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514 皇竜の実力

五百十四



「ほほー。こんな場所もあったとは、とんでもないのぅ。じゃが、これならば十分じゃな」


 アラトの案内で組み立て場に到着したミラは、そこを一望するなり見事なものだと頷いた。

 前に『宇宙科学技術研究開発部』を訪れた際は、タイムマシンについての話が白熱し、全ての部屋を回れていなかった。ゆえに初めて見る組み立て場の光景に、ミラはこれ程とはと大いに感心する。

 組み立て場。ここはその名の通り、色々と組み立てるための実験場といった場所だった。

 見回してみた限り、そこには組み立て途中と思しき色々が存在している。大きな機材であったり、船のような乗り物であったり、人工衛星らしきものまで確認出来る。

 だが、実験機であるそれらよりも気になる事が、この組み立て場にはあった。

 それは、この場所そのものだ。何といっても天井の高さがとんでもなく、それこそ百メートルにも届くだろうほどの高さがあったのだ。


「ここは、いずれ完成するロケットを組み立てるための場所でね。どうかな、これなら十分だと思うが」


 そう確認するように振り向くアラトだが、その表情といったら、むしろどうだと言わんばかりだ。


「うむ、まったくもって問題なしじゃな」


 タイムマシンだ転移ゲートだとかで色々と騒がしいアラトだが、その本質はやはり宇宙への憧れ。だからこそ、ここには彼の夢が詰まっているのだろう。

 これだけの広さがあれば十分だと答えたミラは、そのまま続けてロザリオの召喚陣を四つ展開した。


『地の底で生まれし黒は、彼方の光に憧れる。天の底で育ちし白は、遥かな蒼に憧れる。

 始まりは鳥、穢れ無き蒼に波紋を残す。始まりは夢、輪廻に刻まれた覇者の記憶を呼び起こす。

 幾重の時を越えて憧憬。

 束ねた翼が、夢を纏う。

 いざ、天空に舞い上がれ。愛しき我が子よ』


 ミラが詠唱を紡ぐほどに膨大なマナが渦巻いて召喚陣を連結させていく。そうしていよいよ開いた召喚の門より、天空の覇者とされる天の皇竜アイゼンファルドが姿を現す。


「いや、まったく。相変わらず流石なものだね」


 召喚術の中でも最上級となる皇竜の召喚。その術式は極めて複雑であり、制御から何からまでもが最上級といっても過言ではない。

 そんな術を涼しい顔で展開して起動するミラの腕前に、ミケは九賢者とはどういう存在だったかを改めて思い出していた。


「待て待て、何だ……何を召喚したんだ!?」


 対してアラトはというと、その光景を前にして目を白黒させる。これまでの流れからして、相当に大きな何かであるとは予想出来る。そして彼は、そこでガルーダの親玉的な巨鳥でも召喚するのか、はたまた竜だろうかと考えていたわけだ。

 その結果、召喚の門を抜けて現れたのは巨大な竜。そこはアラトが予想した通りであったが、問題はその竜が放つ存在感だった。

 ただの竜などではないと、それこそ格が違うと本能で悟れるほどの圧倒的過ぎる竜が登場したのだ。


「どうじゃ、カッコいいじゃろう。これがわしの自慢の息子じゃよ」


 ミケとアラトの反応の違い。それは両者がミラをダンブルフであると知っているか否かの違いに過ぎない。

 皇竜アイゼンファルド。その存在は、軍勢のダンブルフの切り札としてプレイヤー達の間では有名であり、また同時に竜達の頂点に君臨するとも云われている王の血統。

 ゆえにその存在感や迫力は、そこらの竜の比ではない。


「あれから三十年。また随分と立派に成長したものだね。頼もしいよ」


 だからこそミケは、気構えが出来ていた。加えて、これからやる事の成功を確信しているかのような態度だ。

 対してアラトはというと、よもやこれ程の竜だとは予想出来ていなかったようだ。見ると、ぎょろりと光るアイゼンファルドの金の目に射竦められていた。

 ただそれも今だけ。次の瞬間に広がる光景を前にするなり、アラトは目がおかしくなったのかと天を仰ぎ、再び目の前を見据えて困惑した。

 なぜなら絶対的強者と一目でわかるその竜が「母上ー!」などと言いながら、まるで猫のようにミラに甘え始めたからだ。


「相変わらずじゃのぅ、まったく」


 甘えてくるアイゼンファルドを全身で受け止めたミラは、後はもういつもの事といった様子でされるがままの構えだ。アイゼンファルドの愛情表現は激しいが、それでも親として慕ってくれているという証でもある。だからこそミラは大変だと感じつつも、それでいて嬉しく思っていた。


「んーと、で……つまり、このとんでもない竜に頼むって事でいいんだよね?」


 ミラに甘えるその様子には色々戸惑うところもあるが、その身体を見れば、候補として召喚された意味もわかるというもの。

 何かと人知を超える能力を持つ竜族だ。高度十万メートル到達というのも不可能ではなさそうだと、アラトは希望を見出す。


「その通り。何といっても天の皇竜だからね。ミラちゃんは随分と心配していたみたいだけど、まあ見ての通りのとんでもなさだ。十万メートルなんてどうという事はないだろう」


 答えたのはミケだった。むしろこれほどの適任者は他にいないと断言するなり、「え、皇竜?」と、なおも戸惑うアラトを置き去りにしたまま「ほら、早く聞いて聞いて」とミラに催促する。

 ミラは「わかった、わかった」と頷いてから、それを口にした。


「さて、今回喚んだのは、ちょいと聞きたい事があってでのぅ。アイゼンファルドや、お主はどの高さまでならば安全に飛べるじゃろうか?」


 ミラは、あえて細かい高さを指定せずに問うた。なぜなら、とっても頑張り屋なアイゼンファルドの事だ。もしも無理な数字だったとしても、きっとそれを求められているとわかれば無茶をしてしまう恐れがあったからだ。

 だからこそ正確にはせず、更に安全という言葉まで付け足したわけである。


「どこまで高く飛べるか、ですか? 単独でという事でしたら結構自信があります! 前に友達と勝負した時は、うんと高くまで行きました。里では、私が一番です!」


 どのくらいの高度なのか。アイゼンファルドは、その正確な数値を測定するような事はしていないようだ。だからこそ、そのような言い方になったのだろう。


「ほぅ、一番か! 流石は、わしの息子じゃのぅ!」


 かなり高くまで飛べる事はわかったが、それが何を基準として高いのかがわからなければ判断のしようがないというもの。だがミラはというと誇らしげなアイゼンファルドを前にして、それはもう偉い偉いと可愛がっている。その様は、ただの親馬鹿だ。


「こほん。えっと、アイゼンファルド君。すまないが出来るだけ詳しく教えてほしい。君が到達出来る高さについて、だいたいどのくらいかを言い表す事は出来るかな?」


 ミラに任せたままでは、埒が明かない。そう判断したのだろう、ミケが改めるようにしてそんな質問を口にした。アイゼンファルドの言う、うんと高くが十万メートル以上かどうかを見極めるために。


「あ、ミケイシャマーレさん! お久しぶりです──」


 ダンブルフ時代、ミケには術具関係で世話になっていたミラ。だが、それだけではない。同時にミケの素材集めなどを手伝ったりもした。特にボス級とも多くやりあっているため、アイゼンファルドとミケは、その当時からの顔見知りだったりする。

 だからこそかアイゼンファルドは、そう嬉しそうに返すなり彼女の言葉を直ぐに理解し考える。そして少しした後に「──確か全力で飛んで三、四分くらいでしたが、どうでしょうか?」と答えた。


「全力で……か。で、ミラちゃん、彼の全力ってどのくらいだい?」


 悪くない情報であると頷いたミケは、その基準となる全力がどの程度かわかれば解決だとミラを見やる。

 それに対してミラは、「全力のぅ……」と少し悩んでから、「少なくとも昔から音速は超えておったぞ」と続けた。

 アイゼンファルドが全力で飛ぶような機会は、そう多くない。ゆえにミラもまたアイゼンファルドの全力については、三十年前に見たきりだった。この世界が現実になってからは特に召喚制限が厳しくなってしまったため、全力で飛ぶところを見た事がないというのが現状である。

 ゆえに今の全力が、どのくらいの速度なのかはミラも正確には把握していないのだ。


「音速で三、四分なら、少なくとも六十から八十キロメートルくらいか。そこに皇竜の成長分を上乗せすれば──」


 そんな計算を始めたミケは、その最中に「ところでアイゼンファルド君は、三十年くらい前からどのくらい速く飛べるようになったんだい?」と質問を投げかけた。

 これにアイゼンファルドは、「ずっとずーっと速くなりました!」と自信満々に答える。

 その様子からして、余程のようだ。そう感じたミケは、そこから一気に計算するなり「うん、十分に到達出来る範囲だ」と結論づけた。

 今のアイゼンファルドならば、きっと作戦を実行出来ると。すなわち、高度十万メートルの中継基地までアイゼンファルドに運んでもらう事も可能というわけだ。


「もしかして、遂に母上と空の旅に行けるのですか!?」


 話の流れからして、何となくそのように感じたのだろう。アイゼンファルドは、その目に大きな期待を浮かべる。


「いや、まだ誰が行くとは決まっておらんのじゃがな……本当に大丈夫か、アイゼンファルドや。高くに行くほど空気が薄くなるが、身体に支障はないのか?」


 もしかしたら、いいところを見せようとしているだけかもしれない。うんと高くまではいけるが、それはいけるだけであって、留まり続ける事が出来るわけではないのかもしれない。

 ミラは、そういった様々な懸念を浮かべ、アイゼンファルドに害はないのかと確認する。


「君にとっては大切な息子だから過保護になるのもわかるけど、伝承からもわかる通り、皇竜っていうのはとんでもない種族だ。時には挑戦を見守るのも大切だよ」


 そんな心配性なミラに苦笑するミケは、さあ言ってやれというような表情でアイゼンファルドを見やった。

 すると、そんなミラとミケの言葉を受けて、アイゼンファルドは「よくそのくらいの高さで遊んでいるので大丈夫です!」と胸を張って答えた。しかし直後に、「あ、ですが空気がないと母上が……!」などと別の心配を口にする。

 どうやらアイゼンファルド自身は、まったく問題ないようだ。けれど人間であるミラは違うと気づいた彼は、一緒に空の旅が出来ないと項垂れる。


「なーに、そこは安心してくれ。空気がないところでも大丈夫な服を作れるからね。それを君の母上が着たら、もうどこまでだって飛んでいけちゃうよ。だからどうかな、アイゼンファルド君。その前にちょっと私達の用事に付き合ってはくれないかい? 引き受けてくれたらその服をプレゼントしようじゃないか」


 報酬は、母上も一緒に空の旅が出来るようになる服。そうミケが提示したところ、アイゼンファルドは「何でもします!」と即答した。そして母上と一緒に大空を飛び回れると、それはもうやる気ばかりを漲らせていった。




「なあ、さっきからさ、アイゼンファルドとか言っているけどさ……それって確か、あの九賢者と一緒にいる皇竜の名前じゃなかったか……?」


 アイゼンファルドならば、中継基地に到達出来そうだ。そのように話が纏まったところで、先ほどから難しい顔をしていたアラトが今更ながらに触れた。目の前にいるのはつまり、かのダンブルフのアイゼンファルドであるのかと。


「うん、そうだけど?」


 もちろんだと頷くミケ。むしろ皇竜などという存在を召喚出来て、なおかつその名がアイゼンファルドとなったら、該当する召喚術士など一人しかいないだろうといった顔だ。


「って、つまりその……ミラちゃんは……?」


 途中途中で、もしかしてと思う場面は多々あった。そしてそれらが全てその通りだったと気づいたアラトは、恐る恐るとでもいった仕草でミラに振り返る。


「ああ、そうじゃったな。お主はまだ知らんかったか。その通り、わしがダンブルフじゃよ」


 日之本委員会の中の誰がその事を知っているのかについて、ミラは正確には把握していなかった。また、その都度に言い訳するのが面倒という事もあって、わざわざ自分から正体を明かすなんて事もしなかった。

 ただ無理して隠す必要はなく、こうして気づかれたのなら素直に肯定するくらいだ。色々と承知しているのみならず、秘密もいっぱいな元プレイヤーが集う日之本委員会において、国家機密どうこうについてはあまり気にしなくていいと、ソロモンからのお達しもあった。

 ゆえにミラも、問われたならば素直に頷くのみである。


「うわぁ、まじかぁ。そういう事は先に言っておいてくれよぉ……」


 アイゼンファルドの迫力もそうだが、ミラの正体がまさかの有名人という事で二重に驚いたアラトは、「最初からわかっていたら、あんなに驚かなかったのになぁ」と悔し気にアイゼンファルドを見上げた。そして更に、「建国祭で何人も帰ってきたのは知っていたが、まさかこうしてもう一人隠れていたとはな」と苦笑する。

 冒険者ミラという立場のままでいる事で、色々と動きやすくなる。彼は、そんな狙いにも気づいたようであった。





「という事で、私達が次に考えなければいけない事は、中継基地を正常に戻す方法についてだ」


 アイゼンファルドの助力があれば、中継基地までは問題なく辿り着けるだろう。そうしたら後は中継基地をどうやって復旧させるかだけだと告げるミケ。


「いったい、どういう技術が使われているのか。まあ、その辺りについては、この結果を皆に伝えてからでもいいよな。ここから先の話し合いは、それからで十分だ」


「うむ、そうじゃな」


 今は稼働していないらしい中継基地。技術的な問題か、物理的な問題か。そのどちらもか、それ以外にもあるのか。原因は現状不明だがアンドロメダならば、多少なりとも推察出来るかもしれない。

 アラトが一旦戻ろうと歩き出したところで頷き答えたミラは、そのままアイゼンファルドを見上げた。


「というわけで、ちょいとまた話し合いじゃ。この件が進展したら、また喚ぶのでな。待っていてもらってもよいか?」


 そのようにミラが問うたところ、アイゼンファルドは「わかりました、待っています!」と、今回はやけに素直に答えた。


「ふむ、良い子じゃ良い子じゃ。では、また後でのぅ」


 いつもならば高確率で、もっと一緒に遊びたいと駄々をこねていたであろうはずのアイゼンファルド。だが今回は、きっと事の重要性を察してくれたのか素直に送還されてくれた。

 なんと空気が読めて聞き分けの出来る子に育ったのだろうと、ミラはアイゼンファルドを見送りながら、その成長を喜ぶ。

 なお、真実は別にあった。

 一緒に遊びたいという気持ちを抑え、アイゼンファルドが素直に還ったその理由。

 それは彼が、母上を乗せてずっと高くまで飛ぶ練習をしようと考えていたからだ。

 普段から、『母上と行くのんびり空の旅』を妄想し、そのシミュレーションに余念のなかったアイゼンファルド。

 だが今回、あろう事か、そんないつもの妄想よりも更に喜ばしい事が起きた。何よりも得意とする、高高度での空の旅が可能になるというのだ。

 アイゼンファルドにとって、それは夢が実現するようなものだった。そして、だからこそ少しでも特訓して、最高の空の旅を楽しみたいと考えたわけだ。

 近い未来、ミラは張り切るアイゼンファルドの見事な高高度アクロバット飛行を体験する事になる。そして盛大に目を回し、息子の成長を一層思い知る事になるのだが、今はまだ知らぬ話だ。











流石はヤマザキです。やっぱりヤマザキです。

こんなご時世ながら、やってくれましたね!!


前に1.5点が1点になっていたなんて言いましたが……


ここでまさかの出来事が!!!


皆さん、里見の郷というお菓子をご存じでしょうか。

ヤマザキ製パンより発売されている和菓子なのですが、自分はこれが好きでしてね。常備するくらい買っているのですよ。


とはいえ、分類は和菓子。

なんとなくわかりますよね。そう、パンではないのでパン祭りの対象ではなかったのです。


だがしかし!

そうです。なんとなく察せますよね。なんと先日買った里見の郷に、1.5点がついているではないですか!!!!!


いやはや、流石はヤマザキです。

黒糖フークレエの点数が下がりはしたものの、これまでついていなかった商品に点数を付けるというとんでもない方法でバランスをとってきたわけです!


もう、お見事としか言いようがありませんね!


里見の郷、美味しいです!!!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] なぁに、まずは飛ばして見ればエエねん。 [気になる点] 里見の謎? ・・・うっ、頭が。
[一言] ところで・・・ふと思ったんですが 「もしかしてアイゼンファルドがいれば飛び島(浮遊大陸)にも行けるんじゃね?」 それとも、次元が断絶してるとかで特定の手段じゃないと上陸できないとかあるん…
[一言] 今は世界滅亡の危機だから中継基地の方が優先だろうけど、 落ち着いたら天空城案件でアイゼンファルドの力を借りたいとお願いして来る者が出てきそうだな。
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