表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/15

閑話 騎士が誓うのは

短い!

俺とヴィー_ヴィクトル・ベルナードが会ったのは5歳の時だった。

その日は親父がヴィーの父親_ベルナード公爵に用があって、俺はただの付き添いだった__



***



「君は誰ですか?」



やけに丁寧な口調で話しかけられて驚いた。親父には

『大切な話をするからこの屋敷の中で暇を潰していろ』

と言われたので王城の庭園と勝るとも劣らない立派な庭を見ているところだった。

声をかけてきたのは少女にも見える少年。というか、男だとわかったのもズボンを履いていたからで『女です』と言われれば疑うことも無く納得してしまうだろう。



「聞いてます?」



あまりに整った容姿に固まっていると顔を覗きこまれた。



「き、聞いてる!俺はシルヴェストル。シルヴェストル・ボワレーだ」


「僕はヴィクトル・ベルナードって言います。何をしてたんですか?」



ヴィクトルは、挙動不審な俺を不思議そうに見て首をかしげる。それすらも可愛く見えるのはなんというか同じ男として可哀想である。さすがに口にはしなかったが顔には出ていたと思う。



***



「シルヴェストル、僕今から剣の稽古なんだけど一緒に行きませんか?」



出会って以来ヴィクトルは剣の稽古に誘ってくれるようになった。理由は俺が冒険者になりたいと言っているからだ。

いろいろ縛りのある貴族の子であるからこそ自由な冒険者に憧れた。ヴィクトルはそんな夢を馬鹿にしないでいてくれる。

ヴィクトルは王家の血が流れているが故に王位継承権を持つ。ヴィクトル自身はそんなもの必要としていない。そんなことはすぐに分かった。

ヴィクトルの話はたくさん聞いた。乳母に命を狙われていたことは凄く驚いた。その話をするヴィクトルは酷く淡々としていて……本当は大丈夫と言いながら傷ついていたのかもしれないと、そう思った。


洗礼の日は思ったよりも早く来て、ヴィクトルは少し緊張していた。第二王子と第二王女というむかつく奴らとも会ってしまったけど仕方ない。ただ、ヴィクトルが「やっと冒険者になれるね」と言われた時はなんだか心の底から喜べなくて、それでも喜んでいるように見えるように笑った。


俺とヴィクトルが洗礼を受ける時になった。

そして、頭に直接響くように聞こえてきた声が1つあった。



『ヴィクトル・ベルナードは貴方が考えているとおり愛し子です。そして、転生者でもあります。貴方が冒険者を目指していたのはわかっています。そして、今は迷っていることも』



神の声。

ヴィクトルとは何年も友人として関わってきた。だから愛し子であるだろうと予想はしていた。それでもヴィクトル本人に聞かなかったのはヴィクトルが隠しているような気がしたからだ。そして、冒険者になるという決意も揺らいでいた。



『貴方には剣の適性がとても高い。貴方が望むのなら剣士にもなれます。ですが騎士にもなれる。私は貴方に何になれとはいいません。貴方が本当に望むものになりなさい』



強要はしないのか。



『私は強要はしません。愛し子はそれを望みません。愛し子は貴方の夢を応援している。だから、貴方が心の底からなりたいものになりなさい。愛し子を支えてくれた貴方には加護を与えましょう』



神の声が聞こえなくなった。ぎこちなく隣を見ると不安げな目をしたヴィクトルが見えた。

こいつはどう思うだろうか。俺が冒険者はやらないと言ったら。俺がヴィクトルの騎士になると言ったら。

顔を泣きそうに歪めるような気がする。それでも、俺はヴィクトルに伝えたい。俺はお前の力になるって_



***



主にはいつか大切な人が出来るだろう。苦しい時、辛い時、主を支えるのはその人になる。

なら、俺は主と主の大切なものを護る盾となろう。主と主の大切なものに害なすものを排除する剣となろう。



誓う。何があろうと俺だけは裏切らないことを。主が間違えてしまう前に止めることを。

この剣をたった一人の主に捧げる。俺の主はヴィクトル・ベルナード。ただ一人だ___

次回は6月1日です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ