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09 「バレました」


帰宅すると両親とルットが待っていました。



「父上。母上。……ルットも。どうしたんですか」


「ヴィクトル。レティシア様と婚約とはどういうことだい?」



何故、知ってるんですか。

ルットに視線を送るとルットは首を振って言います。



「俺は父さんについて来ただけだよ。一緒に洗礼の報告しようと思って」



にこやかに答えてくれました。洗礼の報告とは、家族などにステータスを公開して自分がなんの職になったのかを報告するのです。これは義務ですからね。

ですが、まずは……レティシア様の件ですね。



「……レティシア様とは、その…第一王女様に呼ばれて向かっている途中で会いまして…それを第一王女様に見られてしまって…叔父上がレティシアが目をつけられたから婚約者として守れ、と」


「マティのせいか」


「いや、その……そういう訳ではなく…」



一気に不機嫌になるお父様に慌てて言葉を付け足します。私は嬉しいんです。決して強引に決められたわけではないんです。

その様子を静かに見ていたお母様は優しく微笑んで言いました。



「あら、ヴィー。レティシア様に恋したのかしら」


「………………………たぶん」



きっと、そうです。レティシア様の顔を思い浮かべるとほんのり頬が熱くなりました。

お父様はそんな私を見るとため息をついて話を切り替えます。



「まぁ、後でじっくり聞こう。ヴィー、ステータスを見せなさい」


「シルヴェストルも見せなさい」



いつから居たのかルットの御両親もいました。初めはいませんでした………よね?



「はーい。『ステータスオープン』」


___________________________

《ステータス》

シルヴェストル・ボワレー


8歳

Lv 1

HP 600

MP 350


《職業》

騎士


《称号》

ボワレー侯爵家三男

ヴィクトル・ベルナードの騎士:ルット


《適性》

魔法 500

魔術 500

剣 3,500

弓 500

体術 500

___________________________


ルットの御両親はルットの職業が騎士であることに嬉しそうに顔を緩めています。まぁ、冒険者になることには酷く反対してましたもんね。

私はといえば、未だにステータスを開かず固まっています。ですので、お父様がこちらを見て催促します。

いや、ほんとに見せたくないです。

すると、ルットが呆れたように囁きました。



「…ヴィー、観念した方がいいよ」



やっぱりですか?愛し子なのはバレたくないんですけど。

しぶしぶステータス公開することにします。ボワレー侯爵夫婦は空気を読んで部屋の外に出てくれました。ちなみにルットは残っています。



「うぅ……『ステータスオープン』」


___________________________

《ステータス》

ヴィクトル・ベルナード


8歳

Lv 1

HP 5,400

MP 2,700


《職業》

???


《称号》

ベルナード公爵家長男 異世界からの転生者 神の愛し子

シルヴェストル・ボワレーの主

レティシア・ビュファールの婚約者


《適性》

魔法 9,999

魔術 9,000

剣 9,000

槍 8,500

弓 9,500

体術etc.

___________________________



「………ヴィー。ヴィーは…愛し子なのか」



心なしか弾むお父様の声。

あぁ、やっぱり見せなければよかったかもしれないです。



「さすが!神もヴィーの愛らしさをよくわかっているのだな!」



そこじゃない。



「………ヴィー?」


「だから…嫌だったんだよ」


「うん…大変、だね」



ため息をついてそうこぼすと、ルットは哀れんだ目でなんとか言葉を返しました。

気を使わせて、ごめんよ。


すると、それまで静かに見守っていたお母様が涙を流しながら言いました。



「…ヴィー。ごめんなさい。転生者という事は、きっと辛かったでしょう?お母様以外の子だった記憶があるのでしょう?きっと、戸惑って、怖いこともあったでしょう?本当に気がつけなくてごめんなさい。」



あぁ。お母様も気にかけるところが違う。でも、嬉しいので微笑みます。



「違うよ。私はお母様の子供に生まれられてよかった。ヴィクトル・ベルナードになれてよかったよ。だから、謝らないで。ごめんなさいより、ありがとうの方が嬉しいよ」



そう言うとお母様は少し困惑しました。ですが、直ぐに美しい笑みを浮かべ私を抱きしめました。



「…ヴィー。生まれてきてくれてありがとう。わたくしの子になってくれてありがとう」



「ヴィーこのことは陛下に報告しなければならない。だが、絶対に利用などしないし、させない。可愛い可愛い我が子を利用なんてしないよ。陛下もわかってくれる。わからなくてもわからせる」



少し物騒なお父様の物言いにルットと顔を見合わせ笑いました。お父様の言葉が嬉しい。思いが温かい。



普通の貴族なら、愛し子である子を利用しようとするでしょう。

普通の貴族なら、別の記憶を持つ子を恐れるでしょう。

いいえ。きっとそうだと私は思っていました。

お父様もお母様もそんな人ではないとはわかっていても、心のどこかで疑っている自分がいました。だからこそ、お父様の反応には呆れもあったけれど嬉しさの方が勝っていたのです。お母様が私に謝った時戸惑いはしたけれど、安堵もしたのです。


優しい家族。

暖かい家族。

大切だから。

好きだから。


だから、だからこそ運命なんてものは信じない。

運命なんてものは認めない。

運命なんかでこんな幸せが決まっているなんて思いたくなどないから___










___________________________

《ステータス》

ヴィクトル・ベルナード


8歳

Lv 1

HP 5,400

MP 2,700


《職業》

???


《称号》

ベルナード公爵家長男 異世界からの転生者 神の愛し子

シルヴェストル・ボワレーの主

レティシア・ビュファールの婚約者


《適性》

魔法 9,999

魔術 9,000

剣 9,000

槍 8,500

弓 9,500

体術etc.


《状態異常》

悪夢

___________________________

次回は5月6日投稿です。

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