打ち合わせ
キラキラと輝くミラーボール。鼓膜だけでなく、全身にビリビリと伝わる大音響。壁に映し出される今風のMVに、ローテーブルの上にずらりと並ぶジャンクフードの数々。真剣な眼差しでステージを睨むダイナマイト女子、ウーロン茶を片手に首をかしげる女子、空になったお皿を片付ける女子にニラニラと状況を楽しむ女子、タンバリン片手にやけにリズムを取っている小学生男子っぽい女子、メモを取りながら一生懸命な女子にゴージャスなレースだらけの衣装をばっちり着こなす女子に、山盛りポテトにがっつくおっさん、そして……
「おお~♪空の彼方に一筋のぉおおお♪」
己の歌声に酔いしれるおっさんと、その真横でオフになっているマイクを握って口をパクパクさせている、僕っ!!!
「うーん、石橋君はもうちょっと大きな口開けて!!身振りが硬いなあ、もっとこう、河合センセーの調子に乗ってる感を出すような!!…ちょっとユーキセンセー!!あたしのナゲット食べないでよ!!!」
「わりとタイミングはあってるんだけど、河合先生の残念感が出てないのが…。」
「でも本番は、先生は後ろに引っ込んでるんでしょう?」
「大丈夫だとwwwステージの上なんざ眩しすぎて多少のバグはスルー案件だしwww」
「やっぱバックダンサー欲しいっすね!!あっし踊りたいッス!!」
「ステージの広さってどれくらいです?踊るなら最低でも2メートルは開けないと・・・」
「ステージ衣装とか作りますよ~レインボーな燕尾服を石橋先輩に着てもらって~七人のカラフルダンサーズとか!」
来週から大学の後期授業が始まるという本日、県庁横にあるカラオケ店で学園祭の出し物を決めるためのミーティングが行われているわけだけれども!!!
ちょうど三曲目が終わって曲と曲の合間になったこともあって、みんな思い思いに意見を出してくれているんだけどっ!!
収容人数30人のルームに、ノリノリでカラオケを歌いまくる河合先生、僕、東浦先輩、早瀬先輩、三上先輩、森川さん、小田原さんに原西さん、志田さん、昼ごはんを食べ終わってまだそんなに時間がたっていないはずなのにもりもりと食欲旺盛な結城先生という面子が揃っている。
ティアと大下さんはバイトの都合で欠席、佐藤さんは体調不良でお休み。楠先輩はさっき相川先輩とトイレに行って…ああ、戻ってきた。
「ねえねえ、次いちばん自信のある十八番入れていい?」
「もう合わせ確認は終わったでしょう!!カラオケを楽しむために来てるんじゃないんですよ?!」
「えー、あたし髭ダンディ聞きたい!!あとさあ、今はやりのテクノポップにボカロも!!」
「ド、どこまでいひばひ君がキャワイ先生の歌声に合わせられるか、もう少し確認をですね!」
「こんだけ合ってたら完璧でしょwww河合先生の高音わりかし中性的だし違和感なさ過ぎwww」
「歌わなくていいからダンスも派手目でやれるよね、これ動画バズりそう!!というか、あたしもステージ立つし!チャンネルで流せるといいんだけど!!」
「うーん、多分事務局に申請したら通るんじゃないかな?確か去年はダンス部の子が動画をアップしてたし、学園祭実行委員もチャンネル持ってるぐらいだから」
「あっし見ましたっす!!なんちゅーか、テロップがしょぼすぎてちょっと残念だったッス!!」
「せっかくだったらきちんとした動画を撮って、丁寧に編集して公開したいですね」
「もぐもぐ!!30分間まるまる…ごっくん!!歌い続けるの?」
「できたら衣装早がえとか入れたいかも~目立つと思う♡」
「はじめの挨拶や〆の言葉も必要だから、多くても五曲・・・三曲くらいの方が安全かな?」
ああもう…誰がナニを言ってるんだか、わかるけどごちゃごちゃになって…混乱がすごい!!
昨年、体育館のステージ企画でラブワードショーをやってかなり大盛況ではあったんだけど、今年はもう少し違った盛り上がり方ができそうなイベントをやろうっていう話になってさ。河合先生の親睦旅行のワンマンショーがめちゃめちゃ好評だったこともあって、ミニコンサートを開いてみたらどうかって話に纏まっちゃったんだよ…。
僕は全力でお遊戯会を提案したんだけど、ものの二秒で却下されてしまったという。東浦先輩の大食い&早食い実況もよさそうだと思ったんだけどさ、事故の可能性は否定できないってこっちも却下されちゃって。
はじめは河合本人がステージに立って歌うって話だったんだけど、それじゃあ誰にも見向きもされないって意見が出て、会場を真っ暗闇にして闇鍋コンサートにしようとか逆に眩しすぎるステージを作って歌い手が見えない演出にしようとか…おかしな案が出はじめてどうにも収拾がつかなくなったのが昨日のことだ。クラブ棟の施錠時間ぎりぎりまで粘って色々話し合った結果、僕がステージに立って河合先生の歌声に合わせてクチパクをすれば良いだろうということになってね?!
今日は実際に歌ってみて、クチパクをしてみて、おかしくないかっていうのを確認するためにわざわざカラオケ店に乗り込んできたといういきさつがあって!!
「たった三曲?!じゃあ・・・つかみは【タケポンサンバⅢ】、女子受けを狙った【フレグランス】で魅了して、最後は【犬になった君は】・・・いやいや人気歌手のナンバーを持ってきたほうが!!俺さあ、アンニュイなシンガーの曲得意なんだよ、【レモネード】とかしっとり歌う?でもなあ、スローナンバーは盛り上がりに欠けるって言うか!!」
「河合先生英語の歌とか無理なんです~?英米ウケも考えたほうがいいと思う~」
「英語の歌ならユーキ先生のほうが良いよ!!でも声が低すぎるから石橋君とはちょっとあわないって言うか!!」
「いっそミラクルボイスってことにするかwwwももちゃんの歌声も入れるべwww」
「ちょっと東浦君それ俺の頼んだピザなんだけど?!」
「さっきあたしのナゲット食べたじゃないですか!!気にすんな!!あ、歌うのは良いよ!!つぎあわせてみよっか!!」
「あ、もうじき二枚目のが来るので、大丈夫だと思いますよ。追加でサンドイッチセットも頼みますか?」
「あ、ちょっとあっしドリンクバー取ってくるっす、先輩方の分も要ります?」
「は、はわ・・・わたちも行きましゅ、はひ!!」
「ごめん、三時になったから私はちょっと電話かけてくるよ、内々定のところに研修の件で連絡しないといけなくて。」
「は、早瀬先輩、裏口から外に出られますよ、ここ出て右行ったドアです」
勢いがすごすぎて、スイッチの入ってないマイクを握り締めたままおたおたすることしかできないんですけど?!




