閑話 王女の初恋
遅れてごめんなさい。超絶短いです。
私は一度だって恋したことがありませんでした。たかが七歳の娘が何を言うのかと思うかもしれませんが、第二王女として生まれた私は国のために結婚して生涯を終える、それでいいと思っていて恋なんてするつもりはありませんでした。
それでもお母様もお父様も第一王子のお兄様も優しかったからそれで十分だと思っていたのです。でも腹違いのお兄様とお姉様と側妃様は、私をいじめました。それは、とても巧妙なものでお父様たちには証拠が手に入れられない。なのに何度も何度もひどい言葉をかけられて、物も取られました。
けれどある日を境にお姉様に悪い噂が流れ始め私への虐めが減りました。それはお姉様が数々の男性を攻略対象と呼び横暴な態度をとっているというもので、お父様は「噂じゃなくて事実だから困る」と悩んでいるのです。それでも私の従兄妹でもあるヴィクトル様がお父様の気を晴らしてくれていました。
お父様は甥であるヴィクトル様を私たちと同じくらい可愛がっているらしく宰相様も困り顔でしたが。
お姉様たちの洗礼があった日、いつも通りお姉様を避けて後宮の庭を通っていました。その途中である人に出会いました。
日が当たってキラキラと輝く銀糸の髪。諦めの中に優しさが見え隠れする緑の瞳。
一目で恋に落ちたのです。
その瞳に私が映ったら。その無表情が笑みをたたえて私に向けられたら。そう思ったら声をかけてしまっていました。名前はわかります。だってお父様があんなに話していたあの方の容姿にそっくりですもの。
ヴィクトル様は私を見ると固まってしまわれました。何かしてしまったのかと不安に駆られながらも名前を名乗るとヴィクトル様はこうおっしゃられました。
「殿下に見惚れてしまっておりました」
それが嬉しくて、レティシアと呼んでほしいというとすぐに【レティシア様】と呼んでくれてつい笑ってしまいました。するとヴィクトル様が笑みをこぼされたのです。瞳を優しく緩ませて微笑むその姿に恥ずかしさと嬉しさで俯いてしまいました。きっと私の顔は真っ赤に染まっているでしょう。
その後に来たお姉様からも守ってくださり、私の婚約者になってくださった。婚約者になることはヴィクトル様に申し訳なくも思ったけれど嫌がらないでくれたことに少しの期待を膨らませて受け入れた。
宝石だってドレスだってお姉様に差し上げる。けれど彼は、ヴィクトル様だけは譲りません。
ねぇ、お姉様。
お姉様のソレは本当に恋ですか?
お姉様のその思いは本当に愛ですか?
お姉様が見ているのは本当に現実ですか?
お姉様に私の初恋は奪わせません。
どれだけ大好きな家族でも__
しばらくの間投稿しないと思います




