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…窓際には、君が  作者: たかさば


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引き継ぎ

「あ、ごめんね…待った?」


「I just got here!待ってないよー!」

「おやつ食べてたからいーよ!!あ、この新作グミ食べてみて、めっちゃうまいの!!」


 月曜、学生会室に向かうと、入り口でティアと東浦先輩が待っていた。

 小走りで駆け寄って学生会室のドアを開け、中に入って…カーテンと窓を開ける。


 ……学生会室の開錠は、今までは、三上先輩が率先して担当していた。しかし、引退に伴い。


 ―――では、この鍵は…石橋君に託します!!

 ―――ええ?!僕?!順番から言ったら相川先輩か東浦先輩が担当するんじゃ…


 ―――あたしは無理だよ、だっておやつに埋もれて鍵失くしちゃうもん!

 ―――今年空きコマ多いから毎日は無理なんだよね!けい君とのデートも忙しいし!


 ―――石橋君ならフットワークも軽いし…私は何も心配してないから!月曜からお願いね!


 今日から…学生会室の鍵を開けるという重大な任務に就くことになっってしまってね?!


 地味に毎回三上先輩よりも早く学生会室に到着していたことが影響しているらしい。しまったなあ、こんな事なら毎回遅刻しておけば…いや、そういう事じゃ…ない!


 今年は月曜から金曜まで授業のコマが埋まっているからいいけど、来年はどうなるかわからないのが気がかりだ。一般教養科目が減るから、一日くらい空きそうだなあと考えていたんだけど、学生会室を開けるためだけに来るのはきついぞ…。というか、三上先輩は毎日大学に来てたって事だよね?わりと大変だったんだな…。

 いまさら労うのもなんだか申し訳ない。今度から見かけたらおやつかなんかプレゼントする事にしよう。


「鍵係乙wwwあたしがもうちょい素早く動けるタイプだったら引き受けても良かったんだけどねw」


 あんなに料理上手なくせに、森川さんは購買部のサンドイッチやコンビニのおにぎりのファンなんだよね。それゆえに、たびたび昼時に遅れをとることがあったりする。やれ新発売のおにぎりが出たらしいから見に行って来る、やれ購買のおばちゃんに声をかけられたから買いに行って来る…わりとアクティブではあるものの、学生会室に一番最後に入ることは珍しくない。

 さんざん三上先輩の駆け込んできて一生懸命鍵を開ける姿を見てきた僕としては、あんまり無理をさせたくないと言うか。

 …まあ、断るのもね。現行の役員の中で一番適任なのは自分だ。みんなが喜んでくれるならそれでいい。


「ちーす!!昨日めっちゃ楽しかったッスねー!!ちょっと食べ過ぎて真夜中にウンコが止まんなくて大変だったッス!!」


 誰だい、女子大で下品な発現をしているのは?!

 これは厳しく注意をしておかねばなるまい…、そう思って振り返った瞬間。


「お前な!!小学生男子みたいなノリやめろよ!!仮にも女子大生なんだぞ?!飯がまずくなる様なこと、軽々しく口にすんな!!単位やらんぞ!!!」


 トレイの上にミートボールカレーとチョコモンブランをのせたおっさんが、つばを飛ばして説教を始めたぞ!!!

 わりと河合先生はあんなガサツでゴーイングマイウェイ適当万歳名クセにやけにマナー的にうるさい部分もあってめんどくさいんだよ。年長者は若者を育てなければならない的な…思い込みと勝手な責任感に浸ってると言うのかな。ああいうのって加齢に伴い備わっていくものなんだろうか?アレは相当長ったらしくねちねちと続くパターンに違いな・・・


「うへえ、マジすまんッス!!勘弁して欲しいッス!!留年はごめんッスね!!」

「そもそも小田原キッズはデリカシーがなさ過ぎる!お前ね、いつか痛い目見るぞ?もうじきに二十歳になるんだ、大人にならなきゃいかん年齢なんだ、いつまで小学生男子をやっているつもりなんだ!今学んでおかなきゃいつ学ぶんだ!!いいか、思ったことは口に出す前に咀嚼しろ!!よーく自分の言いたい言葉が本当に今口に出して良い言葉なのか、口の中で何回も噛み砕いてから吐き出せ!!人というのは慎み深さとマナーを備えて・・・」


 叱っているおっさんこそ、常日頃からデリカシーのない発言をして周りの人をドン引きさせているわけだけれども。下手に口を挟んだらこっちにまでダメージが及びそうだ。よし、スルーしよう。


「おつで~す!」


 今日の志田さんはやや落ち着いた色合いのボレロワンピース…おや、アレは楠先輩がみんなに引退の記念にプレゼントしていたお揃いのブローチじゃないか。へえ、リボンをアレンジするとカントリー調になって高見えするんだな。センスいいなあ、めちゃめちゃ似合っているし。


「お疲れ様です!昨日、行けなくてすみませんでした。バイト終わりに行こうとしたけど結局残業出ちゃって…次は絶対行きます、行きたい!」

「お疲れです!!あの、これ昨日誰かが忘れていきませんでした?皆さん酔っ払ってて…」


 大下さんはやけにたくさんの紙袋を抱えている。おそらく今から白熱するであろう学園祭反省会に使う資料と思われる。

 原西さんが差し出したのは花柄のハンカチ…、誰の忘れ物なんだ?由香はガーゼハンカチ愛用者だから違うし、僕はチェック柄のものしかもっていない、森川さんはネームが刺繍してあるからたぶん違う、ティアと小田原さんはハンカチを持っていないし、まさかおっさん勢のものじゃないだろうし…大トラ化していた柴本さんか、はたまた東浦先輩…はハンドタオル派だったな。


「お疲れ…です。あり…なくしたと…よかった…昨日…たから」


 どうやらあのハンカチは柴本さんのものらしい。

 昨日の大騒ぎが嘘のように、小ぢんまりと控えめに…消え入りそうな声で控えめに喜んでいる。気のせいか、ほんの少しだけ声が大きくなったような、言葉が多くなったような?昨日の飲み会がきっかけで緊張がほぐれたのかも?


「ウイーッす!!佐藤君ね、休んだ日のテスト受けなきゃいけないらしくて来れないって!で、気になった事を書いた紙もらってきたモグ!!」


 ドスドスと地響きがしてきたと思ったら、両手にレジ袋を下げた結城先生が間近に迫っていた。部屋に入れば思う存分食べられるのに、何で移動しながらクロワッサンを頬張るんだ…。あーあー、地面にパンの粉が!!


「石橋君、ゆうちゃんからライン来たwなんか今彼ぴとリアルタイムケンカバトル勃発中だから先に始めといてだってwww」


 年に数回しかない校内イベントの反省会だというのに、会長がいないなんてどういうこと?!


「あの、海産物の納品書なんですけど字が汚くて読めない部分があるんですよ…」

「きったねー字wwwああ、これは9で、これは海苔って漢字で書いてるつもりなんだよwwwとわっちは文字の終わりがあっぱっぱーになるタイプなんだよねw」

「じゃあ、このあたりに経費モノの書類…こっちに意見の紙を置こうか。あ、写真もらいます!」

「そうだ!誰か昨日のカラフルrice seasoning、ええとネコ模様の、正体知ってる人教えてー!

「…だね、じゃあ今度…うん、ティアちゃん…ももちゃんが…美味しい…」

「アレは猫カフェの店長考案のレシピだよ!紹介しようか、いつ行く?ちなみに今日は大盛りサービスデーで!!」

「石橋先輩、ヨメユカちゃんとペア撮影したいんですけど、許可ください~」

「いいか、そもそもウンコ味のカレーと言うのは食べられるものであって、メシマズ界では頻繁に登場してきてだな!!」

「あっしは食えりゃウンコだろうとカレーだろうと気にしないッス!!」

「もー、美味しいパンがまずくなるような会話やめてモグ!!罰としてモンブラン没収ね!!うーんデリシャス☆」


 この大騒ぎの学生会をまとめることができるのは……。


「ハイ!!!一旦落ち着きます!!ええと、じゃあ学園祭の反省会始めます!!!」


 僕しかいないってこと?!


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