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08 「王女二人は仲が悪いみたいです」


私は今、王城に来ています。なぜか?第一王女に呼び出されたんです。とてつもなく会うのが嫌なんですが。叔父上に会って帰ろうかな。はぁ。



「ヴィクトル様?」



鈴の音のような声がしてそちらを向くと女の子が心配そうにこちらを見ていました。「大丈夫です」と言いかけ、止まってしまいました。その澄んだ紫の瞳に、魂が震えた気がしたのです。



「…?あ、ごめんなさい。名乗っていませんでしたね。わたくしはビュファール王国第二王女レティシア・ビュファールと申します。あの、大丈夫ですか?」



戸惑った声にハッとして慌てて言葉を紡ぎました。



「す、すみません第二王女殿下。殿下に見惚れてしまっておりました。私はベルナード公爵家の長男ヴィクトル・ベルナードと申します」


「ヴィクトル様、そんなにかしこまらずに。どうぞ、レティシアと」


「本当に申し訳ありません、レティシア様」



クスクスと笑うレティシア様に思わず顔が熱くなります。でも、なんだかとても温かい気持ちになって自然に笑みがこぼれました。レティシア様はこちらを見て頬を染めると俯いてしまいました。ああ、残念です。可愛かったのに。



「レティシア!貴女、ヴィクトル様に何をしているの!」



あぁ…来てしまいました。

甲高い声を響かせてきたのは第一王女。その顔は怒りで真っ赤に染まっているようです。レティシア様はびくりと体を震わせ少し後ずさります。どうやら王女二人は仲が悪いみたいです。



「レティシア!何か言いなさい!」


「ひゃいっ…」



あ、可愛い。

いや、そんなこと思ってる場合ではないですね。第一王女が今にもとびかかりそうですし。



「第一王女殿下。体調が悪かった私に、偶然通りかかったレ…第二王女殿下が心配して声をかけてくださったのです」



危ない危ない。思わずレティシア様と呼んでしまうところでした。第一王女の前で呼んだら怒るでしょうからね。気を付けないと。



「そ、そうだったのですね。わたくしったらレティシアに私のヴィクトル様がとられてしまうと思って」



私がいつ貴女の者になったんですかねぇ。



「…体調がすぐれないので今日は帰ってもよろしいでしょうか」


「あ、そうですわね!ごめんなさい。今日は帰ってもいいですわ」



今日()ですか。面倒ですね。叔父上に話を通しておきましょうか。



「それでは失礼致します。第二王女殿下、陛下が呼んでおりましたので行きましょう」



嘘です。この場に残したら危ないと思ったので連れ出すただの口実です。

戸惑うレティシア様の手を引くと、レティシア様はハッとして歩き出します。後ろで何か言っている気もしますが聞こえないです。ええ。「なぜヴィクトル様が呼びに来るのです!」なんて聞こえません。きこえませんよ?



* * * *



「おや?どうしたんだいレティ。それにヴィクトルも」



書庫に居た叔父上は、にこやかに迎えてくれます。



「え?お父様が呼んでいたってヴィクトル様が…」



困惑してしまった二人に勢いよく頭を下げ謝罪します。



「王女殿下、嘘をついて申し訳ございません。あの場に残していったら危ない気がしたので。そして陛下。勝手に陛下の名を騙ってしまい申し訳ありません。罰なら受け入れます」


「…ヴィクトル様。お父様、罰などいりません!ヴィクトル様はお姉様からわたくしをかばってくださったのです!」



すぐそばからレティシア様の声がします。その声は困惑と、動揺。王族の名を騙るのは大罪。ソレをわかっているからこそ動揺しているのでしょう。

叔父上は重く閉じていた口を開いて言いました。



「……ヴィクトル。顔を上げるんだ。そして、二人とも婚約しなさい」


「「え?」」



唐突なのと、予想外すぎて気の抜けた声が出てしまいました。レティシア様も同じだったようで、私たちを見た叔父上は深い笑みを浮かべます。

叔父上。その笑顔、何か企んでませんか。ろくなこと考えていませんよね。



「マリエルがヴィクトルにご熱心なのは、もう知っている。だが今日のことでレティシア、お前も目をつけられただろう。レティシアの婚約者の席は空いている。しかし、このままでいればレティを守るものはない。わかるね?それに、お互いにやぶさかではないのではないか?」



確かにそうですけど。つまり、レティシア様を第一王女や他の男から守れと。

ですが、レティシア様がいいかわかりませんしね。私ですか?もちろん全然かまいません。むしろ嬉しい位です。



「わ、わたくしはヴィクトル様が宜しいのであれば」


「だ、そうだ」



叔父上?ニヤつくのはやめてください。答えなんてわかり切ってるってことですか?なら何故聞くんです!



「…私もレティシア様がよろしいのであれば…」



そこで言葉を切ってレティシア様を見ると不安そうにこちらを見ています。だから安心させるように優しく微笑んで、叔父上に向き直り、言います。



「このヴィクトル・ベルナード。婚約者としてレティシア様をお守りいたします」



傷つけさせなどしない。絶対に守り抜く__そう誓おう。










___________________________

《ステータス》

ヴィクトル・ベルナード


8歳

Lv 1

HP 5,400

MP 2,700


《職業》

???


《称号》

ベルナード公爵家長男 異世界からの転生者 神の愛し子

シルヴェストル・ボワレーの主

レティシア・ビュファールの婚約者


《適性》

魔法 9,999

魔術 9,000

剣 9,000

槍 8,500

弓 9,500

体術etc.


《状態異常》

悪夢

___________________________

《ステータス》

レティシア・ビュファール


7歳

Lv 1

HP 600

MP 450


《称号》

ビュファール王国第二王女

ヴィクトル・ベルナードの婚約者

___________________________

次回は5月5日投稿です。

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