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05 「洗礼を受けました」


叔父様に解呪してもらって3年。8歳の誕生日を迎えました。今日は教会で私と同年代の子が洗礼を受けます。そこで初めて冒険者ギルドなどに登録することが許されるのです。また、魔法、剣などの適性も分かります。

今回の洗礼には第一王女のマリエルと第二王子のフレデリク、友人であるシルヴェストルも参加します。

シルヴェストルはボワレー伯爵家の三男で、彼の兄はクリス姉様と婚約しています。お互いに想いあっています。相思相愛です。

ボワレー家は優しく、領民を大切にしているので、我が子大好きお父様も婚約を許しました。いやまぁ、最初は猛反対していましたがね。婚約(それ)が許されたのも、クリス姉様が「でていく」と言ったからなのですけれどね。子供に弱いですね、お父様。やっぱり残念イケメンです。



* * * *



「ヴィクトル!おはよう!いい天気だね!」


「シルヴェストル。今日は機嫌がいいですね」



弾んだ声で声をかけてきたシルヴェストルにそう言うと、彼は一瞬だけきょとんとしました。ですが、すぐに笑みを浮かべます。



「だって、ギルド登録ができるようになるんだよ?楽しみじゃない?」



シルヴェストルは冒険者になりたいのだそうです。ですから、ギルド登録ができるようになる今日をずっとずっと楽しみにしていたのでした。私も登録だけはしておこうと思っています。たまには、シルヴェストルと依頼を受けてもよさそうですし、身分証にもなりますからね。

協会に向かって歩きながら話していると、どこかで見たような二人がいます。双子なのか顔立ちの似た男女。



「げ、第一王女様と第二王子殿下だ」



シルヴェストルは顔をゆがめて心底嫌そうにしています。国民の人気の高い王族の中で第一王女と第二王子だけは良い噂は聞きませんからね。しかも、第一王女に至っては何人かの貴族のご子息を『攻略対象』と呼んだりするのです。

何の攻略ですか。

シルヴェストルもその一人なので最近は第一王女に接触しないよう気を付けていたようです。王女とはいえ失礼極まりないですね。私ですか?私は領地からほとんど出ないので会いませんね。会いたくもないです。面倒事になりそうなので、



「まぁ!シルヴェストル様!シルヴェストル様も洗礼を受けに来たのですね!」


「だ、第一王女様。奇遇ですね」



シルヴェストル。『奇遇ですね』はないですよ。何せ八歳になる子供は皆今日ここに来るのですから。

第一王女はこちらに目を向けたかと思うと頬を赤くしました。え、心なしか嬉しそうなのですが。



「ここでヴィー様に会えるなんて!絶対攻略するわ!」



何やら嫌な予感が。シルヴェストル、憐みの目を向けるのをやめてください。明らかにターゲットが私になりましたね?!というか何故第二王子はすぐこの場から離れたのですか!護衛が少なくなってるでしょう!へ?そうですよ。護衛に隠れているつもりでした。だって関わりたくないのです。



「ヴィー様、わたくしマリエルと申しますの。どうぞ、マリーとお呼びになって」


「…ヴィクトル・ベルナードと申します。第一王女様、苦言を申しますが婚約者でもない異性の愛称を呼ぶのはいかがなものかと」



王族や貴族の愛称は大切なもので、家族や婚約者、心から信頼する友人などが呼ぶものです。異性は家族でない限り婚約者のみとなります。まぁ、これは暗に「愛称で呼ぶな」ということですが伝わりましたかね。



「ごめんなさい?ヴィクトル様」



直していただけて何よりなのですが…その獲物を見る目はどうにかしてほしいです。

つい不快であるという顔を隠せずにいると第一王女は「何故?愛称で呼べないと攻略は始まらないのに」などと言っています。何の話でしょうね。ゲームか何かと思っているのでしたら、現実を見てほしいですね。



「ヴィクトル、中に入ろう。そろそろ洗礼が始まるよ」


「あぁ、そうですね」



第一王女はいまだ何かを考えていましたが、私には関係ないので放っておきます。決して、関わりたくないからではないです。きっと。

協会ではすでに洗礼を終えた子供であふれかえっていました。まだなのは私と、シルヴェストル、王子、王女の四人。王族は最後だと決まっているので私とシルヴェストルが先に終えなければなりませんね。全員終わらないと帰れないですから。初めの方の子はどれくらい待ったんでしょうか。無駄に長い時間待たされてかわいそうに。



「これで終わりです」


「ありがとうございました。…シルヴェストル?」



呆然と虚空を見つめて動かないシルヴェストルに声をかけるとギギギと聞こえそうなほどゆっくりと、そしてぎこちなくこちらを向きます。



「……ヴィクトル、後で話を聞いてもらっても?」



まっすぐな目に思わずうなずいていました。

しかし、突然周りがざわつきました。視線の先にはふわりとした光に包まれた第一王女。



「巫女様だ……」



誰かがそういうと。周りは歓声。第一王女に至ってはまんざらでもなさそうに微笑んで手を振っています。

正確には聖女()()の光なのですが王族が聖女候補になった時点で聖女確定なのでしょう。あくまでも、聖女()()なのですがねぇ。

そこで、突然のことに呆気にとられていた私の隣にいたシルヴェストルが、忌々しげに言ったのです。



「…偽物が」



シルヴェストルは洗礼で何かを知ったのでしょう。おそらく、私のことも。でもそれでもいいと思っています。きっと彼は変わらないでしょうから。








私は、真実を知っても彼は友人でいてくれると信じているのですから__










___________________________

《ステータス》

ヴィクトル・ベルナード


8歳

Lv 1

HP 5,400

MP 2,700


《職業》

???


《称号》

ベルナード公爵家長男 異世界からの転生者 神の愛し子


《適性》

魔法 9,999

魔術 9,000

剣 9,000

槍 8,500

弓 9,500

体術etc.


《状態異常》

悪夢

___________________________

次回は本日12時投稿です。

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