606 最新鋭
コミック版13巻が発売となりました!
13! すごい!
ありがとうございます!
六百六
アンドロメダのコンテナ基地前でうろうろしていたハミィを捕まえた後、ミラ達は宇宙技研の研究開発部にやってきた。
アラトはここの室長だ。よってちょっと探せば直ぐに見つける事が出来た。
「うーん、どうかなぁ。確かに色々と仕組みなんかはわかってきているけど、全体のどれだけ理解したかといったら正直一割にも満たないくらいな感じだ。まあ、機械的に組み上げられはするけれど、正しく動くかどうかについては保証出来ないかな」
現状を説明してから新たなゲートの新設について打診してみたところ、アラトから返ってきた答えがそれだった。
早い話が、作れるかどうかは、やってみなければわからないという事だ。
あの日から、多くの検証や研究を進めはしていたが、それでもまだ未知の部分が多過ぎるため、正確に再現する自信はないらしい。
加えて、基にしたタイムゲートも形ばかりの代物ではあったが、それでいてそれっぽさを出すため、魔法適性の高い貴重な素材をふんだんに使っていたそうだ。だからこそ、そっくりそのまま同じものを作るというのも、素材的にかなり難度が高いとの事だった。
「ふーむ、それは難しそうじゃのぅ」
多くの素材が集まる日之本委員会の研究所でも貴重となれば相当だ。いったい彼は趣味にどれほどの資財をつぎ込んだのか。そう呆れつつ、ミラはゲートの新設は困難そうだと判断する。
実際のところ現代地球の更に先を行く技術が詰め込まれているのが、あのゲートだ。それも仕方がないだろう。
と、ミラ達がどうしようもないかと残念がっていたところだ。
「あー、でも新規に作るってなると、まったく自信はないけどさ──」
諦めたと思われたくなかったのか、アラトは一つの案を提示した。先ほど言ったように新しく作るとしたら、それがうまく作動する自信はない。だが今繋がっているゲートを飛空船に移設するという形であるならば、どうにかなるかもしれないというのだ。
「とはいえ、これも絶対とは言い切れない。一応ゲート自体は、バラしてもまったく同じに組み直す事は出来る。既に開通した実績のあるゲートだから、こっちの方が可能性は高いはずだ。ただ、物質的なところまではそっくりそのまま移せるけど、あのゲートになっている部分は未知な点が多い。だから、また繋がるかどうかまでは定かじゃない。けど、やるとしたらこっちだな」
新規ではなく移設。それがアラトの考えたもう一つの方法だった。
既に実績のあるゲートであるため成功率は高くなる。けれど、移設に失敗してしまった場合はどうなるか。更には移設前にも戻せなくなってしまったとしたら、正常に稼働しているゲートを失うという意味にもなる。
「ふーむ、悩ましいところじゃな」
ただ移設に失敗するだけならば、まだ問題はない。けれど正常に起動中のゲートが、それによって何かのバランスが崩れて繋がらなくなってしまったら大問題だ。
ゆえに、そのリスクを避けるため、既存のゲートはそのままにしておいた方がいいのではないか。何なら、研究所の防衛システムを更に強化すると共に各国からの援軍も増員して、いっそこの場所を決戦場として整えてしまう方が確実なのではないか。
そのように代案も出しつつ、話し合い始めたミラ達。
そんな中だ──。
「やっちゃおう!」
ハミィの声が響き渡った。
リスクはあるかもしれない。けれど骸をどうにかするというのなら、きっとそれが一番可能性の高い方法だと、そう言い切ったのだ。
ハミィが言う。ここまでの考え通り、次に研究所に骸を持ってきたなら、ここが総力戦の主戦場になるのは間違いない。
そして何よりも、その持ち帰ってくる途中もまた危険に満ちたものになるはずだとハミィは告げる。
「ここまでの事から考えてさ、魔王側もこの研究所に骸を持ち込まれたらダメだって気づいているわけでしょ。それと僕らがここに持ち帰る事もわかっているなら、途中で妨害してくるのは確実だよね。早い話、ここにさえ到着しなければいいわけなんだから。結構色々な妨害方法があると思うよ。それと、僕達が戻るよりも早く向こうが研究所を完全に包囲しちゃっていたら、そもそもゲートにすら辿り着けなくなっちゃうじゃん」
これから先に起こり得る事について、そこまで考えていたハミィは襲撃でゲートが破壊されてしまう場合もあるはずだと続けた。
どれだけ防衛に力を入れても確実ではない。だが、こちらが骸を手にした後、どこへ持っていくのか追跡出来ない状況になったら、相手側にも大きな混乱を与えられる。加えて研究所への敵視も幾らか薄れるだろうというのがハミィの考えだ。
「うん、確かにその通りかもしれない」
一番初めに同意したのはヴァレンティンだった。
この先に起こり得る状況を考慮した場合、何より骸の処分を念頭に置くならば移設に賭けた方が勝率も高くなるかもしれない。
「うむ、そうじゃな」
「持ち帰らずに直ぐ処分出来るようになれば、それだけ妨害もされにくくなるしな」
折角骸を先に入手しても、これを処分出来なければ意味がないのだ。
それを聞いたミラとソウルハウルもまた、移設に挑戦してみるのもいいと同意する。
それからカグラとノインもこれを支持するに至り、ゲートの移設が満場一致で決定する事となった。
飛空船にゲートを移設する事が決まった。そうしたら次にミラ達は、その移設先となる飛空船の確認にやって来た。
「ほーぅ! これは立派じゃのぅ!」
研究所の港にて、堂々と鎮座する飛空船を前に驚嘆の声を上げるミラ。
「なんだかイケメンって感じだね!」
同じように飛空船を見ているのだが、そんな不思議な言い表し方をしたのはハミィだ。
きっと、船体の見た目について言っているのだろう。その形状は、細くてスマート。また流線形が特徴的であり、これまでに見てきた、また乗ってきた飛空船に比べると随分形状に違いがあった。
それこそ船というよりは、航空機の類に近い。更に一つ時代を進めたようなデザインだ。
「やあやあ皆、来たみたいだね。とりあえず簡単に説明するから聞いておいてね──」
そんな言葉と共に飛空船から出てきたのは、ミケだった。彼女もまたこの飛空船の開発に携わっており、というよりは開発主任であったため、それはもう嬉々として説明してくれた。
ミラ達が乗る事になる飛空船は、現在の技術の粋を集めて建造されていた飛空船を任務仕様に特別カスタマイズして完成させた代物だそうだ。
飛空船の中では小型の部類に入るため、港に並ぶ他の船に比べると小ぶり。けれど、その性能は群を抜いているとミケは自信満々に言い放つ。
「最大速度は、従来の二倍! ただ小型で小回りも利くから急制動には気を付けるように。あと設備の方だけど──」
かなりの自信作なようだ。だからこそか簡単にと言っていたはずが、その説明は随分と細かい部分にまで及んだ。
「──という感じで、誰もが認めるナンバーワン飛空船だ。どこへだって最速で連れていってあげるよ」
そうして計三十分もかけて説明したミケは、最後にそう満面の笑みで言い切った。
説明内容は多岐にわたり、中には専門的なものも交ざっていたりしたが、とりあえず高性能であるというのは間違いない。加えて飛空船のメンテナンスや操縦のため、ミケと数名の技術者が同乗するので、いざという時のトラブルもお任せだそうだ。
ただ、思いっきり飛ばせられると微笑むミケの顔は、少々危なっかしそうでもあった。
説明の次は、船内の確認だ。ミラ達はミケに案内されるまま、その設備を見て回る。
「うーん、そういう事なら、まあ倉庫に置くのがよさそうかな」
途中、そんな最新鋭の飛空船にゲートを移設したいと話したところ、悩んだ末に倉庫ならばと許可が得られた。
小型の船体に多くの技術が詰め込まれているため、ゲートを置けそうなスペースは倉庫くらいしかないそうだ。
「なるほど。狭いがこのくらいなら、まあギリギリか」
飛空船内の倉庫を確認したアラトは、早速その広さを確認した。そして際どい寸法ながらもどうにかなると結論したら、移設の準備を始めると言い飛び出していった。
なおミラ達は、続き機関部だなんだとあちらこちらに連れ回されている。
「正にレーザーキャノンじゃな! ふむ、よいのぅ!」
ただロマン溢れる要素が点在していた事もあってか、ミケの解説が長くともミラは満更でもなさそうだった。
一通り飛空船内の確認も済んだ後は、それぞれがどの部屋を使うかという話になったのだが、これがまた随分と長引いていた。
小型の飛空船という事もあり、居住スペースもまた最小限。ゆえに部屋は少なく、しかも複数人で使う事が前提となっている。
そして男女で分かれるにしても、ミラ達にはちょっとした問題があった。
「ハミィさんなら、まあいいけど、おじいちゃんは……なんかヤダ」
「なぜじゃ!?」
単純に男女で分けようとした場合、ミラとカグラ、ハミィ、そしてアンドロメダが同室という事になる。
だがそこに問題が生じた。カグラとアンドロメダ以外の二人は、なんちゃって女子であったからだ。
とはいえ少ない部屋で分けなければいけないのだから、そうなってしまうのも仕方がない。
だからこそカグラも、それなりに受け入れるつもりのようだ。ハミィについては、もういっそ女子歴の方が長い事もあってか、十分許容出来るという。
けれどミラは、どうにも別らしい。
「だって、ちょくちょくそういう目しているじゃない。前も城の階段で、見習い術士の子のスカート見上げていたでしょ?」
「うっ……!」
ミラが時折垣間見せるエロ親父のような目つきに気づいていたようだ。今しがた例に挙げた事しかり。何なら女子更衣室にも堂々と入り放題だ、なんていうミラの心内までも完全に見抜いていそうである。
ハミィはよくて、なぜ自分はダメだというのか。そう抗議したいところではあったものの、ミラには心当たりが多過ぎた。場合によっては更にカグラの口から他の余罪まで飛び出しかねない。それを警戒したミラは、きゃっきゃうふふな女子部屋を諦めざるを得なかった。
「なら仕方がないのぅ」
こうなってしまってはどうにもならない。実にデリケートな問題である。
女部屋が無理ならば、男部屋に転がり込むだけだ。むしろそれが出来なければ、寝室が倉庫になってしまうかもしれない。と、ミラが望みを胸に男性陣へと目を向けたところだ。
瞬間、ノインの顔に変化が見られた。そこに浮かぶ表情は戸惑いともう一つ。好みにドストライクなミラが同室になんて事になったら、どうなってしまうのかという淡い期待が滲んでいる。
「あ、何なら僕も、そっちでいいけどー?」
だが直後、なぜか女子部屋で問題なかったハミィまで、そんな事を言い出した。しかしそれはミラの事を考えてだとか、男女がどうこうという話だとかに配慮したためではない。その目は、とびっきりの悪戯心で輝いていた。
「当然、ダメに決まっているでしょう!」
ハミィの魂胆や狙いなど見え見えである。だからこそノインは、もはや反射くらいの速度でそう返していた。
ただ、それはハミィに対しての言葉だったのが、タイミングも絶妙だったためかミラもまた一緒くたに拒絶された形になっていた。
するとその事に気づいたノインが、僅かに焦りの表情をみせる。だがここでミラは別だなどとわざわざ発言してしまえば、今度は彼の心内が晒される事になってしまう。ゆえにノインは、同室を諦め沈黙を選んだようだ。
「わしは、どうしたら……」
結果、部屋なき子となったミラが、どちらともなく佇む状況が生まれる。
ただ、元プレイヤー間において、こういった問題はちょくちょく生じるもののようだ。ここには、その対応に慣れている者がいた。
「それじゃあ、ミラさんはうちらと同じ部屋にしようか。一応は男女に分けてあるけど、そんなに細かく気にするのって、うちらにはいないからさ」
捨てる神あれば拾う神あり。ミケが言うに、飛空船の運航にかかわる乗組員達用の部屋が別にあるらしい。工具やなんやで少し散らばっており、客室よりも幾らか狭いが居住空間としての快適さは保てているとの事である。
「おお、よろしく頼む!」
こうしてミケの提案により、ミラはどうにか倉庫の隅に押しやられるのを回避出来たのだった。
さて、先日のクリスマスですが
予定通りにスペシャルな感じとなりました!!!
寿司! そしてチキン!!
とっても美味しいクリスマスでした!!
しかし今年はまだ終わらない。
そう、大晦日がまだ待っているからです!
一年を締めくくる大切な日ですからね。
そしたらもう、クリスマス以上でなければと思うわけですよ。
先週を超えるチートデイ。
へへ、こいつはなかなかの難題だぜ……!




