渡り廊下⑧
~はじめてのおくりもの~
「シュウ?
・・・何してるの?」
「ああ、ちょっとな」
「ちょっと、って・・・気になるなぁ・・・。
・・・・・・
・・・・・・
・・・ええっと、これ、なあに?」
「名前だ」
「・・・何の?」
「子どもの」
「・・・誰の?」
「・・・ミナ、」
「え、どうして怒るの・・・?!」
「誰の何のって、俺達の、に決まってるだろう」
「・・・えぇぇ・・・?!
やだやだやだ、こんな名前じゃ覚えてもらえないよ!」
「大げさな・・・」
「じゃあ、どんな名前がいいんだ?」
「とりあえず・・・文字数は、いち、に、さん・・・10文字以内で・・・。
愛称も考えてあげといた方がいいよね。覚えやすいだろうから。
それから、お友達が小さいうちから呼びやすいように、発音も簡単なのがいい」
「・・・なるほど」
「こっちでは、名前に意味を込めたりするのかな」
「いや、特にそういうのはないと思うぞ。
・・・そういえば、ミナには意味があったな」
「うん。
でも、名づけの最初は音から入ったみたい」
「そうか。
音か・・・響きの良さそうな音を重ねていったら、こんな感じになったんだが・・・」
「・・・じゃあ、いったんそこは無視してみよう」
「そうか?」
「うん。
とりあえず、そうしよう。
明後日お母さまが王都に出てくるんでしょ?
その時に名前候補書いてくるって・・・手紙にあったけど・・・」
「・・・負けられないな」
「いやもう、勝ち負けよりは、良い名前をお願いしますよ・・・」
「もちろんだ。
ミナ、紙を持ってきてくれるか。
・・・確か予備が、戸棚に入っていたはずだ」
「あれ全部に書くつもりなの・・・?!」
「・・・お前は寝ていろ」
「え、徹夜ですか・・・?!」
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シュウが名づけに燃え、ミナは彼のやる気に慄いています。
彼は負けず嫌いなので、徹夜してでも良い名前を考えようとしているようです。
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~新米パパ、ベビーベッドを買う~
「このベビーベッド、どうかな」
「・・・そんなに小さいのでいいのか?」
「え、だって、どれも同じようなサイズだよ?」
「そうだが・・・少し窮屈そうだぞ」
「そうかなぁ・・・普通だと思うけどなぁ」
「・・・いや、こんな狭い場所に寝かせておいて、頭でもぶつけたらどうするんだ」
「いやいや、新生児は転がりませんし」
「そうなのか?」
「大体、このお腹に入ってるんだよ?
こんなに小さいんだから、これくらいのベッドで大丈夫だと思うけどな」
「そうか・・・想像と違うな・・・」
「・・・何を想像してたんだろう・・・」
「いや、生まれてすぐ寝返りくらいは打つかと思って」
「・・・新生児見たことないの?!」
「ない。
あるわけがないだろう」
「それにしたって、犬とか猫の子じゃないんだよ?」
「分かってる」
「・・・シュウ・・・」
「なんだ、その目は」
「今度、パパ教室に参加しようね」
「・・・なんだそれは・・・」
「シュウみたいな新米パパのための講習会!」
「・・・初心者扱いか・・・」
「初心者でしょ。誰が、どう見ても!」
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ベビーベッドを選びながらの会話。
シュウ、とんでもない新米パパ疑惑。
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~さくらの季節~
「そろそろかなぁ・・・」
「どうした」
「あ・・・うん。
そろそろ、こっちの世界では桜が咲く頃、だよね・・・って」
「ああ、あの花か。
いつだったか、マートンに差し入れたな」
「うん。
また、そのうち行ってみようかな」
「・・・お前はやめておけ。
あそこの雰囲気は、体に障る」
「・・・うん、そうだね」
「持って行きたいものを、」
「ん?」
「用意しておけ。
俺が行く」
「・・・ありがと」
「ああ」
「じゃあ・・・その前にお花見、行こっか」
「おはなみ?」
「そう。
あっちの世界では・・・っていうか、私の暮らしてた国ではね、満開の桜を眺めて、
お弁当を食べたりお酒を飲んだり、そういうことを楽しむ習慣があってね」
「・・・なるほど」
「まぁ、私はどっちかというと、宴会じゃなくて、桜並木を散歩するくらいだったけど」
「桜並木か・・・」
「並木は、ないよねぇ・・・」
「・・・ないな。
ああでも、離宮の庭に何本かまとまって植わっていたような気が・・・」
「ほんと?
・・・あ、でも許可がないと入れないよね」
「それは、どうにでもないんじゃないか。
・・・ジェイドとアッシュに聞いてみよう」
「あー・・・」
「なんだ」
「陛下も便乗しないかな?」
「・・・それは、あるだろうな。ほぼ確実に」
「それなら、いっそのこと皆でお花見しようか?
たくさんお弁当作って、お酒は・・・仕事中の人は飲めないけど」
「花を見ながら酒か・・・」
「シュウ、顔が緩んでる・・・」
「そんなことは」
「・・・あのね、桜を見るんだからね?」
「ああ、分かってる」
「宴会は、おまけだからね?」
「分かってる」
「桜が咲いてなかったら、出来ないからね?」
「・・・そうなのか?」
「・・・えっと・・・あの・・・」
「じゃあ、その時はうちの庭で、普通にごはん食べよう。ね?」
「そうしよう」
「・・・要は、外でお酒が飲みたいってことなのね・・・」
「・・・否定はしない。
でも、花見はしてみたい」
「う、うん・・・喜んでいいのかな」
「楽しみにしてるんだが」
「うん・・・私も、楽しみ」
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ミナ発案のお花見企画。
実現するんでしょうか・・・。
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