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554 魂の邂逅

明けましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いします!

五百五十四



 かなり大掛かりな作業だった事もあり、祭の境界の拡張は二時間にも及んだ。とはいえそれでも、流石は異空間の始祖精霊か。拡張した規模に比べれば恐るべき早さであったといえるだろう。


「おお、ようやっとか」


 アナスタシアとの話に触発されてか、遥か昔の様子について精霊王達の話を聞いていたミラ。そんな中、作業が完了したという事で話を切り上げ周囲の様子を窺った。


「ふむ、ぱっと見は先ほどまでと変わらぬようじゃが……」


 確認してみた限り、特にこれといった変化は見受けられない。ゆえにミラはそんな感想を口にしたのだが、これに対してメルフィが自信ありげに答える。


「近くに変化はありません。ですが以前よりも十倍以上に広がっているんですよ!」


 どうやらリーズレインの協力によって、彼女の理想的な職場環境が整ったようだ。これで片付け切れていなかった分をどうにか出来ると、それはもう嬉しそうである。

 メルフィが言うに、未だ数百年分ほどの記憶が積んだままの状態になっているらしい。現在は仮置きのまま保管しているに過ぎないという。


「やっと整理出来ます!」


 それらにようやく着手出来るとあってか、メルフィはとてもやる気満々だった。


(なんとまた……)


 数百年分とは、いったいどれだけの仕事量になるというのか。しかもそんな作業が待ち構えているというのに、むしろ張り切ってすらいるメルフィ。

 ブラックな職場と、それを意にも介さない職員。死神のテリトリーは、色々と恐ろしい。ミラは改めてそう感じながら、今一度じっくりと祭の境界を見回した。

 ひたすらにどこまでも並ぶ棚の列。溢れたように置かれている、様々な記憶の容れ物。これを片付けろなんて言われたら、無茶な話だと辟易する事間違いなしである。

 しかも彼女の仕事は、片付けだけではない。こうしている間にも、仕事が増えていっているのだ。

 そう、祭の境界には次から次へと新たな死者の魂がやってきていた。大陸全土の魂が通る場所ともあってか相当な数が集う。しかもここに来る魂は生前の姿に寄ったままとあって、その光景は生物博覧会といった様子だ。

 とはいえ、この場所が今の役割を持つようになった理由は、人類の歴史の保存。ゆえに人類の魂以外は、そのまま通過して天へと還っていくだけとなっている。

 そして人類の魂はというと、こちらは一度特別な部屋に送られるという。


(一日だけでも、こんなに沢山の人が亡くなっておるのじゃな……)


 中には迷う魂や、地上に留まる魂などもある。とはいえ大半の魂は、ある程度もすれば自然とここへやってくるもの。

 だいたい一日分。それでいて、沢山の人間が亡くなっているとわかる光景だ。

 ミラは、その無常さを目の当たりにしつつ、特別な部屋に消えていく死者達の列を、ただ何気なく見送っていた。

 と、その最中──。


「……え?」


 不意に素っ頓狂な声を上げたミラは、自分の目がおかしくなったのかと強く瞼を閉じてから大きく見開いて、再度その死者達の列を見据えた。


「なん……じゃと……!?」


 そしてそれが見間違いではないとわかり声を震わせる。


「どうしました?」


「どうしたの、ミラさん?」


 ミラの動揺は、誰から見てもわかるほどに強く顔に浮かんでいたようだ。その様子を気にして、メルフィとアナスタシアが心配そうに声を掛けてくる。


「あー、うむ、それが……じゃな──」


 二人の声を受けて、どうにかこうにか平静を取り戻したミラは、それでも緊迫した顔のまま死者達の列に並ぶ一人を指し示し答えた。


「あの列に並んだ一番体格の良い老人なのじゃがな……見覚えがあるのじゃよ。前に一目見て憧れた、最高峰。わしの目に狂いがなければ、あの御仁はアリスファリウスの三神将、ヨルヴィレド・ポラリス殿ではないのか!?」


 他人の空似という可能性もあるが、あれほどに立派な老人など、そういるはずもない。また見間違えるはずもない。しかも居並ぶ死者達の中でも特に格別な異彩を放っているのが一目でわかるほどの存在感だ。


「そんな男がここにいるという事は、つまりそういう事というわけ……じゃろうか?」


 かの三神将ヨルヴィレドが死者達の魂の列に並んでいる。それは即ち、三神将の一角が逝去したという事。だが、あまりにも信じられない出来事とあって、ミラは困惑気味にメルフィを見やった。


「えーっと、はい、そうですね。お名前の方もミラさんが仰った通りの名です。お知り合いという事なら申し上げにくいですが、今のミラさんのように特殊な方法で来たという形跡もありませんので、あの方は死者としてここに来ていますね」


 ミラが指し示す魂を確認するように見つめたメルフィは、間違いなくヨルヴィレド・ポラリス本人の魂であると断言した。


「よもや三神将が……いったい何があったというのじゃろうか……」


 化け物をも超える化け物として三神国を守護している、人類最強の存在。それが三神将だ。

 そんな三神将が死ぬなんて事があるというのか。神の加護なんかを受けていたりして不死身だったりするのではないか。

 あまりの最強ぶりからして、プレイヤー間ではそんな噂も囁かれていた。だが、不死身でも無敵でもなかったのか。三神将の一角が亡くなってしまった。

 そこで次に浮かぶのは、彼の死因だ。いったいヨルヴィレドの身に何があったというのか、かの国で何が起きているというのかと戦慄するミラ。

 ただ、鬼気迫るミラの心境とは裏腹に、メルフィとアナスタシアのみならずリーズレインや精霊王、マーテルまでもが死因として同じ理由に行き着いていた。


「見た感じ、老衰っぽく見えるけど……?」


 それらを代表するような形で、アナスタシアがその死因を口にする。魂の姿から見てわかる通り、立派ながたいをしているものの相当な高齢であるというのは明明白白。ゆえにミラ以外の誰もが老衰、つまりは寿命だろうと思ったわけだ。


「いやいや、しかしじゃな。あの三神将じゃぞ。老衰なぞ、そんな当たり前な理由で死ぬようには思えぬが」


 三神将というとグリムダートのそれは、アトランティスの将軍達をたった一騎で返り討ちにしてしまうほどの無敵っぷりだ。国は違えどアリスファリウスのヨルヴィレドもまた同様、三神国の守護者として周知され、絶対的な存在として君臨し続けている。

 だからこそ、老衰なんて普通の理由に負けるなんてと反論するミラ。


「では、気になるのでしたら聞いてみましょうか」


 と、ミラがそこまで言うからか、メルフィが興味を抱いたようだ。そんな言葉を口にするや否や、死者達の列の方に駆けていったではないか。

 実にフットワークの軽い死神さんだ。もしかするとリーズレイン復活のお陰で長年の悩みが解消されたとあって、かなり機嫌が良いのかもしれない。


「わかりましたよー」


 ヨルヴィレドの魂と何かしらの交流を図る事、十秒とちょっと。これまた軽い足取りで駆け戻って来たメルフィは、本人から直接聞いてきた死因について口にした。

 彼女が告げた衝撃の事実。三神将、ヨルヴィレド・ポラリスの死の真相。それは──。


「やっぱり老衰だったようです。騙し騙し生きてきたけど流石にもう無理だったと、そう言ってました」


 結果、ミラが三神将に抱く幻想よりも、皆が思った現実が勝ったようだ。

 ただ、死因は老衰であると本人の談によって判明はしたが、やはり三神将か。ただの老衰ではなかった。

 メルフィは同時に年齢も聞いていたのだ。


「二百三十歳とはまた、大往生じゃな……」


「我ながら、よくぞここまで生きたものだって笑っていましたよ」


 ヨルヴィレドは一般的な人間だ。長命な種族などではない。ただ特筆した才能を努力で開花させた、一介の騎士であった。

 そんな彼が纏う神器は、それこそ人知を超えた力を秘めたものだ。また三神将として、神の恩寵も受けている。ゆえにある程度は老化にも抗えたであろう。だがそれにも限度がある。

 けれどヨルヴィレドは、そんな限度を幾度も超えて二百三十年という年月を生き抜いた。その年月は、ただの人間ではあり得ないほど飛び抜けたものだ。


(今思えば、あの頃から既に老人じゃったからのぅ)


 ダンブルフであった頃から変わらぬ姿。そこから更に三十年だ。それはもう、流石は三神将といっても過言ではない大往生っぷりといえるだろう。


(とはいえ、これはとんでもない一大事になったものじゃな)


 ヨルヴィレドの死を悼むミラは、同時にその影響について考えた。

 あらゆる脅威から三神国を護り続けてきた三神将だ。それは絶対的な国防の要であり、何を以ても揺るがなかった人類の支柱的存在でもあった。

 だからこそ、そんな三神将が逝去したとなれば、その影響はアリスファリウスのみに留まらない。それこそ大陸全土を震撼させるほどの衝撃的な一大事だ。

 その渦中にあるアリスファリウスは、現在どのような状況なのだろうか。かの国の防衛はどうなっているのか。国葬などは行われるのだろうか。国民の反応は、そして周辺国の動向は如何ほどか。

 事が事だけに次から次へと気になる事が浮かんでくる。


(まあ、それを知ったところで、わしは一介の冒険者でしかないからのぅ。出来る事など何もないのじゃが)


 大騒ぎになっているのは間違いないはずだ。とはいえ、その騒ぎに対して何が出来るのかというと、これといって無いのが現状。

 今はただ、実に惜しい御仁を亡くしたと喪に服すのがせいぜいである。

 きっと地上では、盛大な葬儀が行われる事であろう。もしもダンブルフのままであったのなら、九賢者という立場で国葬に参列するくらいはあったかもしれない。

 けれど、今はそれも難しい。

 とはいえ、このような場所で出会えたのも何かの縁。ならばここで見送ろうと、ミラはヨルヴィレドの魂に向かって両手を合わせ、その眠りが安らかである事を祈るのだった。











というわけでいつものようにあっという間な感じで一年が過ぎて、また新たな一年が始まりましたね!


今年がどんな一年になっていくのか、楽しみでもあり恐ろしくもある。そんな年初めです。


望むのは無病息災! そして平穏無事!

今年も安寧に越せるように願うばかりです。



ところで先日のクリスマスの日ですが、なんと前から気になっていたものを買う事が出来ました!!


それは、ステラおばさんのクッキーです!!!!


なんと徒歩圏内にお店が出来ていたのです!

というわけで買っちゃいました!

去年のクリスマスはケンタッキーではなく、ステラおばさんのクッキーバーレルです!!!!


人気ナンバー1がチョコチップクッキーだそうで……

これがもう納得の美味しさでしたね!!


今回は色々な詰め合わせのバーレルでしたが、次はその中でも気に入ったクッキーをピンポイントで買ってみようと思います!!!

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― 新着の感想 ―
ミラ「ソロモンよ、死神殿から聞いたのじゃが、三神将のヨルヴィレド殿が齢二百三十で老衰の大往生だそうじゃ。」 連絡したら大騒ぎになるだろうね(笑)
[気になる点] ゲーム上だと三神将クラスは、きっと物語の根幹に迫るメインクエストをくれるような人達だから、その一角の死去なると、たとえ老衰でも世界に大きな変化が起こりそうですね [一言] 私は年越しそ…
[気になる点] 死神さんの仕事内容に戦慄した回でしたね((((;゜Д゜)))) [一言] なかなか手に入らなかった物が手に入った時の喜びというのは、何ものにも代え難いものがありますよね( ´∀`) …
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