ごちゃまぜ
~桜、ひらひら~
「あ、ほら。
髪に花びらがついてますよ」
「え?
・・・あ、ほんとだ。吹いちゃえ」
「ふぅーっ・・・綺麗ですねぇ」
「うん、ひらひら落ちてくるのも、いいもんだね」
「ねえジェイドさん?」
「ん?」
「知ってた?
桜の花びら、落ちて来たのをキャッチ出来たら、幸せが訪れるんだよ」
「おや、それは初耳です」
「そっか。
・・・あ、じゃあ、競争ね!」
「え?」
「先にキャッチした方が、勝ちー!」
「・・・幸せはどうなったんですか?」
「よ、ほっ・・・っと・・・。
うーん、難しいなぁ・・・」
「ふふ、それじゃ手を合わせた時に出来る風で、花びらがするっと逃げてしまいますよ」
「んー・・・そっか。
じゃあ、手のひらに着地するように・・・」
「つばき?」
「こっちかな・・・あ、こっちか!」
「こらこらこら・・・!」
「わ、そっち?!
・・・って、きゃ、」
「つばき!」
「・・・ふ、ぅ・・・ジェイドさ、」
「何考えてるんです、あなたって人は・・・?!」
「ごめんなさい・・・」
「花びらだけ見てたら、転ぶに決まってるでしょう?
あなたは今、2人分の命を預かってるんですから・・・」
「う、ごめんなさい」
「・・・まあ、私が側にいるからには、そんなことにはさせませんけど・・・」
「はい、よろしくお願いします。
私も気をつけますぅぅ・・・」
「ああ、はいはい、いいですからもう・・・ね?
ほら、花びらなら私が何枚でも捕まえてあげますから」
「・・・ほんと?」
「ええ・・・見てなさい」
「・・・っ。
はい、これで1枚」
「どうして摘まめるの、ひらひら落ちてくるのに?!」
「・・・そうですねぇ、人生経験ですかね」
「違う、絶対違う」
「ま、これでつばきに幸せが1つ・・・ですよね?」
「ん、ありがとジェイドさん」
「・・・あ、ミナが呼んでますよ」
「うん。
あー、お腹空いたねぇ」
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渡り廊下1周年、12話より。
桜の花を前に、はしゃぐバカップル。
落ちてくる花びらを、指先で摘まんでみせるジェイドさん。達人。
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~お腹の中には何がある?~
「のるくん、あーたん!」
「シエル~!
相変わらず可愛いなぁお前!」
「また大きくなったねぇ。
そっか、もうすぐお兄ちゃんだもんね」
「ノルガもアンも、元気そうだね。
はい、お茶・・・と、良かったらこれもどうぞ」
「ありがと。
いただきます」
「ママ、しえるのは?」
「冷蔵庫にプリンがあるよ。
今食べちゃう?
ノルガ君と、お庭で遊んでからにする?」
「・・・ふたつ!」
「君はコブタちゃんになりたいの?
まるまる太ったら、パパに料理してもらうぞ~」
「・・・想像すると怖いなぁ・・・それ・・・」
「しーっ、そういうこと言わないのノルガ!
あたしだって、結構エグい脅し文句だと思ったけど!」
「そこっ、聞こえてますよ!
・・・で、シエル?どうする?」
「団長が作ってくれたブランコとか、あるんだろ?
遊んでからオヤツにしようよ。
俺、シエルと遊びたいな~」
「・・・おにわであそぶ!」
「それで、シュウさんはいつ帰ってくるの?」
「えっと、明日かな?」
「そっか。
きっと鬼の形相で仕事片付けてるんだろうなー・・・事務官の人達かわいそー・・・」
「こら、人のダンナを貶すんじゃありません。
・・・シュウは怖くないもん」
「そりゃあ、家では良きパパでしょうよ。
シエルにブランコ作っちゃって・・・子煩悩なんだね」
「ん、そうみたい」
「・・・あたしも、子ども欲しいなぁ・・・」
「もしかして、焦ってたりする・・・?」
「・・・てゆうか、あたし達の相性が悪いのかって、ちょっと落ち込む。
ノルガが子ども大好きだなんて、シエルに会うまで知らなかったけど・・・。
あんだけ楽しそうにされたら、やっぱ、いた方がいいと思うんだよね」
「うん」
「でもさ、なかなか上手くはいかないもんで」
「うん」
「・・・何かおすすめ、ない?」
「お、おすすめ?」
「何でもいいからさー。
いや、旦那さんの方に聞いてもいいんだけど。
あの人に聞いたら、極端なことになりそうだな、と・・・」
「・・・それは、まあ、否定しないけど・・・。
そうだねぇ、おすすめ・・・あ、」
「何?!」
「旅行にでも行って来たら?
ほら、環境変えると燃えるって言うよね。
私の生まれた世界では、“ハネムーンベイビー”って言葉があるんだよ」
「へぇぇ・・・そっか、それもいいかも・・・」
「とりあえずは、2人きりで甘甘な生活を楽しむのもいいんじゃないかな。
アンちゃん、まだ若いんだから」
「ん、そうだね。
よーし、ララノのホテル予約しようっと」
「あーたん!」
「あれ、シエル」
「あーたんもおいでー!」
「はいよ~」
「ごめんね、アン」
「いいよいいよ。
お昼寝したら、また話そ♪」
「ん、ありがと」
「・・・あれぇ?」
「なあに、じっと見て・・・」
「あかちゃん!」
「へ?」
「あかちゃん!」
「・・・シエル、アンのお腹に赤ちゃんいるのか?」
「うううううそ?!」
「あかちゃん、いいこいいこ」
「うわー・・・意味深・・・。
鵜呑みにするのもアレだけど、病院行っとく・・・?」
「そ、そだね。
ないとは思うけど、一応行っとく。
・・・ノルガ、一緒に来てくれる・・・?」
「それはもちろん・・・」
「・・・ってことがあったんだけど、ミイナちゃん、どう思う?」
「あー・・・うん、病院行った方がいいかもね」
「えええ、うそぉ・・・」
「そういうの分かる子、稀にいるみたいだから。
私の住んでた世界では、たまに耳にする話なんだよねぇ。
・・・って、アン、大丈夫?」
「ううううううん、だいじょぶ・・・ちょっと、動揺してるだけ」
「ノルガ君、アンのことよろしくね。
これはだいぶ、混乱してる」
「うん、慣れてるから大丈夫。
てゆうか、デキてるといいな~」
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時系列曖昧。ノルガとアンの、その後の会話。
幼児期の子どもが、ママのお腹にやってきた赤ちゃんに気づく・・・ってこと、耳にしたことがありまして。
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~イクメンは1日にして成らず~
「私、思うんですけど」
「・・・どうしました?」
「ジェイドさんも、いっぱい練習した方がいいと思うの!」
「練習?
何のです?」
「オムツ替えとか。
沐浴のさせ方とか」
「・・・ああ、そのことですか」
「あれ、あんまり驚かないの?」
「ええ、それなら私、一度経験してますから。
沐浴は2度ほどですが、オムツ替えならベテランです」
「・・・酷い、今までずっと黙ってたの・・・?」
「え?
もう知ってると思ってましたけれど」
「タチ悪い!
ジェイドさん酷過ぎるー!」
「え、ちょ、待ちなさい。
何荷物詰めようとしてるんですかあなたは」
「だって、だって、他所に子どもがいるなんて聞いてないもん!」
「はい?!
いやいやいやいや、つばき。
あなたちょっと落ち着きなさい。
私は他所に子どもを作ったりしてませんよ」
「嘘つきー!」
「こら、だから落ち着きなさいって!」
「ジェイドさんのばかー!」
「はいはいはい、いいからおいで」
「私が替えてたのは、ヴィエッタのオムツですよ」
「・・・えぇ?」
「これだけ年が離れてると、そういうことも生じるんです」
「ほんとに、ヴィエッタさんの?」
「本当に。
心配なら、父か母に聞いてごらん」
「・・・う、いい。
勘違いしてごめんなさい・・・」
「まったくもう。
最近、情緒不安定ですねぇ・・・妊娠の影響でしょうけれど・・・」
「・・・うん・・・」
「ほらほら、泣いたら可愛い顔が台無しですよ」
「うぅぅ・・・」
「ああでも、泣いても可愛いんでした」
「ばか」
「安心して下さいね。
赤ちゃんを迎えても、即戦力がここにいますから」
「・・・ん、ありがと」
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時系列曖昧。
ジェイドさんが最初からイクメンな会話。
ちなみに妹のヴィエッタが生まれた頃、ジェイドさんは12歳くらいだったはずです。
つばきは、いろいろ不安なんでしょうね。
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