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150 三幹部尋問

しつこく書きましょう。

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百五十



 精霊王の登場で別の騒ぎが生じたものの、キメラクローゼン討伐宣言は恙無く終了した。その宣言後、ミラ達討伐隊一行はセントポリーの首相に招かれ、食事会に参加する運びとなる。

 首相官邸の庭では、バイキング形式の豪華な食事会が始まっており、そこにはセントポリー貿易国の重役もまた顔を揃えていた。

 ちなみにこの首相及び重役は、表の者。つまりセントポリーの創立者をどこかの善良な貴族と信じ、その代役として国のために責務を全うしていた者達である。

 そのためか皆と同じく、キメラクローゼンは憎むべき悪だという認識を持っていた。ゆえに今回の招待は、純粋に国を預かる者としての責任と、真偽の程をしかと確かめるという意味合いが込められているようだ。

 討伐隊として集まった、錚々たる顔ぶれもあって、人々はキメラクローゼン討伐を真実として受けとめた事だろう。だが国という単位となると、やはり証拠というものが必要で、有名人が顔を揃えていても鵜呑みにする事は出来ない訳だ。

 この昼食会は、そのあたりの事を踏まえてのものであり、討伐隊の者達もまた、それを承知でここにいる。

 だが若干一名、そんな事は関係ないとばかりに、テーブルからテーブルを渡り歩き、豪華な食事に舌鼓を打って、食事を満喫する者がいた。

 そう、ミラである。国やら戦後処理云々は全て五十鈴連盟に任せ、じっくりと語り合うアリオトと首相の傍や、それを見守るジャックグレイブ他数名の正面を駆け抜けて、次の目標であるローストビーフに飛びつく。


「うむ、これも美味い!」


 代役とはいえ流石は首相というべきか、食事会に並ぶ料理はどれも一級品であり、ミラは一つずつつまんでいくなどという、実に贅沢な楽しみ方をしていた。

 そんな時である。


「おじいちゃん、お疲れ様。下から見てたよー。精霊王を呼んじゃうなんて凄いね」


 料理を山盛りにした皿を手にしたカグラが、実に機嫌良さそうに声をかけてきたのだ。


「まったく、紹介するならするで初めに言っておいてくれればよいものを」


 振り向いたミラは不機嫌そうに言って、カグラを睨みつけた。紹介された事は完全に不意打ちであり、その時に感じた焦りを思い出したようだ。


「だって、最初にそう言ったらおじいちゃん逃げちゃうでしょ?」


 カグラは、やれやれといった具合に肩を竦めて、呆れたように笑ってみせた。

 ミラは、それを聞いて考える。初めから、セントポリー上空で大きなスクリーンに姿を映し、民衆に向かって討伐隊の一人だと自己紹介するように、などと言われていたら、果たして飛空船に同乗していただろうか。

 結果、その言葉は確かにその通りのようだったらしく、ミラは何も言い返さぬまま、ただ一言「確かにのぅ……」と呟いた。


「しかし、あれじゃ。そもそも、キメラの討伐に説得力を持たせるためのパフォーマンスだったのじゃろう? そこで無名のわしを紹介する必要などなかったと思うがのぅ」


 盛大に行われた勝利宣言は、街に潜伏しているキメラクローゼンの残党を刺激し行動を起こさせるためのものであり、それを信じさせるだけの材料は既に揃っていた。ゆえに冒険者としては無名のミラが、しゃしゃり出る必要はないのである。

 だが実際は、なみいる高名な冒険者達の締めとしての紹介だった。それになんの意味があるのかと疑問を呈するミラだったが、まさかの事情をカグラが語る。

 それは、ソロモンに頼まれたから、というのだ。いずれはダンブルフに代わり九賢者の地位に据える事になるため、その箔付けの一環だという事らしい。


「わざわざルナティックレイクにおいてあったうちの支部を通してのお願いでね。支部長がありえないくらい緊張していたわ」


 なんだかんだいって、カグラもまた九賢者の一人だ。自国の未来のためならばと、快く引き受けたそうだ。楽しそうだからという理由では絶対にない、とカグラは念を押す。


「またあやつの策略か……。まあ、大々的に召喚術の宣伝が出来たから良いが」


 高名な冒険者達と同じ舞台に召喚術士として並んだのだから、相当に召喚術の印象を改善出来ただろう。そう考え納得する事にしたミラは、テーブルに手を伸ばし、新鮮に煌く刺身を口へ運んだ。「うむ、美味い」


「それよりも、精霊王だよ。あれは本当に凄かった! 精霊を害するキメラクローゼンを討伐した事を、精霊王が認めてくれたようなものだから」


「あー、あれじゃな。わしもびっくりじゃった」


 少し興奮気味のカグラを尻目に、ミラは次から次へと刺身を皿に移していく。どうやら気に入ったらしい。


「あれのお陰か焦ったんだろうね、既に何人か残党が網にかかってさ、作戦は予想以上の大成功だよ」


 カグラは実に嬉しそうに笑うと、「で、あれって新しい召喚術?」と言って分かり易く興味を示す。


「あれは、召喚術ではない。勝手に出てきただけじゃ。まったく、出てくるなら一声かけてほしいものじゃよ」


「ふーん、そうなんだ。でもまあ、それでも充分に凄いよね」


 むしろ一番驚いたのはミラ本人だろう。だがそんな事はお構いなく、カグラは「流石おじいちゃんだよねー」と、どこかご満悦気味に呟きながら、テーブルの上のローストビーフを手にした皿の上に盛り付け、その上にまた刺身を載せた。

 そんな、随分とカオスになっていくカグラの皿に眉を顰めながらも、ミラは変わってないなと、少しだけ微笑んだ。



 昼食会が終わったあとの事。キメラクローゼンがもたらした影響や、これからの事についての相談といった細かい話し合いはアリオト等に任せて、ミラとカグラは五十鈴連盟のセントポリー支部を訪れていた。その地下に監禁しているキメラクローゼンの幹部達から情報を引き出すためだ。

 なんの変哲もない民家のような支部の地下にある堅牢な造りの部屋。

 記録係として支部長のマティを伴いミラ達がそこを訪れた際、初めに捕縛していたキメラクローゼンの幹部アイザックと仕事人のジャマルが、追加で放り込まれた最高幹部の三人に睨まれ、隅の方で萎縮していたりもした。

 だが、ミラとカグラを見るや否や、『もうお前たちは終わりだ』とばかりに態度を大きくして、『先生、やっちまってくださいよ』とでもいうかのようにミラ達の方へ擦り寄っていく。


「お主等も裁かれる側じゃろうに。馬鹿者が」


 そう言ってアイザックとジャマルに拳骨を落としたミラは、改めるようにして最高幹部の三人を見据える。本来、キメラクローゼンの最高幹部は五人だが、まずその一人。鬼姫の依り代となっていた少女は、現在、精霊飛空船の船内にある救護室で安静に寝かされている。カグラが祓った鬼の怨霊は、随分と深くまで少女を支配していたようで、その反動か、暫くは目を覚まさないだろうという事だ。少女の正体などについては、当分は不明だという。

 ここにいないもう一人の最高幹部は、その死亡が確認されている。空の民の男が復讐を遂げたのだろうという見解だった。

 運よく、または運悪くミラ達と戦った残りの三人が今、こうして囚われ尋問を待っているという状態であった。初見の頃の勢いはどこへやら、三人ともミラ達を見るなり表情を強張らせる。

 そしてミラと戦ったグレゴリウスは、何かを覚悟した武士のような面持ちで「やるなら早く済ませろ」と口にし、少しだけ震えた。

 セロと戦った超重装の男は、当然だが武装は全て剥ぎ取られている。最初の印象とは違い細身であり、最初の印象通りに筋肉質だ。そんな彼は、「な、何をされようと、口は割りませんぞ」と強気の姿勢だ。しかしそれは言葉だけ。四肢の末端が小刻みに震えていた。

 最後の一人。こんな奴いたっけと、ミラ達が若干思い出すのに時間がかかった男。あっという間に倒された最高幹部の下っ端は、恐怖を顔に貼り付けて「何でも話すから殺さないでくれ」と震えていた。

 ミラとカグラは、そんな三人の様子に、どことなく違和感を覚えた。これからやる事といえば、カグラの術を利用した強制的な自白尋問だ。何もかも包み隠さず話してしまうというのは恐ろしい術なのかもしれないが、とはいえそれだけの事でもある。

 洗いざらい話すだけ。今はまだ、殺さないで、などという場面ではない。ただそう思ってしまうほど、ミラ達の力に恐怖したというのか。死に直面したような表情を浮かべる三人の態度に、むしろ困惑するミラとカグラ。

 と、そんな時。ミラは、不意に視界の隅に入ったアイザックとジャマルの様子に注目した。その二人は真一文字に口元を結び、それでいて楽しげに頬を緩ませ、まるで何かを堪えるかのように小さく肩を震わせていたのだ。


「のぅ、お主等。随分と楽しそうじゃが、何か良い事でもあったのかのぅ?」


 アイザックとジャマルの前にしゃがみ込み二人の髪を引っつかんだミラは、ドスを利かせた声でそう耳元で囁いた。これに得体の知れぬ恐怖を感じ怖気だった二人は、


「俺達はただ、教えてやっただけだ」


「ああ、そうだ。これから始まる尋問についてな」


 と言って視線を彷徨わせる。これから始まる尋問。それは、カグラの陰陽術による強制自白だ。催眠状態で、何でもかんでも話してしまうというだけで、苦しみなど微塵もない。それを知ったのなら、尚更死の恐怖に怯える必要もないと思えるが、最高幹部の三人はカグラに畏怖の視線を向けていた。


「その割には、随分と三人の反応がおかしな気がするのぅ。本当にそれだけか?」


「……だってあいつ等、俺達が情報流したからだって怒鳴ってきたからさ。こう、どんな奴だって話しちまうって、な」


「どれだけ鍛えてもウズメ姐さんの尋問には逆らえないって教えてやった。……もし逆らえば、生きたまま腹を裂かれ、想像を絶するほど残酷に殺されるって、よ」


 ミラが改めて訊くと、アイザックとジャマルは術など必要なしに自白する。どうやらミラ達が来るまでの間に、二人は相当いびられていたようだ。その仕返しとばかりに、脅しまくったらしい。


「まったく。子供のような事を……」


 ミラは呆れ気味にため息をもらし、もう一度二人に拳骨を落としてから、再び最高幹部の三人に向き直った。アイザックとジャマルは涙目になりながらも、どうした事か、少しだけ嬉しそうだ。

 と、そんなやりとりをしたあとだった。


「なるほど。こいつ等になら、そういうのもアリかもね」


 カグラが薄っすらと笑みを浮かべ、そう呟いたのだ。

 瞬間、地下室全体を死の気配が支配する。それはカグラから溢れ出した明確な殺意によるものであり、その呟きが冗談ではない事を窺わせた。

 穏やかに見えても、やはり内面には煮えたぎる復讐心を秘めていたのだろう。


「まあ、ほれ。そう殺気立つでない。この世界の法に委ねる事に決まったのじゃろう。まずは、今するべき事をしようではないか。のぅ?」


 ミラはそう言ってカグラを優しく抱きしめ、あやすようにそっとその背を叩く。すると徐々に気配は和らいでいき、場の空気は平穏を取り戻す。その様子に最高幹部の三人は顔面蒼白にしたまま、助かったと安堵する。アイザック達も自分は運が良い方だったと認識して、今一度震えた。


「そうだね。ごめん、おじいちゃん」


 カグラは、ただ小さくそう言って仄かに微笑む。まだ少しだけぎこちないが、時間が解決するだろう。きっとカグラなら大丈夫。ミラは、その笑顔を見つめながら「構わぬ」と笑った。

 その後、カグラの術によって、最高幹部の三人から知る限りの情報を聞き出した。その情報を同席していたマティが書類に纏めていく。計り知れないカグラの一面を垣間見たからか、マティはきびきびと精力的に調書の作成に尽力したのだった。



 最高幹部の三人から引き出せた情報は、流石と言うべきか、相当に深く広くにまで及んでいた。

 この尋問は、アイザックやジャマルの時と違い、完全催眠状態で行われた。その理由は、彼等が異様な信仰心を有していたからだ。

 その信仰対象は、組織の頂点、鬼姫である。キメラクローゼンとは、ある種の宗教団体に近い側面もあったのだ。

 そんな彼等が掲げた理念。それは、『世界を精霊の手から人の手に取り戻す』というものだった。

 人々の糧となる自然の恵みは、精霊によって管理されている。つまり人々は、精霊の温情によって生かされているという事だと。

 もしも精霊が人々を見限り自然の恵みを制限したら、人々は為すすべなく死に絶える。

 そんな、精霊に命を委ねたような状態のままでいいのか。人々は自らの力だけで命を繋いでいけるようになるべきではないのか。

 棲み分ける事では温い。

 人々は弱い存在だ。縋るものが残っていては、結局かつてに立ち戻る事となるだろう。

 ゆえに、精霊を駆逐する必要がある。

 それこそが、人の未来に必要な事なのだ。

 と、このような考えが幹部達の根底にあったようだ。

 それは余りにも身勝手な主張だった。

 人こそが一番である。一部の者にとってみれば、その言葉は実に甘美な響きであっただろう。しかし誰でも分かるように、それは余りにも傲慢な考えだ。

 すると、この件に関してアイザックが一言口にした。その三人は何を言っているのだと。

 アイザックによると、そんな宗教染みた話は聞いた事がないという。彼にとってキメラクローゼンとは、精霊の力を利用し金と力が手に入る美味しい組織、という程度の認識だったそうだ。

 ついでとばかりにジャマルにも訊いてみたところ、彼も似たような認識だった。

 その点を深く追及したところ、一つの真相に行き着く。それは、グレゴリウスと超重装の男がかつて所属していた、考古調査団が関係していた。

 まず第一に、考古調査団が結成された理由について。

 大陸北西部の荒野に眠る数多くの遺跡を発掘調査するためというのが公式に発表された理由だが、それは半分偽りであるらしい。

 考古調査団が秘めた真の目的とは、かつてこの地に存在していたと伝わる天使の都を発見する事だったという。そして、そこにある力を手に入れるのだと。

 調査団の決定を指示した者達の意図は、彼等にも伝えられていないという。だが、事は世界の存亡に関わるとだけ聞かされていたようだ。

 そうして調査を進める事、幾年月。グレゴリウス達はセンキの埋葬地にて、鬼姫と出会う事になる。そこで、精霊達に命を握られているなどと吹き込まれ、気付けば彼等の中で人類の滅亡が世界の滅亡とイコールになった。

 そこに加えて、滅亡の力を持つ精霊を討滅し利用する業を鬼姫から授けられた事で、信仰が生まれたという事だ。


「なんじゃ、それは……」


 ミラは、その荒唐無稽さに苦笑する。カグラはといえば、呆れて声も出ないといった様子だ。いってみれば、最高幹部達は、鬼姫に洗脳されていたようなものだったのである。

 これまでの歴史と今の関係を見れば、精霊がそのような事をするはずがないと分かる。だが彼等からいえば、そう思う事こそが精霊に洗脳されているという状態だという認識になるのだ。

 これには、アイザックとジャマルすらも絶句していた。二人の行ってきた事も罪深いが、それは罪と認めつつも欲望に従った結果。しかしグレゴリウス達の心にあるのは、揺るぎなく歪んだ正義だったのだから。

 ちなみに、ここにいる三幹部以外の考古調査団メンバーは、その考えを否定したらしい。精霊はそのような悪しき存在ではないと。


「ゆえに粛清した」


 完全催眠にありながら、グレゴリウスはそれが正義だとでもいわんばかりに、そう言った。

 公式では、調査隊は行方不明という事になっている。争った跡は残っていたが、遺体は見つかっていないからだ。しかし真実は絶望的なようだ。粛清した者達をどうしたのかと問えば、グレゴリウスはセンキの埋葬地の奥にある隠し扉の先の祭壇に捧げた、などと答えたのだった。

フフフフフ。

ついに買いましたよ。

買っちゃいましたよ。


プレイステーション、ふぉーーーーーーーぅ!


オレ、書籍化作業が終わったらダークソウル3やるんだ。


ちなみに下手くそなので、白霊におんぶに抱っこです。

でも楽しい。ダークソウルたのしい、タノシイ

フフフ


ゲームをやりながら、しっかり食べられるご飯……。

あと九日で見出さなければ!

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― 新着の感想 ―
なんというか彼らの言うことも一理あるんですよね。あくまで人々は性善説で精霊を信じているだけで価値観の相違ができる、あるいは精霊に悪心が生まれるということが起きたら精霊との関係は破綻するから人間だけを生…
[一言] どこか憎めないアイザックとジャマルwww
[一言] こいつら確信犯だったんかい
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