なんか要らんフラグが立ったらしい。
凛はどうやらMの可能性があるらしい。身近にはどちらかというとSが多かったから新鮮だ。
試しにおでこを指で力いっぱい弾いてみる。いわゆるデコピンというやつだ。かなり強めだが。
すると顔を赤くしながら万弁の笑顔を浮かべた。そして何故か私にもデコピンした。
「くふふふふ」
とても嬉しそう。とてつもなく嬉しそうなのは良い事なんだけれども、何故私にデコピンをした?
何をしたかったのだろうか?
キャッキャッウフフなんだその声は恋する乙女か!!と突っ込みたくなる。
「恋する乙女みたいな声、止めろ」
いや、突っ込んでしまった。
「乙女じゃないもん!!女じゃなくて男なんだからね!!」
「…………喋り方が女っぽい」
もんって…ちょっとね。何狙いだよ。と思う。
「プンプン。怒るよ!」
「ごめんなさい?」
後ろから抱き付き、耳元で甘く囁いた。
「ひゃっ。ご、ご主人様だから、ゆ、ゆ、許してあげる」
くすくす。思わず笑ってしまう。本当に凄い動揺だね。
恥ずかしがっていることが丸わかりだ。
「むぅ。ご主人様の意地悪!!」
「ごめんごめん」
「お返しっ」
耳元に息をふっと吹きかけられる。
しかし、それに動揺する私ではない。
「残念」
「ちぇっ。つまんないのー。桜の動揺している顔、見たかったのになー」
「ちょっと待って、どうして名前、知っているの?」
偽名だけれども、私が桜という名前を使ったのはここよりずっと遠かったはず。
「おしゃべりが聞こえたから。」
え。狼ってそんなに耳が良いんだ。
「どれ位まで聞こえるの?」
「うーん。正確な数値は知らないけど…隣の県まで、桜の声なら分かると思う。桜大好きだから。」
「結構広いね。じゃあ、基本的には何処にいても聞こえるってことだね。呼んだら来てね。」
「うん!!行く!すぐに行くね!!」
よしよし。偉い子偉い子。
完全に犬扱いして頭をわしゃわしゃと撫でる。
凛は気持ちがよかったのか、うっとりとした表情で私の太ももに頭を預けた。
柔らかくサラサラとした羨ましい程の髪がくすぐったいのだけれど我慢我慢。
慧美は凛がMだと思っていますが、
凛はMなどてはなく、慧美に構ってもらって嬉しいだけです。




