、あの場で簡単に整えただけである。見ればまあ、小綺麗には程遠い状態にあった。


「ねぇ、これはちょっと遅れても、一旦下りて色々していいと思うんだけど」


「そうじゃな」


 色々とリセットしておこうというカグラの提案を即座に受け入れたミラは、丁度いい場所に着陸するようガルーダに頼んだ。






「飛んで早々に済まんのぅ。整い次第、また出発するのでな。暫く待機しておいてくれるか」


 草原の只中に着陸したところでガルーダを労い、そのまま待っていてくれるように頼むミラ。ただガルーダの方は、まったく気にしていないようだ。問題ないといった態度で頷き応えてくれた。


「なんかごめんね。あ、これでも食べてて」


 カグラもまた申し訳ないと謝りつつ、同時にアイテムボックスから色とりどりのフルーツを取り出した。

 それを一つ啄んだガルーダは、機嫌良さそうに喉を鳴らす。どうやら、かなり美味しかったようだ。カグラがワゴンの御者台をテーブル代わりにフル-ツをテンコ盛りにしたところ、ガルーダは喜んで一つ一つ食べ始めた。


「お、なんじゃそれは。何やら見た事のないものばかりじゃな」


 ガルーダの食いつきっぷりを前にして興味を惹かれるミラ。しかもそのどれもが、市場ではまったく見られないようなものばかりのため殊更だ。


「ふふーん、これはねぇ──」


 ミラの反応に気をよくしたのか、カグラはそれらのフルーツの出所を教えてくれた。

 いわく、五十鈴連盟の皆が協力して準備している果樹園で収穫されたものらしい。

 資金調達という目的もあるが、何より人と精霊が手を取り合い協力すれば、どれだけの可能性が広がっていくのかを認知させる活動の一環だそうだ。


「ほぅ、面白そうな事をしておるな。聞くと、なおさら美味そうじゃのぅ」


「そうでしょ。けど、あのブーストフルーツには及ばないけどね。でも皆の力を合わせて頑張っていけば、いつかきっと越えちゃうんだから」


 人と精霊が協力して作物を育てる。自由気ままで気まぐれな精霊達ゆえ、ありそうで未だ実現した事のなかったそれを今、五十鈴連盟で実践していた。

 また協力してくれている精霊達も、良好な結果が出る事でやり甲斐を覚えたという。前よりもずっと積極的に動いてくれているとの事だ。

 こういった協力関係が広まっていってくれれば、きっと将来的には今よりもっと人と精霊との距離が近づいてくれるはずと、カグラは嬉しそうに笑う。


「これは美味しいですね!」


 と、人と精霊のより好い未来についての希望を広げていたところだ。不意の声に振り向いてみれば、そこではカシオペヤがガルーダと一緒にフルーツを食べていた。


「いつの間に」


「そこから取らなくても、まだありますから」


 そんな食いしん坊っぷりに思わず苦笑するミラとカグラだった。




「まるで生き返った気分じゃな!」


 屋敷精霊でシャワーを浴びて、全身の汗と砂を洗い流したミラ。

 汗で汚れた服と下着はアイテムボックスに入れ、新しい下着で身も心もスッキリ爽快だ。


「あっちは、もう暫くかかるじゃろうか」


 すっかり着慣れたマジカルコーデに身を包んだミラは、リビング奥の階段を見ながら呟いた。

 やはり一緒にシャワーなんて事はなく、今回は増築可能となった屋敷精霊の一階と二階に浴室を設けてのシャワータイムだった。

 そしてカグラとカシオペヤが二階の方を利用している形だ。


「……──」


 耳を澄ませば、微かにシャワーの音とカグラの声が聞こえてくる。何となくだが、カシオペヤの世話に奮闘している様子である。

 乾いた血で髪が固まっている他、綺麗に整えるとなったらかなりの手入れをしなければいけないような状態だった。

 何かと凝り性なカグラである。しかも自分ではなくカシオペヤのためとなったら、きっと妥協はしないだろう。


「っ……──」


 再びカグラの声が小さく聞こえた。


「揉んじゃだめだから……とな? いったいどこを揉んだというのじゃろうか!?」


 囁かな声だが、ミラの耳はその部分だけを明確に捉えていた。そして直後に夢想する。いったい二階の浴室では、どんなイベントが繰り広げられているのだろうかと。


「ふぅ、いかんいかん」


 思わず妄想してしまいそうになったところで、どうにか踏みとどまったミラは、もう声が聞こえないようにと一足先に外へ出た。そしてガルーダと戯れながらカグラ達を待った。





「お待たせー」


「お待たせしました」


 ガルーダと戯れる事、二十分と少々。どうにか形になったようで、カグラ達が屋敷精霊から出てきた。


「何とまあ、びっくりじゃな……」


 直後、石鹸とシャンプーの香る二人を前にしたミラは、目を真ん丸にしながらカシオペヤに注目した。


「うん、私もびっくりだった」


 ミラの反応に対して、カグラもまた同じ事を思ったようだ。感心したような目でカシオペヤを見やる。

 何が驚きかというと、シャワーで洗い綺麗に整えた結果、カシオペヤの容貌は驚くほどの変化を遂げていたからだ。

 初見が血塗れだった事もあり、全体的に悲壮感が強めの印象だったカシオペヤ。けれど全身を洗い、あれこれしっかり整えた結果、第一印象から一転。はかなげな印象を残す深窓の令嬢へと変わっていたのだ。

 もはや別人ではないかというくらいの変貌ぶりで、頭が混乱しそうになるほどだ。


「なんだかすっきり爽快な気持ちです」


 そう感想を述べるカシオペヤは、かじりかけの果物を手にしていた。だからこそ知らぬ間に別人へと入れ替わったのではなく、しっかり同一人物であると確信が持てたのだった。











先日、本棚を整理しました。

もう溢れかえっていたので、あれやこれやと収納ケースに収めました。


かなりの量だったので結構大変でしたね。2,3時間くらいかかりました!


これでまた、沢山漫画をきっちり並べられます!!


ああ、全ての漫画を並べる事が出来る大漫画本部屋があったらいいのに……。



なお最近、ちょっとしたきっかけもあり

ブリーチを最初から読み直し始めました。

やっぱり面白い。


こんなセンスが欲しいなと思う、今日この頃。

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― 新着の感想 ―
タイトルを見て某シン・〇〇な映画の数々を連想してしまいました……(;´∀`) 砂埃による汚れって、すぐに洗い流さないと大変ですもんね〜(-_-;) 作家さん方はお互いに、『この作家さんの話の構成の作…
今週は雨続きで湿度高くてイヤになる 血や砂や汗まみれの身体は想像しただけでムリムリって感じですね 屋敷精霊のおかげでスッキリ!良かった良かった 漫画や好きな本いっぱいの本棚憧れますね 引っ越した時に…
わし可愛い!も唯一無二のセンスだと思いますよ!ミラちゃんぺろぺろぺろぺろ〜ん!!! 所で…最近コミックスのペースが落ちている様な…早くコミックスで見たいミラちゃんのあんな姿やこんな姿が沢山あるのに!!…
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