チョコレート
「慧美ちゃん、この袋に入っている物は何?すっごく美味しそうな匂いがするんだけど。」
私のリュックを指差して言う。
「お菓子だよ」
「おかし?」
「うん。甘味だよ。食べる?」
チョコレートを取り出し、封を開ける。
「うん!!え。何この茶色い物体」
「チョコレート。」
「ちょこれえと?土みたいだね」
じぃと手に持ったチョコレートを見る。
───長い。チョコレートが溶けてきてしまっている。
「食べてみなよ」
しびれを切らせて言う。
「甘~い。口の中で溶けた!!もう一粒頂戴!!」
目をキラキラさせて言った。なんか、犬みたい
「はい。じゃ、私眠いから寝る。部屋の場所教えて。」
チョコレートをもう一つあげた。
「おいひい。こっちだよ」
もぐもぐと口を動かしながら答えた。
部屋から出て、すすぐ右の部屋の戸を開け、手招いた。
「ここ。」
近すぎるでしょう。
心の中でつっこむ。
「有り難う」
笑顔が少しひきつってしまった。
「はい。ご褒美頂戴?」
ご褒美。っぷ。思わず吹き出しそうになる。
我慢、我慢。
チョコレートがそんなに気に入ったのか。────なんか、犬みたい。
「お手!」
思わず言ってしまった。
「わん」
私の右手に沖田が手をおいた。
わお。マジでお手したよ。
「ご褒美。」
チョコレートを沖田にあげた。沖田は犬扱いされたことなんて気にしていないみたいで、ただ、チョコレートを口に含みながら目を輝かせている。
「お休み。」
部屋は殺風景だが、清潔感のあり、畳の香りがする。
なかなか良い感じ─────ではない。
天井に誰か居る。誰だ?自分の部屋に誰かが居るなんて気持ち悪い。
土方に言うか?いや、土方がよこしたのかもしれない。私の見張りということで。
だとしたら、私がすることは、ただ一つ。
「おい、土方ぁぁあ!!なんか視線感じんだけどぉぉぉぉ?」
「うわぁぁあ。お、お前ってそんな性格だったっけ?」
私と同じ位大きな声で言った。
「俺の部屋に居るのは誰なんだぁぁぁぁああ!?」
「うるせぇぇええ!!おい、山崎!!」
「はい。副長。」
天井から出てきた。
「慧美、なんで分かった?山崎が失敗するはずが無いのに」
やっぱり怪しむか。まぁ。想定内だが。
「俺は人の視線に敏感なんだよ。俺、よく攫われるからさ。この容姿で。」
本当はかなりの桜院財閥の娘だから攫われるのだけれど、この時代に桜院なんて知らないであろう。
なにせ、お爺様が大きな会社に成長させたのだから。
「隠れることは得意か?」
「あぁ。それがどうした?」
いちおう聞いてみる。
「山崎と一緒に仕事をしないか?」
やっぱり。そうくると思ったよ。
「する。」
「これから宜しく頼みます。あと、明日から指導を始めます。」
「宜しくお願いします。」
深々と頭を下げる。
「おい、何で山崎には礼儀正しいんだよ」
「なんとなく。」
「なんだその適当な理由!!納得で───」
「お休みなさい」
ふわぁ。とあくびがでた。




