表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
382/389

第七十三章 ウォルティナ 1.三者三様思惑絵巻

 ~Side ネモ~


「本当に(よろ)しいんですの? ネモさん」

「あぁ。単に順番が入れ替わるだけだからな。そもそもお嬢ん()の馬車に乗せてもらわなかったら、里帰り自体できなかったんだし」


 カソルの町を出たところでお嬢共々妙なボランティアをやる羽目になっちまったが、それ以外は何も無くチャシクの町に着いた。チャシクの町から一日ばかり行ったところで分かれ道を西へ向かえば、我が懐かしの故郷リット村に着くんだが……だからって、ここでお嬢たちにおさらばを決めて、一人だけ実家に帰るってなぁ、幾ら何でも義理ってもんを欠くだろう。せめてウォルティナの町くらいまでは同行して、誠意ってもんを見せなきゃな。

 ゼハン祖父ちゃんにも紹介を頼まれてる事だし、なぜかお嬢も祖父ちゃんの店に行くのに乗り気みたいだから、これは一石二鳥……いや三鳥ってもんだ。

 実家に帰んのがちっとばかし遅れるが、祖父ちゃん祖母ちゃんに会うのを先に済ませときゃ、その分実家に長くいられるわけだしな。


 お嬢にはチャシクの町でそう伝えたんだが……いざ分かれ道を素通りって段になって、(また)(ぞろ)弱気の虫が動いてきたらしい。お嬢にしちゃ珍しい事だよな。

 ま、そんなに気にしなくても、ウォルティナの町までの護衛と道案内はきっちり務めるから、そう心配すんなってんだ。



 ********



 ~Side ドルシラ~


 分かれ道のところでネモさんに()気無(げな)(ほん)()を促してみたのですけど、あっさりと(かわ)されてしまいました。ネモさんの決意は固いようです。……こういう時は、ネモさんの義理堅さが恨めしくなりますわね。


 そもそも今回の帰省の目的ですけど、一つには旅という時間を共有する事でネモさんとの関係を深め……何か誤解を招きそうな言い回しですわね……そう、関係を改善するというものがありました。

 その一環として、ネモさんとのご家族の(よしみ)を深め、(からめ)()からネモさんを(ろう)(らく)……ではなくて口説(くど)き落とし……いえ……懐柔しようという(もく)論見(ろみ)があったのです。

 そのためにも、これを機にネモさんのご実家の位置を特定してお近づきに――と考えていたのですが……その計画は初手から――ネモさんの義理堅さによって――(つまづ)く事になったのでした。


 ……ここは無理に(たた)み掛けるのではなく、一歩引くのが上策ですわね。やはり(わたくし)たちの方から押し掛けるというのは図々しいですし、貴族として褒められた行ないではありませんもの。

 下手(へた)を打ってネモさんとの関係に瑕疵(かし)を付けるような事は出来ません。当家の評判にも関わりますしね。

 幸いに、ネモさんのお祖父(じい)様にはご紹介戴けるようですし。


 ……ネモさん発案のあれこれを一手に取り扱っておいでだとか。お(たず)ねするのが楽しみですわね。



 ********



 ~Side ゼハン(ネモ祖父)~


「表口はちゃんと掃き清めてあるか!?」

「はいっ! 大丈夫です!」

「今は良くても、野良犬がやって来て糞を垂れるかもしれん。定期的に見直しを欠かすでないぞ!」

「は、はいっ!」


「陳列棚の周りも整っておるか? 棚の上だけではのぅて、下にもきっちり目を配っておくんじゃ!」

「解りました!」


「商品の入れ替えは済んだのか?」

「今少しお時間を戴きたく」

「早うせぃ! (ネモ)めは〝予定は未定〟なんぞとほざいておった。予定どおりなら昼頃にお着きになる筈じゃが、予定が狂って明日になる、悪くすると数刻後にはお見えになるかもしれんのじゃ。今日明日の間は気を緩めるでない!」

「「「「「はいっ!」」」」」


 全く……あのバカ孫め、〝公爵家のお嬢様と大奥様をそっちにお連れするから宜しく〟……なんぞと気楽にほざきおって……


 そりゃあ一廉(ひとかど)の商人として、()(ごと)()き方々のご来臨が嬉しくないわけは無いわぃ。じゃが、うちは三代前から庶民相手に手堅くやってきた()()商会じゃ。お偉方をお迎えできるだけの品も手際も無いというに……


 ま、魔導学園なんぞに招集されるような孫を持ったが因果じゃと、(はら)(くく)って向かうしか無いか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
大奥様&お嬢にガッツリ目を付けられてるとは知らないゼハン爺ちゃん、ガンバレー(笑)
でも、なんだかんだ言いつつ、ゼハン爺ちゃんなら大丈夫そう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ