第七十二章 相乗り帰省道中記~六日目 道草~ 3.路傍の遺址(いし)(その2)
~Side ドルシラ~
――何とも面倒な場面に行き遭ってしまったものです。
仮にも魔導学園の生徒が、魔法絡みで困窮している者たちを横目に見て通り過ぎる……というのは、些か外聞が宜しくありません。
その一方で、幾ら対象が解体予定の物件だからと言って、公爵家が他家の領地で破壊活動に及ぶというのは、やはり色々と触りがあります。
要はどちらに転んでも、碌な事にならないのが確定しているわけです。こういうのを〝進退窮まる〟というのですかしら。
それでも、お祖母様には何か思うところがおありになったようで、
「……ネモ君、ドルシラ、貴方たちに相談があるのだけど」
――と、そうおっしゃいました。私はともかくネモさんは、面倒臭そうな表情を寸刻浮かべていらっしゃいましたけど、話を聞く事は了承して下さいました。
そしてお祖母様の判断は――
「貴方たちで一応、物件の様子だけでも見てもらえないかしら?」
――というものでした。
「レンフォール公爵家の立場上、他家の問題に軽々しく首を突っ込むのは悪手……というのは解っています。ですが――ここの領主が物件の解体を冒険者ギルドに依頼した時点で、これは冒険者ギルドの問題にもなったわけです」
「あー……そういう事なら確かに」
私は最初意味が解りませんでしたけど、ネモさんは直ぐに気付いたようでした。
「俺は見習いとは言え、王都冒険者ギルドの人間ですからね。この依頼を受ける……のは、ランクの関係で難しいかもしれませんが、依頼内容を確認するぐらいは問題ありません。……と言うか、魔導学園の生徒という立場に鑑みると、スルーしちまうのは却って拙いでしょう」
……なるほど、私にも読めてきました。冒険者であり、なおかつ魔導学園の生徒でもあるネモさんがこの案件に関わるのなら、ネモさんのクラスメイトである私がそれに手を貸す事に、何の問題もありません。
要は私が「レンフォール公爵家息女」としてではなく「魔導学園生徒」という立場で関与すればいいわけです。
「ドルシラの火魔法だと、事が大きくなり過ぎるかもしれないけど、その辺りはネモ君が手綱を取ってくれないかしら。前代未聞と言えるほどに優秀だと評判のネモ君なら、どうにかなるのではなくて?」
ネモさんの眉間の皺が益々深くなりましたけど……どうやらそれが最善手だと納得して戴けたようです。
「……とにかく、大奥様がおっしゃったように、まずは現場を見てみます。俺たちの手に負えるもんかどうかも判りませんし」
「えぇ、宜しくお願いしますよ」
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~Side ネモ~
案の定面倒な話になっちまったが、別にお嬢や大奥様のせいってわけじゃねぇし、街道が通行止めなんて事になると、迷惑を被るのは俺だって同じだ。去年もあわやカソルで足止めを喰らうところだったしな。……てか、ここって能く見りゃ、去年川が氾濫して通行止めになってたとこじゃねぇか。何かに祟られてるんじゃねぇだろうな?
あの時ゃ【願力】に縋ってどうにかしたが、この先も同じような目に遭うかもしれないってのに、早めに手を打たないのは馬鹿げてる。縁起の悪そうな場所なら尚更だ。
――なら、お嬢の助けを期待できる今、片を付けるのが正解って事になるか……
「ネモさん、何か腹案はありまして?」
「腹案っつってもなぁ……」
一応土魔法は使えるんだが、今の俺だと家の土台を崩せるかどうかは怪しいな。いや、魔力でごり押しすりゃいけるかもしれんが、そんな事をすりゃステータスの偽装を疑われかねん。……却下だな。
そうすると、【眼力】の【壊呪】……じゃねぇ【解呪】で付与をぶっ壊すのはできそうだが、それをやると怪しまれるなんてもんじゃねぇ。
……いや……【浄化】でも同じような事はできそうな気がすんな?
『マスター まりょくの きゅうしゅうはー?』
『魔力吸収?』




