454 伝説は続く
なんと、コミックス版9巻と外伝2巻、スピンオフになる『マリアナの遠き日』1巻が発売となりました!
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四百五十四
(これは何とも、予想以上の盛り上がりじゃのぅ……)
それはアルカイト王国民にしてみれば、ルミナリア帰還より二十年ぶりの奇跡といってもいいほどの大事件であった。
いったい国民達が、どれほどまでに九賢者の帰還を切望していたのか、沸き立つ者達の顔を見れば鮮明にわかる。
まさかといった驚きも多い。だがほとんどは歓喜であり、中には涙を流してラストラーダの姿を見つめる者までもいた。
そんな国民達を前にしたミラは、改めて実感する。この世界は、ゲームなどではなく現実になったのだと。そして九賢者という称号は、アルカイト王国に住む者達にとって、それほどまでに大きな存在になっていたのだと。
そのようにどこか感慨深く、それでいて自らの立場を省みて気を引き締め直したところだった。
何やら再び、どよめきが広まり始めていた。
また何か疑問に思う事でもあったのだろうか。ここまで盛り上がってなお、疑問の余地があるという事か。とはいえ確かに、あのライダーっぽいラストラーダを見ると、何となく冗談に見えてきてしまうのも仕方がない。
もしもあの場に立っているのがダンブルフであったなら、きっと一発だったのに。などと思いながら周囲の様子を窺ったミラは、そこでどよめきの理由がラストラーダではないと気づく。
では何かというと、それは実に単純な事。
「なあ、あの方がラストラーダ様って事は、一緒に出てきたあちらの方は……」
「確か、新しい孤児院の院長さんだったよね」
「って、ラストラーダ様と一緒に服装が変わっているような……」
「しかも、あの服は……」
「つまり……もしかして?」
そこに気付くのも当然の流れというものだ。
九賢者ラストラーダと共に出てきた女性。しかも仮の姿のラストラーダが副院長を務めていた孤児院の院長であり、煙幕の後にラストラーダと共に服装が変わっている。
そして何よりも、その服装がまたアルカイト王国民にとっては非常に覚えのあるものだったため、ざわめきはやがて期待へと変わっていく。
(ふむ、気づき始めたようじゃな)
あの穏やかな佇まいと聖母の如き微笑み、溢れ出る母性。加えて白のスカプラリオがデザインの基になっているアルテシアの賢者のローブは、なかなかに特徴的だ。それらが相まってか、ミラの周りから、ちらほらとアルテシアの名前が出始めた。
するとそんな囁き声に応えるように、ステージ上のアルテシアがいよいよ前に出てラストラーダよりマイクを受け取った。
やはりと一瞬沸き立つ観衆達だが、次の瞬間にはその声を待つように静まり返る。
そこへ、アルテシアの声が響いた。
「あら、皆さん覚えていてくださったのね。はい、私です。長い間不在にして、ごめんなさい。九賢者アルテシア、戻りました。これからよろしくお願いね」
彼女の穏やかで優しい声と慈愛に満ちた微笑みは、あっという間に国民達の心に染みていった。
それは、人間性の成せる業とでもいうべきなのだろう。観衆達は疑問を挟む余地もなく、その言葉をそのままに受け取ったようだ。
「アルテシア様ー!」
「万歳! 万歳!」
ラストラーダの時とは違い反応は迅速で肯定的。アルテシア帰還の報告は更なる歓声によって迎えられた。
その歓迎ぶりを前にして、嬉しそうに手を振るアルテシア。
そんなアルテシアを、そしてラストラーダも加え、これはとんでもない大ニュースだと大慌てになるのは取材陣席の者達だ。
今日のこの瞬間は歴史に残る一瞬であると確信してか、何度も何度もカメラのシャッターを切る。決して撮り逃す事など出来ないと、念には念を入れての撮影だ。
加えて、何人かが取材陣席よりどこかへと飛び出していった。きっと上の者に報告へ走ったのだろう。
今日の出来事は、どのような記事になるのだろうか。ミラはそんな事を考えながら、ふと思った。
(しかしまあ、アルテシアの早着替えっぷりにもびっくりじゃな)
煙幕の中での早着替え。それはラストラーダの提案であり、当然ながら大好きな変身を再現するための演出だった。
煙幕で見えないとはいえ、やる事は着替えだ。ラストラーダにしてみれば慣れた事であろうが、アルテシアもまたそれに負けず劣らずな早さで着替えたのだから相当である。
というのも、子供達を変身で楽しませていたラストラーダに感化されてアルテシアも習得したという事だ。
なお、ヒーロー的なあれこれの再現において、ラストラーダの追及ぶりは徹底したものがある。最後は二人揃ってポーズを決めてからの爆発演出で締めだ。
その完成度は見ての通り。ただ今回、盛り上がっているのは子供ではなく大人が大半であったが、二人の帰国発表の演出は成功したといってもいいだろう。
「さて、驚いてくれたかな」
そんな言葉と共にステージ上に戻って来たソロモンは、観衆を見回しながら悪戯っぽい笑みを浮かべる。
すると、その言葉に呼応するようにして拍手喝采が巻き起こった。九賢者二人の帰還を祝福する喜びの声だ。また、その中には少しばかり黄色い声も交ざっていた。ソロモンの微笑に胸を打たれたファン達の叫びである。
「まあ、もう一度驚く事になるかもしれないけれどね」
色とりどりの声が飛び交う中、今度はルミナリアが笑う。となれば再びファン達が声を上げ、メインステージは更なる熱に包まれていき、同時に『もう一度』とはどういう意味かとざわめき出す。
九賢者のラストラーダとアルテシアが帰還したというビッグニュースの後でありながら、驚く事とはいったいなにか。どれほどのものなのか。
期待が膨らんでいく中で、そこから導き出される可能性が少しずつ集約していき真実に近づいていった時だ──。
「では、続いて発表しよう」
いよいよといった顔でソロモンが告げると同時に、再び砦の門が開いていった。
直後、予想合戦で盛り上がっていた観衆達はぴたりと口を止めて、その門に注目する。
固唾を呑んで見守る門から出てきたのは、三つの人影。もしやまさかと期待が満ちていく中で、その人影を光が照らし出した。
瞬間、皆の目に映った姿。それは観衆達の期待に応えるばかりか、もはや奇跡すら見せつけるかのようであった。
ステージ上に現れたのは、カグラとソウルハウル、そしてメイリン。三人ともが、その象徴ともいえる賢者のローブを着用しての登場だ。
狩衣を基にしたデザインの服を纏うのは、カグラだ。艶やかな色遣いでありながら、白猫と黒猫、そして灰猫が大胆にあしらわれた賢者のローブは、正に彼女を象徴するといっても過言ではない。
また、その猫のデザインの愛らしさもあってか、子供用賢者のローブは現役のルミナリアに次いでカグラのローブがよく売れていたりする。
そのような理由もあってか認知度は高かった。
黒いコートとフードに紫のラインが目立つローブを纏うのは、ソウルハウルだ。更に銀の鎖が腰や肩に巻き付く姿は、誰もが一度は憧れた『カッコいい』を体現したものといえるだろう。
そんなファッションを堂々と着こなすソウルハウルは、その点においても大物なのかもしれない。
なお、どこか陰のある雰囲気もあってか一部の女性からの支持率が異常に高かったりする。
黄の道士服に狐面。それが九賢者メイリンとしての賢者のローブ姿であり、世間で知られるメイリンだった。
だが今回の彼女は、狐面を頭にずらして顔を出した状態での登場だ。たとえ素顔を知る者が少ないとはいえ、帰還の発表という重要な場面において顔を隠したままでは国民に真実味が伝わり辛い。
加えて、これから九賢者として国に落ち着くという意味を込めての顔出しである。九賢者メイリンとしての素顔が知られれば、おいそれと脱出出来ないというわけだ。
なお本人はそのあたりを、あまり把握していないようである。
ラストラーダとアルテシアの帰還。それだけでも大陸中を巡るほどの大ニュースであり、観衆達はその興奮冷めやらぬ状態だ。
そこへ追加で現れた三人。舞台上に並ぶその姿を前にして、そんな馬鹿なと声にならない声を上げる観衆達は、それでいて同時に、その三人が誰かという予想合戦を始めた。
とはいえ、予想するのは簡単だ。若者などルミナリア以外の九賢者を見た事がない者は多いが、九賢者の物語や肖像画などは有名であるため答えを導き出すのは早かった。
「猫、猫、猫……あの方はカグラ様ね。絶対、カグラ様」
本物は知らずとも特徴のあり過ぎる賢者のローブは有名で、カグラは瞬間で特定されていた。猫模様の主張が激しい賢者のローブであるがゆえ、わかりやすさは随一といってもいいだろう。
「黒寄りの服だからヴァレンティン様と見間違いそうになるけど、あの気だるそうな雰囲気は、間違いなくソウルハウル様だ!」
誰かが的確にソウルハウルの特徴を見破り正解を導き出す。ソウルハウルとヴァレンティン。中二病を患う二人の方向性は似ているが、片や不死っ娘愛好家、もう片方は根が真面目であるため、見分けるのは難しくない。
「派手さはないが、あの達人然とした雰囲気と佇まい。あのお方こそ、メイリン様その人だろうな。しかしまた……あんなに可愛らしかったとは」
そしてメイリンもまた、あっという間だ。
しかもこれまでにおいて、メイリンの素顔がわかる資料などがなかった反動とでもいうのか。狐面を外したメイリンの、実は美少女でしたという素顔に惚れ込む者達がちらほらと出始めていた。
しかも当のメイリンがにこやかな笑顔を浮かべているため、尚更可愛らしさは割増し状態だ。
その理由は、この後に身内で行う発表記念パーティのご馳走を期待してのものだが、観衆からしたら国民達に向けられたものだと思うわけである。皆の喜びようといったら相当であった。
そうした中、そろそろ頃合いかとばかりにルミナリアがカグラにマイクを手渡した。
「えーっと、はい、カグラです。遅くなりましたが帰ってこれました。これから頑張っていくので、よろしくね」
五十鈴連盟の総帥などという大層な役目をこなしていた彼女だが、根っこの方は、あまり人前に出るのは苦手というタイプであった。
そのためか観衆達の視線全てが集まるこの場において、少しばかり落ち着かない様子である。
その帰還を喜ぶ声が響く中、カグラはさっさと挨拶を済ませるなり、とっととマイクをソウルハウルに押し付けた。
「ソウルハウルだ。まあ、なんだ。留守にしてて済まなかった。これからは大丈夫だ」
ソウルハウルもまた、挨拶は手早くであった。ただ彼の場合はカグラと違い、単純にコミュニケーションが苦手という類のものだ。しかも、苦手なんだろうなという雰囲気が彼の所作や表情から十分に読み取れるレベルであった。
その見た目や肩書などからは、あまり想像出来ない性質といえる。ただそれもあってか、帰還を喜ぶ声に交じり黄色い声援があがっていたりした。ソウルハウルの冷たい目と態度のギャップに、何かを擽られたようだ。
早くここから下りたい。ソウルハウルは、そんな感情をありありと浮かべながらメイリンにマイクを手渡す。
「私は、メイリンヨー。アルカイトに帰って来たネ。この中に強い人はいるカ? いつでも勝負するヨ! いつでも待ってるネ!」
二人とは違ってメイリンはというと、それはもう堂々としたものだ。
むしろ堂々とし過ぎているくらいだ。注目が集まっているのをいい事に、早速勝負相手の募集を始めたではないか。
するとどうだ。九賢者の帰還で大いに沸く観衆達は、そんなメイリンの呼びかけで更に盛り上がり始めたのだ。
それもそのはず。何といっても、既に伝説の域にあった九賢者と勝負が出来るというのだから当然であろう。
腕に覚えのある者、九賢者に憧れる者、己を試したい者など。九賢者の強さを直に味わえる機会など滅多にないと、その目を輝かせていた。
だが、流石にそう簡単にもいかないというのが九賢者という立場でもある。
「はい、今のは彼女なりの冗談みたいなものだから、あまり本気にしちゃダメよー」
困った顔でメイリンからマイクを取り上げたルミナリアは、すぐさまそのように釘を刺した。
今後はメイリンの意思もそれなりに尊重する事にはなっているが、そんな無差別に募集出来るようなものではないからだ。加えて九賢者としての仕事がこれから増えていくため、いつでもなんて事はまず不可能である。
だからこそ即座に訂正したルミナリア。また内容が内容であったため観衆達の理解も早く、少し残念そうながらそれも当然かと納得した様子であった。
だが当のメイリンはというと、不満丸出しで唇を尖らせて抗議の構えだ。修行の旅に出られる機会が激減し、強い者に会いに行く事が出来なくなった今、ならば来てもらおうというメイリンの策略。
しかしそんな希望も、ルミナリアの一言で無に帰した。強者が我こそはと勝負しに来てくれる望みは失われたのだ。
とはいえルミナリアは、そんなメイリンの扱いをよく知っていた。
「ほら、これからは俺とかダンブルフとか、時にはソロモンが定期的に付き合うから。そう悪くないと思わないか? 皆、昔よりもずっと強くなっているぜ」
そのように自分や他の奴らが相手になってくれるからと、ルミナリアがそっと耳打ちしたところでメイリンの表情は一変。すぐさま抗議の看板を下ろして「絶対約束ヨ」と答えるなり、それはもうご機嫌に引き下がった。
「というわけで、計五人。九賢者の帰還を、ここに証明しましょう!」
一先ず落ち着いたところを見計らい、ルミナリアは改めるようにしてそれを宣言した。
九賢者の帰還。ルミナリアの時から二十年の時を経て、遂に戻って来た九賢者。
舞台上に並ぶ五人と、ルミナリア。その姿をまじまじと見つめた観衆達は、その言葉を合図にして一気に沸き立った。
もはや、何度目になるかわからない大歓声と、歓喜の叫び。しかもただでさえ大ニュースになる九賢者帰還という出来事が、同時に五人だ。
それはもう、ここに集まった全ての者達の予想を遥かに超越した発表であった。
だからこそもあってか、その騒ぎは容易に収拾のつかない領域にまで突入し始めていく。
歴史を超えて、再び伝説が蘇ったと喝采に沸くアルカイト王国。それは時代が音をたてて揺れ動いているかのように響き、広がっていく。
「さて、諸君──今回の発表に付き合ってくれて感謝する」
あまりにも嬉しい情報が重なった事による瞬間的な感情の爆発。それを制御するのは難しいものだが、やはり王様の声というものには目に見えぬ特別な力というものが宿っているのだろうか。ソロモンが声を発したところで、騒ぎにまで発展しそうであったそれらが、静かに消え去っていったではないか。
「皆の声、私の心にもよく響いてきた。喜んでもらえたようで、嬉しい限りだ。建国祭の初日はここまでだが、明日も今日に負けず劣らずのイベントを用意している。しかも、ここの五人も参加するイベントだ。是非明日も楽しんでくれ」
暴走気味だった歓声は、そんなソロモンの言葉によって秩序を取り戻した。
流石は、我らの王様だ。アルカイト王国のソロモン王ここにありと、観衆達の声が響く。
それに手を振り返しながら、ソロモンは今日の建国祭初日の閉会を宣言したのだった。
さて、先週の宅配ご飯は、
バーミヤンにしました!
メニューは、台湾大からあげチャーハンと餃子をいきました!
罪悪感回避に、豆腐のバンバンジーサラダも一緒です!
思えばバーミヤンって初だったのかもしれません。
もしかしたら親戚の集いか何かで行っている可能性はありますが、記憶にはありません!
そんなバーミヤンは、
とっても美味しかったです!!!!
チャーハンといい餃子といい、王将しか知りませんでしたが
今後はバーミヤンも選択肢に入りましたね!
そして明日は
ガスト、バーミヤンと続いたらもう……
今から楽しみです!!




