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393 エギュールゲイド

書籍版14巻の発売日当日!

よろしくお願いします!

三百九十三



「一人ずつ、確実に葬ってやろう」


 黒い大剣を手に、じりじりと歩み寄ってくる悪魔。

 その正面に立つノインは「俺がいる限り、それは不可能だな」と答え、更に防御寄りへと構えを変える。


「いいぜ、やってみろよ」


 挑発的に返すのは、ゴットフリートだ。特大剣を肩に担いだまま、かかってこいとばかりに笑う。


「望むところネ!」


 むしろ一対一でもまったく構わないと希望するメイリンは、ギラギラとした目で悪魔を見据えていた。


「このスタージャスティス、いつでも相手になろう!」


 これでもかとポーズを決めるラストラーダは、いよいよマスクも被って決戦モードだ。


「ああ、素晴らしい気迫だ。だからこそ──」


 居並ぶ猛者達を前にして闘志を漲らせていく悪魔。その目が、戦士としての色に染まっていった時だ。

 何かが微かに響いたと思った数瞬後に、それは激しい轟音を伴って悪魔の背後にまで到達した。


「──ぬっ!? お、おおおおぉぉぉ!」


 唐突に膨れ上がった気配に振り返った悪魔は、目と鼻の先にまで迫ったバロンの角を咄嗟に受け止めた。

 けれども、その重量と速度による衝撃は生半可なものではなかった。不意を突かれながらも、しっかりと腰を沈めて受けた悪魔を軽く吹き飛ばしたのだ。

 しかもそれだけでは終わらない。勢いの乗ったバロンは雄叫びと共に今一度突進していった。

 その速度はバロンの巨体からは想像もつかぬほどであり、瞬く間に悪魔に追いつき、次にはこれを角で突き上げた。


「おーおー、いつ見てもとんでもない暴れっぷりじゃのぅ」


 バロンによる怒涛の猛攻。それは、守りだけでなく己すらも捨てた決死の特攻だった。

 肉体の限界を超えた力を発揮すれば、そのリスクは全てが己に返ってくる。

 だが、召喚時は別だ。術式に組み込まれた防護の力が、それらのリスクを肩代わりするからだ。


「何とも重い一撃だ……!」


 次には手にした剣でその角を受け止めた悪魔だが、勢いは殺しきれずに宙を舞う。

 ただ、それでいて達人染みた反応を見せる。更に追撃をかけるべく宙へ跳んだバロンを受け流すと共に、強烈な斬撃を決めたではないか。

 その一撃で防護を削られ強制送還となるバロン。それでいて彼は、とても満足げであった。

 全力全開で暴れるのを好むバロンは、限界を超えるか途中で反撃を受けるなりして強制送還となるまでがいつも通りなのだ。


「まったく、愉快な獣よ」


 光の中に消えていくバロンを見送り、好戦的なその気概は悪くなかったと悪魔は笑う。

 そんな、嵐が過ぎ去ったようにも感じられる僅かな間の事だ。

 バロンの圧倒的な存在感を持つ黒い巨体。だからこそ、それは同時に何かを隠すための壁にもなっていた。


「クリスティナスラーッシュ!」


 強制送還の光の中より飛び出したクリスティナが、涙目で悪魔へと斬りかかったのである。

 それは、二段構えの不意打ちだった。迷彩マントをその身にまとい、静寂の力で隠した聖剣を背に、暴れるバロンの長い毛に潜んでいたクリスティナ。

 何度も振り落とされそうになりながら必死にしがみつき耐え抜いた彼女は、その努力もあって、これ以上ないくらいに完璧な一瞬の虚を突いた。

 凝縮したマナが炸裂するクリスティナの必殺剣。その一撃は、クリスティナというイメージに反した威力を秘めたものだ。

 振り下ろされた聖剣は、悪魔を地へと叩き落す。

 その衝撃は鮮烈であり、悪魔が地面に衝突すると周囲一帯が地面ごと揺れた。

 ただ、強烈な閃光と膨れ上がったマナの爆発を伴う技であるためか、クリスティナもまた近距離で反動を受けて「あーれー」と空を舞った後、《軍勢》の近くに墜落していく。

 バロンに続けとばかりな、特攻の一撃だった。


「ああ、流石は戦乙女か。なかなかの威力だ」


 そのような言葉と共に、抉れた地面からむくりと悪魔が起き上がった。

 見た目は、これといって何事もなかったかのようである。その態度には、まだまだ余裕が見て取れた。


「うっそーん……」


 彼女にとって最大の技である、クリスティナスラッシュ。それを以てしても掠り傷程度な悪魔の姿を目にして、クリスティナは愕然とした顔で項垂れる。


「よもや、クリスティナスラッシュを受けてなお、あの程度とは。まったく公爵二位ともなると、つくづく厄介じゃのぅ……」


 悠然とした足取りで近づいてくる悪魔を見据えながら苦笑するミラ。

 レイド級の相手にだって通用するほどの威力を秘めたクリスティナスラッシュ。しかも当時より更に研鑽が進んだ今のそれを受けてなお、平然としているときたものだ。

 いったい、どれだけの攻撃を与えれば倒せるのか。やはりグランデ級は途方もないと、ミラは気を引き締め直しながらノイン達と合流した。


「まったく、魔獣がこっちに零れてきたと思って焦ったぞ。前にも増して酷い暴れっぷりだったな」


「しかしまた二段構えとは豪快な不意打ちだな。そのアウトローなヒーローぶり、俺は嫌いじゃないぜ」


「前に見たより、どっちもまた強くなっていたように見えたネ。今度、手合わせさせてほしいヨ!」


 合流するなり、バロンとクリスティナの奮闘ぶりについて触れるノイン達。

 ミラは、「さほどダメージはなさそうじゃがな」と肩を竦めながら答えた後、ちらりとクリスティナの方を見やってから「うむ、構わぬぞ」とメイリンに答えた。

 メイリンとの手合わせ。それはそれは、よい訓練になるだろうと。


「これは驚いた。よもや、こうも早く魔物どもが全滅するとはな」


 悪魔は余裕のある態度でミラ達の前に立つと、大量の魔物達の死骸が転がる方を確認しながら呟く。

 ミラの実力を見誤ったと。ただ、それでいて悪魔に焦ったような様子は一切見られない。

 それどころか、都合がいいとばかりな態度ですらあった。

 そしてその理由は、直ぐにわかる事となる。


「では、そちらも次の段階に移すとしようか」


 そう言った悪魔は、にたりと不気味に笑った。

 するとどうした事か。突如として、島全体が揺れ始めたのである。


「何をするつもりかは知らぬが、簡単にはやらせぬぞ」


 それは地震のような揺れであったが、悪魔の言動からして、かの者が何かをしたに間違いはないだろう。

 そう確信したミラは、だからこそ再び仕掛けた。

 飛来したのは、一筋の閃光。それは遠くより行進してくる《軍勢》の中より放たれた、エレツィナの矢だ。

 特別な術式の施された矢は容易く音の壁を突破して、狙い違わず悪魔の頭に直撃した。

 見て回避など出来ないだろうほどの、完璧な一矢。

 だが、その威力を証明するかのような衝撃音が響く中、ミラは眉根を寄せる。

 エレツィナの矢は悪魔のこめかみに突き立ったものの、僅かな傷を穿っただけ。その鏃は表皮を貫いてはいなかったのだ。

 直後にエレツィナの矢は、紅蓮の炎を伴って爆散する。

 それが深くまで刺さっていたなら相当なダメージが期待出来たところだが、悪魔の頑丈な肉体の前には無意味であった。


「点の攻撃でも、この程度とはのぅ……」


 どれだけ堅い身体なのかと呆れるミラ。

 特殊合金製の矢と、威力を底上げするための術式。それは現段階においてエレツィナの必殺技ともいえる一撃だったが、公爵二位が相手では、これもまた掠り傷程度のようだ。


「そう焦るな。ここからがいいところなんだ。わかるだろ」


 悪魔は無粋だとばかりに笑いながら、右手を振り上げる。

 すると直後に、見える範囲のあちらこちらから黒い靄のようなものが浮かび上がってきたではないか。


「なんじゃ、あれは……」


「あの黒いの、どこかで……」


「ん? なんか見覚えがある感じだな」


 いったい何事だとミラが警戒したところで、ノインとラストラーダが反応を示す。

 徐々に湧き出てくる黒い靄。中でも特にミラが全滅させた魔物の群れがいたあたりは、もう真っ黒とでもいうほどに濃い靄で溢れていた。

 その正体は何なのか。ミラが注意深く探っていたところで、ノインが一つの可能性を口にした。「たぶん、魔の属性力だ」と。


「ああ、この感じは、あの場所にあったものと同じだ」


するとラストラーダもまた、同意するように答えた。その言葉からして、彼はそれに見覚えがあるようだ。


「魔……じゃと?」


 魔の属性力。確信を持った様子の二人に、どういう事かとミラが問えば、ラストラーダがそれに答えた。

 島の捜索中に見つけた謎の部屋。レッサーデーモンと遭遇したそこには、魔物などの死骸から魔の属性力を抽出する装置があったという。

 その装置の器に残っていた、黒い物質。魔の属性力を凝縮したそれと、周囲に浮かぶ黒い靄から感じる気配が同じだそうだ。


「そのようなものを、これだけ集めて何をするつもりじゃ……」


 それを吸収でもしてパワーアップしようというのか。

 そのような方法もあるのではと思い付いたミラだが、見ると悪魔はただ悠然と構えているだけだ。黒い靄をどうしようという素振りは一切ない。

 また先程のような不意打ちを警戒しているのだろう。事が済むまでは守りに徹するつもりらしく、隙は見当たらなかった。


「なんだか、あっちに向かっているネ」


 メイリンが言うように、漂う黒い靄は一定方向に流れていた。


「ふむ……思えば、あの場所だけ山になっておるな」


 このまま放っておけば黒い靄が行き着くのは、島の西側。

 岩壁によって閉鎖された島の中。荒野が広がるその西側にだけ、小さな山があった。

 距離にして三百メートルほどの位置にある山。一見すると、これといって特徴もなく、気になる要素など見当たらない、ただの山だ。

 しかも高さは、五十メートルそこらといった程度の小山である。

 そんなところに向かっていく魔の属性力。

 それにどういった意味があるのか。凝縮してパワーアップでも図るのか。何か大規模な術の触媒にでもするのか。

 詳細は不明だが、悪魔の企みである以上、ろくな事ではないのは確かだ。


(どれ、ここは一つ──)


 わざわざ待っている義理もない。悪魔本体に隙がなかろうと、とれる手段はある。

 と、そんなミラと同じ考えに至った者がいたようだ。次の瞬間に、城壁備え付けの砲塔全てが一斉に火を噴いた。


「ぬぉぉ!?」


 悪魔をどのように出し抜こうかと気を巡らせていたミラは、唐突に鳴り響いた号砲に思わず声を上げる。

 それと同時に、悪魔が忌々しげに山の方へと目を向けた。

 ミラが何かをしようと企んでいる事を見抜き注意していたからこそ、まったく違う方向からの横槍に対応が遅れたようだ。

 城壁より放たれた数十発の砲弾が小山に着弾すると、それは一斉に爆炎を上げた。

 耳をつんざくほどの爆轟。そして衝撃。小さな砦ならば軽く消し飛んでしまうだろう一方的な破壊の力が炸裂した。

 それは、装置にしろ術具にしろ、何かあったところで跡形もなく消し飛んでしまうだろう飽和火力であった。


「なんじゃ……あれは……」


 もうもうと上る灰色の煙と粉塵。そこから僅かにちらつく隙間より覗くそれを目にしたミラは、そんなまさかと声を漏らす。


「おいおい、嘘だろ……」


 ノインもまた、確認出来た一部から、その正体を推察したようだ。頬を引き攣らせながら「勘弁してくれよ」と苦笑気味に呟く。


「まったく、無粋な。この美学を理解出来ないのか」


 ため息とともにそんな言葉を吐いた悪魔は、翼を一つ打って風を生み、煙と粉塵を吹き飛ばした。

 晴れた視界に映るのは、崩れ吹き飛んだ小山と異形の姿。

 そう、小山はただの地形などではなかった。それは悪魔がとっておきだと称する魔獣の隠し場所であったのだ。


「前に見た事あるヨ! 凄く凄く強かったやつネ!」


「これまた大物が出てきたな。いいぜ、ボス戦はこうでなくっちゃな!」


 その姿を目にして、一気にテンションを上げるメイリンとゴットフリート。戦闘狂に片足を突っ込んでいる二人にとって、この状況は望むところのようだ。

 だが残りの者達は、一様に表情を顰めていた。

 それもそのはず。吹き飛んだ小山の下より現れたのは、数十メートルにも及ぶ巨体を誇る大魔獣、エギュールゲイドであったからだ。

 大魔獣エギュールゲイド。四本の足は大木のように太く、爪は岩のように巨大でいてそこらの金属よりも硬い。

 姿は狼のように雄々しく、それでいてサイの如き角を持っていた。力を証明するかのような立派な角だ。

 身体を覆うのは限りなく黒に近い青の体毛であり、夜の闇を想起させる事から、月影の支配者などと呼ばれる事もある。

 その強さは巨体からしてわかる通りに圧倒的であり、なんと公爵二位の悪魔と並ぶグランデ級だった。


「何とも骨が折れそうじゃな……」


「ああ、一本や二本じゃあ済まなそうだ……」


 公爵二位を相手するのにもギリギリだというのに、そこへエギュールゲイドまでも加わってしまっては堪ったものではない。

 状況によっては、撤退すらも視野に入れる必要があるだろうと身構えるミラ達。

 ただ皆が緊張の面持ちでいたところ、メイリンがその違和感に気付いた。


「どうしたネ、動かないヨ?」


 勝負だ勝負だとばかりに闘志を滾らせていたメイリンが、はてと首を傾げたところで、ミラもまたそれに気付いた。


「あれは……もしや死んでおるのか……?」


 そう、崩れた小山の中から出てきたエギュールゲイドは、ただ露出しただけといった状態のまま動く気配がなかったのだ。

 それはまるで、暴いた墓から死骸が出てきた、などという状況に近いものといえた。


「ああ、本当に無粋な。まったく……これでは絶望も半減ではないか」


 もしや先程の砲撃で。などという考えがミラの脳裏を過ったところで、悪魔が忌々しげに呟きながら城の方を睨む。

 その様子からして、砲撃の事を言っているのは確かだとわかる。

 ともなれば、やはり。そう思ったミラだったが、エギュールゲイドについてそれなりの知識があるゆえに、それはないと考え直す。

 あの砲撃程度で倒せるような相手ではないからだ。

 つまりはあのまま、エギュールゲイドは死骸のままそこにあったと考えるのが妥当だ。

 単純に考えれば、ただの墓である。けれども思わせぶりな悪魔の態度からして、必ず何か秘密がありそうだ。エギュールゲイドを動かすための秘密が。

 事実彼は、演出を邪魔されて憤っているだけに見え、今も何かを待っているように感じられた。

 加えて、未だ健在のまま、じわじわと集まっていく黒い靄。

 これで終わりなどという事にはならないと結論するには十分な材料だ。


「ノインよ、悪魔の足止めを頼む」


 ともすれば、即ち現時点では、まだ企みの途中という事でもある。

 つまりは悪魔の企みを阻止出来る可能性が、まだあるわけだ。グランデ級二体同時などという事態を避けられる可能性が。

 そのように考えたミラは、悪魔の妨害を防ぐようノインに頼み、直ぐに動き出した。


「ん? ああ、わかった」


 急な頼みながら、ノインもまた可能性については考えていたのだろう、その反応は迅速だった。

 ミラが動くと、それを警戒していたとばかりな反応で悪魔も動いた。

 そこにノインが割って入ると、即座に《鎖縛の楔》で捕らえ、一対一の状態へと強制的に引き込んだ。


「おのれ……また、これか!」


「ああ、もう一度付き合ってもらおうか」


 ノインが健在である限り、遠くまで離れる事が出来ない。再びその状況に引き込まれた悪魔は、苛立たし気に叫ぶや否や斬りかかってきた。


【聖騎士技能:鋼鉄の身体】


 その場から動けなくなる代わりに、強靭な防御力を得る聖騎士の神髄ともいえる技能。それによってノインは、悪魔の猛攻を耐え続けた。

 剣で、大盾で、時にその身体で受け止める。少しでも時間を稼ぐために。











先週のチートデイにて、次のコンビニグルメシリーズを食べてみました。


お母さん食堂というやつです。

こちらは、何やら種類が凄いですね。

ちょっとしたおつまみから、がっつりなご飯のお供まで色々ありました!


そんな中から今回選んだのは……


ハンバーグと肉じゃがです!

そう、二つです!

いやはや、かなり贅沢にいっちゃいました。


ただ……

肉じゃがは……個体差とかあるのですかね。味は良かったのですが、肉の量がおまけ程度くらいにしか感じられずという……。

肉じゃがっていうのは、本来こんなもんなんですかね。


ハンバーグは、もう安定の美味しさでした!

しかも、もう一つ上のお高いハンバーグもある模様……。


次は……!

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― 新着の感想 ―
[良い点] クリスティナはスラッシュした後バロンのように一端退場でも 面白かったかなと思いました。 それにしても悪魔強いですね。 攻略後半でぼろぼろだったとしてもマキナガーディアンに 効いたスラッシ…
[良い点] 撤退も視野レベルになるほどの強敵!アツくなってきましたね!!
[一言] 14巻ありがとうございました。毎回書き下ろしが最高です。
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