第96話 祝杯
「よーし! 準備万端だな!!」
それから数週間後。
何とか回復し、俺は会社に戻ってきた。
戻るや否や、ジャスミンさんとミオちゃんが、パーティ道具一式を庭に飾っていて、中央にはバーベキューの鉄板があった。
肉や野菜がセッティングされているところを見るに、まぁ説明はいらないが、それをやるんだろう。
「今日はお前の退院祝いも兼ねてるからな、思いっきり騒げ!」
「いやいや騒げる体調じゃねぇよ」
逆に社長さんは何でこんなに元気なんだ。
「本日は『一応』退院祝いも兼ねていますで、国内で最高級のお酒を用意しました」
「おいおい、一応ってなんだよ」
ジャスミンさんは相変わらず、俺に対して厳しい……思わず素で突っ込んでしまった。
「さーて! ジャスミン! 酒だ酒だ! ミシェールは何を飲む?」
「えっと……私は……」
「お、じゃあ酒飲むか酒! 何事も早い方がいいからな! ははは!」
「ははは! じゃねぇわ、犯罪だろうが」
「冗談だよ冗談、ジャスミン、高級な冷茶を入れてやれ、トムはおこちゃまだからラムネ割か?」
「おこちゃまってなんだよ……まぁラムネ割結構好きだからいいけどよ」
「いや好きなのかよ……」
……そんなに引くか?
そんな事を思いつつ、ジャスミンさんが各々飲み物を注ぎ、社長さんが咳払いをした。
「さて、先ずはトム、退院おめでとう、そしてミシェール、正式入社おめでとう! あの洞窟の件で我が社の評判も回復中だからな! これからどんどん盛り上げていくぞ! いいな!」
社長の音頭は至極真っ当で真面目だった。
なんだ、意外に普通の子と言えるじゃん。
「よし、じゃあ最後に二言三言言おうと思う! いいか? 行くぞ!」
お、ここで思いきり締めてくれるのか! 何言ってくれるんだ?
「そーれ! わっしょい! こらしょい! どっこらしょい! 以上! 乾杯!」
いやいや……最後の最後にそれかい……少々滑ったが、社長さんらしいかな。
そんな事を思いつつ、グラスを上に向け、中身を飲んだ。
「よーし、私が肉を焼いてやるぞ! ジャスミンも飲め!」
社長さんは酒を一口飲んだ後、肉を網の上に乗せ始めた。
ジャスミンさんは少々躊躇しながらも酒を飲み始めた……
☆
「ははは!! ほらミシェール! 若いんだからもっと食え!」
「社長……飲み過ぎじゃ…‥」
「全然まだまだ! あはははは!!!」
ダメだ……社長完全に出来上がってるわ、ミオちゃんに絡んでて話せる感じじゃない
どうしよう……
「あ、ジャスミンさん……」
ちょうどずっと座って酒を飲んでいるジャスミンさんがいたので声を掛けた、話し相手がいないと困るし……
「なぁ~んですかぁ~? こぉんの私にぃ~? もう仕事したくなぁいですぅ~」
「え? あの……」
「つーか、あんたなぁーに、2人っきりで病室でイチャイチャしてんですかぁ~どれだけ心配したと思ってんですかぁ~?」
「いや別にイチャイチャは……というか心配してくれたんですね……」
「あぁったりまえじゃないですか!!!!! 仮にも私たちはぁ……同僚じゃないですかぁ……いいですかぁ、同僚ってのはですねぇ、同じ会社で働いているという事でぇ……」
「いやあの、ジャスミンさん?」
もしかして、ジャスミンさんって飲んだらやばいタイプ?
やばい、話し掛けない方が良かったかも……
「知ってますぅ? 中国語で友達ってパンヤオって言うんですぅ、私たちもそうですよねぇ? パンヤオ、と言っても私、親から教わった中国語それしかないんですよぉ、全く何がパンヤオって感じですけどぉ、でも私たちはそうですよねぇ?」
「あ、はい、そうですね……」
「ですよねぇ!?」
「はぁ……」
『いやぁ本当にうれしいですよぉ……私ね、本当は貴方の事凄い大切な仲間だと思ってるんですよぉ? わかりますぅ? そりゃルカ様独り占めするのは勘弁願いたいですけどぉ……』
「いやあの……日本語喋ってください……英語分からないんで……」
こりゃあ……長い夜になりそうだ。
そう思いながら、酒を飲み続けた。




