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…窓際には、君が  作者: たかさば


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到着

 出発時に随分イライラしたけれど、バスレクは思いのほかスムーズに進んだ。


 自己紹介レクもあだ名付けも和気あいあいとした雰囲気の中賑やかに完了し、車内は去年と同じくらいフレンドリーな空気が流れ、人と人の垣根が低くなっているように感じる。途中休憩したサービスエリアでもみんな仲良く一緒に買い物を楽しんだりしていたし、親睦旅行としてはかなりいい出だしだ。


 イベントとしては問題なく進行しているものの、些か…いや、かなり隣の席に座るおっさんが暑苦しいのが地味に苛立つけどさ……。まあ、なるべく近寄らないようにしておけばそれなりに快適だ。ほぼほぼ立ち仕事になってるから多少足が疲れるけど、狭苦しく椅子に納まりたくない気持ちの方が大きい。……もういいや、座席に座らず助手席を使わせてもらおう。


「あー!!見えたっす!どでかいジェットコースターの山っ!!」

「ホントだ!あれが日本一高いというコースター…だよね?」


 前から二番目の席で外を指差しながらはしゃいでいるのは、寝癖を工藤さんに直してもらってそれなりに女性らしい風貌に…なっている…のか…?座敷わらしみたいで可愛い、小田原さんだ。その大きな声につられて、前方の席の皆さんが窓の外を一斉に見ている。


『はい、皆さん、窓の外をご覧ください、右手に見えてきたのが無二球ダイランド一番人気のジェットコースター、メッサイイヤンです。僕は去年乗ったんだけど、とてもスリリングで…今日は乗らないって決めてるんだ、誘わないでね?』


≪≪≪あはは!!!≫≫≫


 もう間もなく到着だな、前方のバスが最終の右折レーンに入っているのが見える、あとは行きのバスレクを締めて、皆さんを笑顔で送り出すのみだ。


 ふとバスの左側レーンを見ると、初心者マークを付けた軽自動車がウインカーを出している、恐らく無二球ダイランド行きの車だなと思ってよく見たら……あれは川村さんじゃないか!!ものすごい至近距離で車線変更してきてるぞ、大丈夫なのか……。バスの運転手さんがスピードを落として譲っているけど、やけに角度のある入り方を……、思わずまじまじと見ていたら後部座席の秋元さんと目があった。軽く手を振ると、助けてと言わんばかりの必死の手振りが!!!絶対に……大丈夫じゃ、ない!!!


 『…もう間もなくバスは、目的地「無二球ダイランド」に到着します。今から14:00まで、目いっぱい楽しんでくださいね。もし何かあったら、僕に電話ください。集合時間に遅れたら…、帰りのバスでアカペラで出身校の校歌をうたってもらうからね?』


≪≪≪ええー!!!≫≫≫


『遅れないように、気を付けてね!はい、到着です、じゃあ、遊びに行く準備をして、バスをおりましょう!』


 村中さんと小泉さんには先に降りてもらって、バス出口の横で参加者のチェックをしながらお見送りしてもらう。バッジが見える位置に付いていないと入場券代わりにならなくて、乗り放題券としても意味がなくなってしまうんだよ。一応バスの中で説明したけど、もしものことがあるのでチェックは念入りにしておきたい。


「お疲れ様です、何か分からないこととかあったらここで聞いて行ってね、ゴミがある人はもらいます!」


 僕は村中さんの席に移動して、ゴミを回収しつつ皆さんをお見送りさせていただく。


「ペットボトルのゴミいいですか!ありがとうございます!」

「ハイ、行ってらっしゃい、元気に戻ってきてね?」


「お昼ご飯って食べるところありますよね?」

「中央のレストランはバイキングをやってるし、園内にはクレープやハンバーガーなんかもあるから、目移りしちゃうかも?」


「おススメの乗り物ってありますか?」

「大観覧車から見る景色はすごくキレイだよ、今は葉桜がじゅうたんみたいになって見えると思うけど、高いところ大丈夫?」


「いってきまーす!」

「キラサン思いっきり楽しんできてね!」


 みんなニコニコしてバスを降りていく、よしよしバスレクは大成功だな、うん。仕事を無事やれたことにほっと胸をなでおろしつつ、…何もしないでぐうすか寝ているおっさんに冷たい目を向けてみたり。よくもまあこの大騒ぎのバスの中で寝ることができるもんだよ、ひょっとして睡眠時無呼吸症候群で意識不明にでもなってんじゃないの……。


「バスレク楽しかったです!石橋先輩!!!」

「ありがとう、ゆめっちょも遊園地楽しんできてね。」


「ありがとうございました~♡」

「いえいえこちらこそ。盛り上げてくれてありがとう、ぽんちゃん!」


「あ、ありがとうございましたっ、あの、写真一緒に良いですかっ!!」

「いいよ、あのね、会場にも写真係の人がいるから、いっぱい撮ってもらってね、ハイ、一緒に撮るよ、…チーズ、じゃあサワちゃん、行ってらっしゃい。」


「あああ、ありがとーござ!」

「はい、むぎちゃんいってらっしゃい。」


「ありがとうございましたっす!めっちゃ楽しかったっす!石橋先輩マジリスペクトっす!」

「はは、大げさな…、はらお君も楽しんできてね、あ、くぅちゃんもお化け屋敷頑張って、一緒に行くの?」

「はい!はらおっちの後ろからついていくんで!楽しみ!」


 よし、小田原さんと工藤さんで最後だな、一応念のためバスの中をチェックしておこうか…とはいえ、荷物を置いてってる人もボチボチいるな、まあ、見なくてもいいか……。とりあえず全員バスを降りたことだけ確認して、自分もバスを降りることにする。


「ッかー!アアア、ついた?も~さ、イケメンがタラシ過ぎてホント眠かったわ……。なんなんだお前は、なんであんなにタラせるんだ、嫁が泣くぞあんなんじゃ……。そもそもお前そんなにモテ散らかしてどーすんの?馬鹿じゃねえの、ここは女子大だぞ、女子が女子にモテまくってどうすんだ!くっそー世の中の男女比を考えろってんだ!!まったくもう……ぶつ、ぶつ……。」

「人聞きの悪いこと言わないでくださいよ!!失礼ですね、ぐうすか寝てた人に言われたくないんですけど!」


 おっさんは残念ながらただ寝ていただけのようだ。起きてすぐに憎まれ口をたたくとか本当にどうしようもないな。あんまり関わりたくないので、早々にバスを降りることにする。


「石橋クーン、もう行っていいんだっけ?」

「集合時間の十分前に来ればいいよね?」


「うん、村中さんも小泉さんもありがとう、また帰りもお願いします!」

「「はーい!」」


 お手伝いの二人が元気よく美学Bのバスのほうに向かって行ったのをお見送りする。他のバスは降車が少し手間取っているのかな?うちのバスの人たちが一番早く園内に向かったようだ。出だしが遅かったから心配してたけどわりと何とかなるもんなんだな。


「あ!!!カナキューン!!おはよー!無事来れたよ!写真がんばるね!!!」

「カナキュン!うちら何回も手振ってたんだよ!最後だけ気付いてくれたけど!」

「ものすごい外車いたの見た?横に並んだらサムズアップされてさあ、あれ芸能人だったかも!」

「ねえねえ、受付ってどこでするんだっけ?ここ団体用入り口だよねえ?」


 バスのステップを降りると、よく見知った顔のお洒落女子が四人こちらに駆け寄ってきた。本日の有能写真係二人と、去年あまり親睦旅行を楽しめなかった気の毒な女子が二人。大型バスの駐車場に、可愛らしい軽自動車が停めてある、先ほどすれ違った川村さんの車だな。……ここ大型バス専用駐車場なんだけどな…ちょっとあとでバス会社さんに言っておかないと。まあ、たぶん同じイベント参加者ってことで許してもらえる?とは思うんだけど。


「あ、受付はこのバッジがあればしなくてもいいんだ、ハイ、大崎さん、川村さん、秋元さん、笠寺さん…思いっきり楽しんできてね!」


 結城先生からお手伝いの二人分プラス欠席者の分の余ったバッジをもらったので、それを手渡す。今回の欠席者は全員で10人、余ったバッジはそのまま廃棄になってしまうそうなので、使わない手はない。もったいないんでバスの運転手さんたちにも配ろうって話になってるんだ。


「え!!いいの?!入場券代もって来たよ?うちたち何も仕事しないし!」

「欠席者も出たし、学生部としては学生さん達に楽しんでもらうためのイベントだからね、それに大崎さんや川村さんたちと一緒にまわるんでしょう、写真係のお手伝いすることになると思うんだ、受け取ってもらわないと困るよ。…よろしくね?」


「わあ!!すごい!やったー、じゃあ浮いたお金でバイキングいこっか!」

「そうだね、まず腹ごしらえをして、それからまわろ!」

「今の時間ならレストランもすいてるもんね!食べながら計画練ろう!」


 僕は大喜びのお手伝いさん四人組を見送り、バスの運転手さんに色々と話をした後、他のバスの方へと向かう事にしたのであった。

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