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578 シグマ・アーカイブ

五百七十八



「なるほど……全て理解しました」


 ヴァレンティンが調べてほしいと頼んだ『災禍の夜』とは、何を意味するものなのか。悪魔は、どのような作戦を進めているというのか。

 ダンタリオンがそれの調査を始めてから十分ほどしたところだ。その概要を把握した彼は、そこに秘められていた秘密の作戦についての全てを明かしてくれた。

 まず災禍の夜とは、それこそ極々一部の悪魔の中で使われていた作戦名だった。

 そしてその作戦内容とは、『魔物を統べる神』の骸が封じられている場所を見つけるというものだ。

 だがこれの封印場所の詳細を知るのは三神のみ。精霊王ですらも把握していないほどの秘密となっている。しかも極めて秘匿性が高いため、虱潰しに探しても見つけられるようなものではない。

 では、そのような場所を、どうやって見つけるというのか。


「アーカイブには、こうありました。大陸全土を巻き込むほどに大きな災害か、それに準ずる厄災を発生させる必要があると──」


 ダンタリオンは、それを過去の事、それも最近に発生したものだと告げた。

 悪魔が企んだ大災害。それが実行されたのは、今より十年程前の事だという。


「十年前じゃと? 十年前に起きた大陸全土を巻き込む騒動なぞ、もはや一つではないか」


「つまり三神国防衛戦は、そのための布石だったのか」


 二人がその答えに至るのは早かった。むしろ悪魔が関係していると聞いて直ぐ頭に浮かぶのが十年前の出来事だ。

 大陸全土に災厄をふりまいた、三神国防衛戦。その名にある三神国以外にも各地で甚大な被害をもたらした大戦だ。

 だがそれほど大きな戦争であったにもかかわらず、きっかけから何から全てがはっきりとしていなかった。ただ誰もが漠然と、悪魔が三神国を滅ぼそうと企み戦いを仕掛けてきたのだと想像していたくらいだ。

 ゆえに今回得られた情報は、明確な答えや確定的な証拠といったものは一切なかったそこに、答えが示された瞬間でもあった。


「はい、ここにもそのように記されております。悪魔の大半を扇動し、多くの魔物を引き連れて三神国を中心に大陸全土で争いの火を点すと」


 ダンタリオンは、ミラ達が挙げたその戦いこそが『災禍の夜』という作戦の始まりであると肯定した。そして更に、そこから続く作戦の動向についても並べていった。

 大陸全土に広がった大戦は、各地で大きな被害をもたらした。多くの自然が破壊され、沢山の命が散っていった、正に人類史においても稀に見るほどの大厄災だ。

 そして終戦後といえど、そこまで大規模にまで広がった被害というのは、そう簡単に修復出来るものではない。またそれは人類社会のみならず、大陸そのものに対しても同様だ。

 その結果、大陸を巡る霊脈に無数の乱れを生じさせるきっかけにもなった。


「──これを仕掛けた者は、そこを狙っていました。目標である『魔物を統べる神』の骸は、霊脈に流れる莫大な力を利用して封じられていますからね。予め各地に仕掛けを施す事で僅かな霊脈の乱れを検出。その反応を分析精査する事で、骸が隠された場所を炙り出す事に成功したというわけです」


 三神国防衛戦。そして『災禍の夜』。その二つを結ぶ真実こそがそれであったと、ダンタリオンは告げた。

 封印に霊脈のエネルギーが利用されているからこそ、微弱ながらもその乱れが影響となって現れたというのだ。

 とはいえ、霊脈に影響を与える事など当然ながら簡単ではない。ダンタリオンもまた、これは相当に無謀な作戦だったと続ける。

 事実シグマ・アーカイブには、この作戦の結果として悪魔の八割近くが犠牲になったと記されていたそうだ。

 しかもこの作戦に動員された悪魔のほとんどは、本当の狙いについて知らされていなかったらしい。多くの命を散らせる事で霊脈への影響拡大に費やされた存在。いわば生贄にされたようなものだそうだ。


「そんな事が……」


 これに沈痛な面持ちを浮かべるのはヴァレンティンだ。その者達は浄化する機会すらなかったと、複雑な表情である。


「それと記された内容によれば、この作戦の実行から八年を掛けて、五つの封印の発見に成功したそうです」


 人類側のみならず、悪魔側からしても惨たらしい作戦だった。けれどその結果は悪魔側に確かな成果をもたらした。目的通りに『魔物を統べる神』の骸の封印場所を暴き出したのだ。


「何かしら動いていると思うたが……よもやとっくに見つけられておったとはのぅ」


 悪魔達が暗躍しているという事までは情報として掴んでいた。けれどまさか、既にそこまで事が進んでいたのかと驚愕するミラ。

 そしてそれは同時に、精霊王達にも衝撃を与えるような事実であった。


『そこまで見つかっているとは。これはまずい状況だな』


『そうね、早く知らせてあげないと!』


 落ち着き様子を見守っていた精霊王とマーテルだったが、これは緊急事態だと慌てた様子である。何やら誰かと連絡を取り始めた。

 と、そのようにミラの頭の中でも騒がしい事になり始めたが、ダンタリオンの報告はまだ続く。


「──ですが見つけられたとはいえ、神々の力で施された封印ですからね。簡単にどうこう出来る代物ではありません」


 場所自体は知られてしまったが、大半がその封印を完全に解くまでに至ってはいないらしい。それを解くには、極めて緻密で複雑な手順や条件などがあるからだ。

 ダンタリオンが調べたところによると、現時点において骸が持ち出されたのは二つだけ。

 つまり場所を特定してから二年かけて、ようやく二つとも言える状態だ。

 これが早いのか遅いのか定かではないが、三神国防衛戦の影響で悪魔の数が大きく減ったため封印の解除に動かせる頭数も少なくなった事が進捗鈍化に繋がっているらしい。


「記録によりますと、封印の解除はかなり難航している様子です。現在解かれた分も、何かしら好条件が重なっていたとありますね──」


 既に封印が解かれてしまった分については、幾らか都合のいい偶然による産物でもあったそうだ。ゆえにこの後、今すぐ次々と封印が解かれて最悪の事態になるような事はないだろうというのがダンタリオンの予想だ。


「ふーむ。その内の一つは、ネブラポリスにあったという分じゃろうな。どのような偶然かは知らぬが、そちらは既に対応済みと聞いておる。となるともう一つの方が気がかりじゃな」


 封印が解かれてしまっている二つの内の一つ。それについては、ミラも把握していた。

 ソロモンから聞いた話によれば、持ち出されはしたものの既に取り戻し済みとの事だ。そして今は、ロア・ロガスティア大聖堂に再封印されている。

 だが、もう一つ封印が解かれて持ち出されているという話については、初耳であった。

 それは、どこにあったものなのか。そして現在はどこにあるのかわからないだろうか。そう確認するミラ。


「手に入れた分については、各自で秘密に保管しておくと決めてあるようです。そのため、シグマ・アーカイブにも隠し場所は記されていませんでした」


 管理者の権限を持つダンタリオンでも、その情報については得られなかったようだ。つまりもう一つについては、獲得者が完全に秘匿しているという状態であるらしい。


「むぅ……それはちと難儀じゃな……」


 こちらで詳細が確認出来ていない分を悪魔側が握っている。これはなかなか面倒な状況だと、僅かな焦燥感をその顔に浮かべるミラ。

 するとそんなミラの様子を慮ってか、ダンタリオンは「一つ、有力な情報があります」と告げて、それを口にした。


「かの骸を隠している悪魔の名は、デラパルゴ。そしてその者は現在、アトランティスという国の近くに潜伏しているとあります。その彼を見つけ出す事が出来れば──」


 隠し場所については不明だが、シグマ・アーカイブを隅々まで精査したところ、悪魔の方についての情報が残っていたそうだ。

 それらを繋ぎ合わせたダンタリオンは、この悪魔自体を探し出してしまうのが一番ではないかと提案する。

 デラパルゴを見つけて捕まえる。そして自身と同じように浄化すれば、彼を救うと同時に骸の隠し場所まで聞き出せるというわけだ。


「ふむ、一石二鳥じゃな!」


「それは有力な情報ですね。そこまでわかっていれば捜索も捗りそうです」


 このまま完全に見失っていたら、不安の種をずっと抱え続けるところだった。けれどそこに光明が見えた事に喜ぶミラ。ヴァレンティンもまた、それは探り甲斐があると意気込む。


「しかし、そのデラパルゴという者は、どのように封印を解いたのじゃろうな。簡単なものではないのじゃろう?」


 話に挙がったデラパルゴ然り、そしてネブラポリスも然り。極めて堅牢な封印だという話だが、その二つが解除されてしまっているというのもまた事実。

 色々と相手側に都合の良い状態が重なったらしいが、ではいったい何がどうしたら封印の解除にまで至れるというのか。

 今後注意しておくべき事になるかもしれないと考えたミラは、どういった場面に気をつければいいかと聞いてみる。


「そうですね。簡単ではありませんが、方法は幾つかあります。そして今回、両方に共通していたのは封印の地のエネルギーバランスが崩されたというものですね」


 ダンタリオンが言うに、封印の地のエネルギーバランスは高水準で保たれているそうだ。そしてその均衡というのは自浄作用なども加わるため、ちょっとやそっとの事で崩れる事はまずあり得ないという。

 しかし詳細は不明だがどちらの場でも、この均衡を揺るがすほどの何か、それこそ異常な何かがあったようだとダンタリオンは言う。

 どうやらシグマ・アーカイブにも、その辺りの詳しい事は記されていなかったようだ。ダンタリオンの予想によると、その原因自体は悪魔が狙って仕掛けたものではなかったのかもしれないとの事である。


「……そこの共通点というのはないのかのぅ。例えば……こう……墓地じゃった、とか」


 異常。ネブラポリスといえば、ソウルハウルが根城にしていたとあってか、かなりとんでもない状態にあった。

 ゆえに関係していたりしないだろうかと懸念を抱いたミラは、そうではないように祈りながら少し回りくどく問う。死体による影響などは大丈夫なのだろうかと。


「墓地ですか。確かに負のエネルギーに偏るとは思いますが、どれだけ大規模な墓地でも、封印の均衡を崩すほどにはならないでしょう。そもそも遺骸は朽ちていくほどに、内包する死のエネルギーも薄れていきますから。それこそ本気で封印に綻びを入れようとするなら、死の気配を保つため朽ちないよう完璧に処置した数多くの死体を並べて数十年にも及び維持し続けない限りは、影響も出ないはずです」


 どのような墓地があろうとも影響はないと豪語するダンタリオン。しかも少しだけ苦笑しつつ、このような狂気染みた墓地でもあるのなら話は別だと冗談交じりに例を挙げてみせる。


(完全にあやつが原因ではないか!?)


 ネブラポリスの状態は、まさにその冗談通りであった。ソウルハウルが各地から集めた女性達の死体が、そこには無数に並べられていたのだ。

 しかも死霊術士である彼の防腐処理は、そこらの専門家をも凌駕する。死体の状態は、ソウルハウルが回収したその瞬間どころか、生前に近い状態にまで修復し維持されている。

 つまりダンタリオンが言う死のエネルギーが、ずっと最大限に内包されたままというわけだ。

 まだ、もしかしたらという予想ではあるものの、そんなソウルハウルのコレクションの影響で、あの場にあった封印の均衡が偏り綻びを生じさせてしまったのではないだろうか。

 そしてあの時、あの場にいた悪魔は、それを突破口にして封印を解除したのではないか。


「ふむ、そうじゃな。流石にそのような事はありえんじゃろうな!」


 ネブラポリスの封印が破られてしまったのは、ソウルハウルのせいかもしれない。ミラはダンタリオンの冗談を笑い飛ばしながら、『あーあ、わし、しーらない』と心の中で無関係を主張するのであった。










さて、先日バーミヤンの餃子を買ったと話しましたが、

なんと、それと一緒に買ったものがもう一つあります!!!


それは……


フライパンです!!!

しかもニトリで買ってきた、なんかいい感じのするフライパンです!!

当然、餃子を焼くために買ったフライパンです!


というわけで、焼いてみました。


流石は新品のフライパン、こびりつきません!!!!

いいぞ新品! 凄いぞ新品!!


バーミヤンの餃子もまた美味しかったです!


あとは、いつまでこのこびり付き防止状態が続いてくれるか……。

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― 新着の感想 ―
書籍版の続きとして読んでいたけれど、 このあたりで相違が目立ってきてよくわからなくなってきた!
[気になる点] 封印の綻びの原因でないといいですね、ソウルハウルのコレクション……(;´∀`) [一言] フライパンのフッ素加工は、洗う時の手入れの仕方で維持が出来るらしいですね。……私の手入れの仕方…
[一言] ソウルハウルの性癖が世界の一大事でやらかしてるとはw 是非本人にに知ってほしい!
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