第七十二章 相乗り帰省道中記~六日目 道草~ 4.破壊
~Side ネモ~
……そういやあったな、そんなオプション。確か『闘神の加護』の副作用だったが……【魔力操作】でも似たような事ができたっけか。
……あー……付与の発動には或る程度の魔力が必要で、その魔力は①本人の魔力か、②魔石の魔力か、さもなきゃ③周辺の遊離魔力を使うんだったな。
無人の空き家で作動している時点で①は無い。長年放っとかれた空き家で作動してるんだから、②の可能性も低い。残るは③の可能性だから……付与の魔法陣周辺の魔力を吸い取ってやりゃ、作動を妨害する事はできるかもしれん。ただ、そのためには……
「お嬢、問題の付与の魔法陣、どこに描かれてるか見当付くか?」
「屋内であるのは無論ですけれど、破壊工作への対策として、一見しただけでは判らない場所に描くのが原則ですわね」
「つまり……?」
「即座に場所を特定するのは無理ですわ。床下とか、何だったら礎石の下面に描かれている事もあるそうですし」
この手も駄目か……
『むー ざんねんー』
あまり気にすんなヴィク。他の時にゃその手が使えるかもしれんのだからな。
『うん、わかったー』
よしよし、ヴィクは良い子だな。さて――そうすると残るは……
「ネモさんの【着火】は使えませんの?」
「奇遇だなお嬢。俺も同じ事を考えてたところだ」
【生活魔法】の【着火】は、対象を燃やすという働きは同じでも火魔法じゃない。どっちかってぇと闇属性の魔法らしいからな。抗・火魔法の付与は効かん筈だ。
木材が一旦発火しちまえば、その炎は火魔法の括りからは外れるわけだから、改めてお嬢の火魔法でその炎を強化する事はできる。――つまりは燃しちまう事ができる……
「――って筋書きを考えてみたんだが……どう思う?」
「……いけそうですわね。私だけではなく、冒険者たちの火魔法も使えるかもしれませんわ」
「あー……連中の仕事を横取りしちまうのも何だしなぁ……」
受注した依頼を熟せなかったって事になると、依頼失敗のペナルティが付くからな。その辺りの事情を説明しようとすると、ここのギルマスに話を通さなきゃならん。余計な面倒を背負い込む事になる。
だったら、将来「氷炎の魔女」と呼ばれる事になるお嬢のアシストがあったって事で、最初の着火はお嬢の功績だとして押し通すのが無難か。……俺の【生活魔法】の事は黙っとけって、学園長からきついお達しがあったしな。
「魔女呼ばわりは不本意ですけれど……それが一番面倒が少なそうですわね」
何はともあれ試してみなくちゃ始まらんって事で、俺の【着火】を試してみたんだが……あっさりと火が着いたのには呆れちまった。……【生活魔法】に破られるようで、「防火」の付与だなんて胸を張って言えるのかよ。
「……いえ、ネモさんの【着火】は規格外だと思いますけど……」
「だとしても、裏を掻かれる可能性を想定してねぇってのは甘過ぎだろう」
「……戻ったら学園へ報告した方が良いですわね」
・・・・・・・・
――後になってから思い出した。
あの空き家って、「運命の騎士たち」の本編で、反・王家派が立て籠もったアジトの一つじゃなかったか?
確か……街道沿いの廃屋に反・王家派が立て籠もったせいで、地方領主だか軍だかの移動が妨げられた――って展開があったような気がするんだが……
………………いや、立て籠もったアジトは複数あった筈だし、そのうちの一つが無くなったからって、大した問題にゃならないよな? きっと空き家は他にもあるだろうし。
……抗・火魔法の付与がかけられた廃屋が無かったとか、その付与の裏を掻く方法が判明したとか……大した事にゃならないよな?




