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…窓際には、君が  作者: たかさば


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崩壊

 

「あ!!いとしのあいらびゅーんはるたん!!ねえねえ、元気だった?!あたしちょー元気!!どお、彼氏はできたの?それとも彼女?てゆっかもしかして

「ハルちゃん、久しぶり」」


「わあ!!カオ先輩と茉奈ちゃん!!うわあ、久しぶり、も~、なんで去年来てくれなかったの?!ひどいよ~、期待してたのに!」


 両手に焼き芋を抱えてきた三上先輩が…いつも以上にかわいい感じでキャぴキャぴしているのを目の当たりにし…、ちょっと…いや、かなりテンションが上がるな、これは。というか、こんなにもはしゃげる人だったのか。意外過ぎて…目が、離せないぞ。


「ふふ!会長さん嬉しそう!やっぱり苦楽を共にしてきた仲間って…先輩って偉大なんだね」

「先輩を敬うというよりは…甘えているような?すごいな、三上先輩ってこういうキャラを隠し持っていたんだね、正直混乱が…」


 頭の上にお団子の輝く、アヒル口のメガネ女子…いつだって先頭に立って、騒がしい学生会をまとめてきた三上先輩が駄々っ子のように唇を尖らせている。

 この人、普段は一生懸命先輩業をがんばっているけれど、本来はおそらく後輩キャラ…妹キャラとしての才能があふれているタイプに違いないぞ…。なんだ、この…めちゃめちゃカワイイ感。先輩が先輩らしい振る舞いをしていることに慣れているから、違和感…違うな、悪い印象では決してなくて、新しい魅力が発見できた的な?これはしっかりと目に焼き付けておいて、いざという時役に立てたいところだ。


「ハルちゃんはホント昔は引っ込み思案の人見知りだったのに…、会長になって変わったね。すっかり頼れる会長さんだもん、びっくりしたというか…良かった、これで私も一安心だ……」

「ヤダ!!茉奈ちゃんなんかお母さんみたいになってる!!もー、あたしだってやる時はちゃんとやるんだからね?!ちゃんと五十嵐先輩の意志をついで几帳面にがんばったんだよ!!いつ帰ってきてチェックされても怒られないようにって!!」


 よくわからないけど、三上先輩のしっかり者は誰かを参考にしたものらしい…?


 そういえば、この人は本来わりとしっかり者というよりはちょっと…なんていうんだろ、楠先輩っぽいというか、微妙に…残念、いや、かわいいところがあるんだった。いつもギリギリに学生会室に走り込んで来て慌ててドアの鍵を開ける感じとか、どう見ても手が届かないのに一生懸命背伸びして物を落とす感じとか、集合時間に間に合わないと駆け出して行って必要書類セットをまるっと机の上に置きっぱなしにしたりする感じとか。毎回きちんと気をつけてはいるけれど、思いがけない場面や気の抜けてるところではやらかしがちが顔を出すような感じで…。


 きっと、本人の努力があって…しっかり者の会長を務めることができていたということなんだろう。適当な気持ちで役員をしていなかったからこそ、今の頼りになる三上先輩が誕生したのだ。……この辺りは、ぜひ見習っておきたい。僕も頼られるような先輩に…なれたらいいのだけれど。


「あたしははるたんの成長をうれしく思うよ!!あのステージ企画でかみかみになって泣いちゃってた弱い子が、こんなに立派な会長になって!!聞いたよこのイケメン君に!!頼れる会長なんだって!!やらかしがちなメンバーをしっかりまとめて気の利いた一言を忘れずに!!いやあ、人ってホントレベルアップするんだね、あたし感動しちゃった!!積み忘れ事件であれほど凹んで落ち込んでた子がここまで!!いやー、諦めずにおだて続けてよかった!!」

「おだててたって何?!ひどくない?!褒めてくれてたのは本心じゃなかったってこと?!」

「ちょっとカオ、言い方間違ってる。違うよ、ハルちゃんのいいところはね、一生懸命に向き合うところで・・・」


 OBの先輩方は、実にバランスの取れた良いコンビらしい。一方のやらかしをすかさずフォローするような、絶妙に息の合った…ベストパートナーっぽさを感じる。長年の…親友のような、信頼関係とでもいえばいいのだろうか。

 ……いいなあ、仲の良い友達関係が続けられるというのは。


 地元の友達とは疎遠になりつつある僕にとっては…なんというんだろう、うらやましい、気持ちのような、ものが…ある。

 学校を卒業しても、三年経っても、こんなに息の合った感じで仲良くはしゃげる友達同士を続けることが出来ている人たちを目の前にして、自分の…薄情さのようなものを、感じないでもない。


 僕には…なにげに、卒業した学校の友達が…いない。

 幼馴染や高校時代の友達には…気軽に自分から連絡ができないのだ。


 特に用事もないのに連絡をしてもいいのだろうか、いきなりラインを送ったらびっくりしそうだな…そう言う気遣い?気がかりがまず頭に浮かんでしまって、躊躇してしまうんだよね。

 連絡をもらったら返事をするけど、決して自分からは行動しない…、そんな受け身の姿勢は、確実に縁を薄くしていると思う。学校という共同の居場所がなくなってしまえば、共感する機会も、一緒にいる意味も…減っていくばかりなのだ。どんどん気持ちが離れて行くというか……当たり障りのない会話を楽しむだけの、知人以上友達未満の人たちがたくさんいるようになってしまった。


 大学にはたくさん友達がいるけれど…今は仲良くしているけれど、卒業してしまったら…縁が薄くなるのかなとか…ダメだな、悪いことを考えてしまって。


 僕は今まで……、気を使い過ぎて希薄な友人関係しか…築いてこなかった。誰にでもいい顔を向け、争いごとが起きるのを避けて、みんなのまとめ役をし続けて。…結果として、今の現状がある。


 でも…大学に来て、自分の……良くない部分を知って。

 少しずつではあるけれど、変わることができていると…思う。


 ……大丈夫、僕は今までの僕じゃ、ない。言いたいことを言えて、相手の望む言葉ではない、自分の考えをちゃんと伝えることができている…ハズ。同じような考えを持つ人、違う考えを持つ人…自分自身を失わずに、いろんな人と向き合って、…たくさんの友達と、楽しい時間を過ごしている。


 ……この大学を卒業しても。

 きっと、友達は…いる、はず……。

 というか、いて欲しい……。


 僕も…この、先輩方のように。

 この学校を卒業した後も、ずっと、仲良くしていけたら。


 由香と…、仲のいい……


「石橋君、ごめんまた写真の依頼が……」


 早瀬先輩が急いだ様子でテントの方からこちらに向かってきたぞ…。手には『こっちに目線ください』の大きなうちわ、おそらくまた次兄とのペア写真の依頼に違いない。…なんか、本当に落ち着く暇がないな。


「ごめん由香、なんかまた写真撮影が…

「って!!うわひょっ?!ヤバ…い、石橋君っ、早く、こっちにっ…」」


 …うん?

 いつも冷静で落ち着いた佇まいの早瀬先輩が…なんか、おかしな言葉を口にしたような??


「おおっ!!クールビューティーまいまいとーじょー!!ヤダー♡相変わらずのスレンダー♡ねえねえ元気だった?!相変わらずの言葉少なな感じ…も~、お姉ちゃん心くすぐられちゃったから全力でくすぐっちゃうぞ♡さあさあ♡腹の底から笑うがいい~☆」

「…ッ!!くふっ…きゃは、あはは…ああっ♡ぎゃははははは!!!や、やめ、ギブ、ギブギブギブギブ!!!た、たしゅけてっ!!!マナひゃんっ…!!!」

「カオ、今度こそ本当に嫌われるよ…?」


 ああ…ここでもキャラ崩壊が!!こんな早瀬先輩の姿、見てしまっていいのだろうか…。


 ゆっくり見ていたいところだけど…テントの向こうで手を全力で振って…おいでおいでをしている志田さんの姿が!!!


「ご、ごめん由香、ちょっと行ってくるから…このカオス状態をしっかりと目に焼き付けて、あとできっちり教えて?!」

「う、うん、わかった!!!行ってらっしゃい?!」


 後ろ髪引かれまくりで、魚臭いテントの中に向かったわけだけれどもっ!!!


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