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04 「陛下に会います」



「ヴィー。陛下に会いに行こうか」



呪い発覚から二日、お父様が唐突にそう言いました。五歳の私が陛下に会うというのはいいのでしょうか。関係ない?まあそうなのですけれども。いや、そんなことより__



「何かあったのですか?」


「ヴィー、忘れたのかい?呪いがかかっていただろう。解呪してもらいに行くんだ」



ああ、忘れていたわけではないですよ。むしろ忘れていたのはお父様たちだと思っていましたが解呪できる人がいなかっただけなのですね。納得です。

まだ呪いが解けていないので病弱なのには変わりありませんしね。ですがお父様?さすがに抱っこはやめてほしいです。いや、笑みを深められても困ります。おろして……



「ベルナード公爵、客室で陛下がお待ちです」



おお!かっこいい方ですね。騎士でしょうか。腰に剣を下げているのでそうなのでしょう。

ですがそんな目を向けられても困りますよ。私だって抱きかかえられたままというのは流石にダメだと思うのです。というか恥ずかしいです。嫌です。穴があったら入りたいくらいです。それでも、おろしてもらえないんです!誰かどうにかしてください!



「陛下、ベルナード公爵とご子息がいらっしゃいました」


「はいれ」



案内をしてくれた騎士さんは扉を開けてくれます。お父様は小さくお礼を言って中に入りました。もちろん、私は抱きかかえられたままですよ。えぇ。もうあきらめました。



「失礼します、陛下。この子がヴィクトルです」



お父様?紹介するならせめておろしてくれませんか。このまま挨拶するのは恥ずかしいのですが。



「初めまして。ヴァンサン・ベルナードの息子、ヴィクトル・ベルナードです」



やっとお父様におろされて一礼をします。きれいな金髪と澄んだ碧眼をもった若々しい人です。ホントに40になるんですか?20歳じゃないんですよね…その若々しさで。それと、どうしてそんなにこちらを見ているんですか。かと思ったらすぐに破顔しましたね。どうしたんでしょう。



「これはこれは、クロエに似て愛らしいな」



え、もしかして陛下ってシスコンですか。妹大好きさんですか。…いや、妹に似た甥っ子が可愛い?どちらにしろ、かっこいい顔が残念に…なってませんね。ホントに、イケメンって何してもイケメンなんですね。



「陛下、ヴィーが困惑しています」


「ヴァン。今は口うるさい奴はいない。いつも通り呼べ」


「マティアス。ヴィーが困惑しているし、お前の自己紹介がない」



お父様?不敬です。義兄(あに)とはいえそれはダメなのでは…



「すまんすまん。お初にお目にかかる。マティアス・ビュファールだ。マティ叔父上と呼んでいいぞ」



いいんですね?!さすがに叔父上呼びは…いや、叔父様ですが陛下でもありますからね?周りがうるさそうだと思うのは…私だけですか。そうですか。

何故、お父様も止めないのですか。何故、止めるどころか「俺だって父上と呼ばれないのにお前が呼ばれるわけないだろう!父様も可愛いけど!」などと言っているんです?あと、いろいろ不敬ですよ?



「陛下」


「マティ叔父上」



いや、あの、怖いんですが。

そんなにこっちを見ても呼び方は変えませんよ?!



「……へい_」


「マティ叔父上」


「……………マティ叔父上」



無理でした。

このままでは話が進みません。というか、この二人本来の目的をお忘れなのでは?解呪をしてもらいに来たはずなのに何故こんなことになったんでしょうね。



「マティ叔父上、とう……父上。本来の目的は何だったのでしょうか」



二人はハッとして慌てて何かの準備をしています。おそらく解呪の準備でしょうね。ですが、本来の目的を忘れて話に夢中になるのはどうかと思うのでジトっと見ておきましょう。お父様が肩を揺らしたような気がしますが知りません。本当に困った人たちです。


解呪はすぐに終わりました。え?何があったのか?陛下が私の頭に触れて呪文を唱えただけです。ええ。先ほど準備していたのは紅茶とお菓子でした。解呪とは関係がなかったようです。先ほどから思っていたのですが優先順位がおかしいのでは?

はぁ……こんな二人のうち一人が国王でもう一人が国の宰相とか笑えないですよ。



「そういえばヴィクトル。気になる女の子はいないのかい?」


「ふぇ?」



あ、しまった。唐突な恋愛への話題に変な声が出てしまいました。叔父様笑わないでください。貴方のせいですからね。お父様も生暖かい目で見るのやめてください。恥ずかしさに悶えそうです。



「…好きな女の子も何も、家をほとんど出させてもらっていませんから」



それに、まだ前世の思いを捨てられていませんしね。もし、もしも、好きな(ひと)ができてもあの人よりも好きになるかはわからない。それなのに振り回してしまうのは相手に申し訳ないです。

そんなことを知らないお父様たちは顔をしかめています。というか、五歳の子供に本気で好きな人がいるとでも思っていたんですか。たぶん大抵の人が覚める恋ですよ。それ。



「ま、まぁ。呪いも解けたことだしこれから探していけばいい」


「そうだな。それとも娘のどっちかと婚約するか?」



なんか嫌な予感がしたのですが…。気のせいですね!きっと、たぶん、おそらく気のせいです。ええ。気のせいでないと困ります。叔父様の娘さんって王女様でしょう?トラブルの予感しかしません。できればご遠慮いただきたいですね。



「ヴィーなら運命の子がすぐに見つかるさ」



お父様。私は運命というのが嫌いなのですよ。ソレがすでに決まっていたことなら、ただただシナリオ通りに動く人形も同然じゃあないですか。それに、












私はもう、運命という言葉に振り回されるだけの苦しい恋は嫌なのです__










___________________________

《ステータス》

ヴィクトル・ベルナード


5歳

Lv 1

HP 3,600

MP 1,800


《称号》

ベルナード公爵家長男 異世界からの転生者 神の愛し子


《状態異常》

悪夢

___________________________

次回は5月3日投稿です。そろそろ、乙女ゲー要素が出てきます。たぶん。

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